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アクティブ・レンジャー日記 [九州地区]

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。

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屋久島国立公園

75件の記事があります。

2018年11月02日ヤクシカ、ヤクシマザルの恋のシーズン 【屋久島地域】

屋久島国立公園 池田 裕二

 屋久島も秋の気配が濃くなってきました。森では恋のシーズンを迎えたヤクシカ、ヤクシマザルたちが活発に動いている様子を見かけることができます。

 ヤクシカのオスは、メスやほかのオスに対して自分の居場所を主張したいのか、独特の鳴き声を発しています。百人一首にも一句ありますね「奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき」

 これは秋のオスシカの習性をうまく表しています。

繁殖期のヤクシカのオス

▲繁殖期のオスシカ。首の回りに泥が付着し、整髪料を塗ったかのようになっていることが繁殖期の印。

 いっぽうヤクシマザルはというと、オスもメスも顔やおしりなど、皮膚の赤味がグッと増してきます。体格のいい強いオスは短い尻尾を背中につくまで反り上げて、堂々とメスたちの前を歩いていきます。サルを1頭見つけたら、その周りに2、30頭ほどの群れでいることが多いようです。交互にグルーミング(毛づくろい/シラミ取り)をしている様子や、木の実などを採食している様子を見ることができます。

 動物観察の楽しい季節です。特に島の西側、西部地域と言われるエリアではシカとサルに遭遇しやすく、おすすめの場所です。

 そんな動物たちにストレスを与えないよう観察するために、屋久島ではいくつかのルールを定めています。

ルールその1★絶対にエサをあげない※

 サルやシカは野生動物。「ちょっとミカンをあげるくらい、いいでしょ・・・かわいいし。」そんな軽い気持ちが彼らの野生の本来の姿を壊すことになってしまいます。

野生動物にエサをあげてはいけない2つの主な理由

◆行動への影響

 人の食べ物の味を覚えた動物は、餌をもらうために人に近づき、時には食べ物を奪うために人に襲い掛かることもあります。

◆健康への影響

 自然のものを食べて生きる野生動物にとって人の食べ物は有害になる場合があります。

※「屋久島町猿の餌付け等禁止条例」により。違反者は5万円以下の過料となっています。

ルールその2★近づきすぎない

 観察や写真撮影をしようと、つい近づきたくなるものですが、野生動物は人との距離を保ちたいものなのです。近づきすぎると、逃げたり威嚇行動をとる可能性もあります。野生動物にはできるだけストレスを与えないことが大切です。目安として10m、車2台分以上は離れて観察しましょう。

 とくにサルの場合、人の持っている風邪などの病気がサルにうつってしまう可能性があります。くしゃみやせきなどでサルに病気をうつさないためにも、一定の距離をおいて観察しましょう。

ルールその3★車での観察はきちんと停車してから

 西部林道や、山間部へ通じる道路などでは他の車の通行の邪魔にならないように駐停車して観察をしましょう。動物たちの横を通り過ぎる際は徐行し、驚かさないように気を付けましょう。

 また、わき見運転は大変危険です。屋久島ではレンタカーが側溝へ脱輪するケースや、岩や樹への衝突事故が後を絶ちません。観察をする際は車を安全な場所へ停止させてください。

ルールその4★サルの目を見ない

 サルは目線をとても気にする動物です。サルの目をじっと見ることは、サルを興奮させ、威嚇や攻撃行動を引き起こすきっかけとなります。絶対にやめましょう。

ルールその5★大きな声を出さず、ゆっくり動く

 どちらもサルやシカを驚かさないためです。道端でグルーミングや採食をしてリラックスしているようでも、人間の行動はしっかり観察されています。特に人の子供がはしゃいで騒ぐことをサルはとても嫌います。小さなお子様連れの方はとくにサルの観察時にご注意ください。

 屋久島は動物観察にとても良い状態を保っている奇跡の島です。この状態を維持するためにも観察ルールを必ず守りましょう。

 こうした観察ルールをまとめた「屋久島西部地域ルールガイド」冊子を、観光協会の窓口などで入手できますので、動物観察にお出かけの際はぜひご利用ください。

屋久島西部地域ルールガイド

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2018年11月01日パークボランティアで口永良部島へ!【屋久島地域】

屋久島国立公園 アクティブレンジャー 水川

みなさん、こんにちは!

屋久島自然保護官事務所の水川です。

 

運動会シーズンも終わり、少し落ち着く頃でしょうか。

私の住む集落の運動会は10月21日にありました。

3年ぶりの好天で、皆思いっきりグランドを走って楽しみました。

 

運動会の様子

▲原集落の運動会の様子。後ろにそびえるのはモッチョム岳。

 

さて、翌日の22日から一泊二日で、屋久島国立公園パークボランティアの会で口永良部島に行ってきました。

昨年に続き、「GGG国立・国定公園支援事業」の助成を受けて海岸清掃を実施しました。

 

口永良部島全景の写真

▲口永良部島。島全域が屋久島国立公園です。

 

今年の台風24号で屋久島はかなりのダメージを受けました。

口永良部島はどうでしょうか...。

島に到着後、早速岩屋泊(いわやどまり)に向かい、清掃を開始しました。

台風による高波の影響か、波打ち際ではなくより奥の植生帯の中にゴミが打ち上げられていました。

ゴミの多くはウキ。足場が悪いうえにウキは大きくて重たいので、一人ひとり作業していては日が暮れてしまいます。

そこで、集積場所まで一列になり、バケツリレーでウキを回収することにしました。

 

バケツリレーでゴミを回収する様子

▲バケツリレーならぬウキリレーの様子。短い距離は二列縦隊でリレー!あっという間に回収することができました。

 

清掃前と後の海岸の様子

▲ウキを回収する前と後の様子。

 

今回の活動では、海岸清掃の他に口永良部島八景の標識も補修しました。

 

標識補修の様子

▲岩屋泊の八景標識の補修の様子。

 

翌日は西之湯周辺の海岸清掃を実施しました。

口永良部島の魅力の一つは島内4箇所に湧き出る温泉です。

その一つである西之湯が、今回の台風で消失しました。

 

西之湯の様子

▲西之湯の様子。

 

消失前の西之湯

▲消失前の西之湯。

 

西之湯周辺の海岸には、大量の発泡スチロールが漂着していました。

発泡スチロールの大きな白い塊はとにかく目立ち景観を損ねていたので、これもバケツリレー戦法で回収することにしました。

 

バケツリレーでゴミを回収する様子

▲発泡スチロールリレーの様子。急峻な岩場に一列に並んで慎重に発泡スチロールを渡していきました。

 

清掃前と後の様子

▲白い無数の塊が無くなったのがわかるでしょうか。

 

清掃前と後の様子

▲もちろん、発泡スチロール以外の漂着ゴミも回収しました。

 

会員9名+職員3名で、2日間で回収したゴミの量は、なんと1トン用フレコンバック23袋!

たくさんの漂着ゴミを回収できたことは良かったですが、産廃処理費の予算を大幅にオーバーしてしまいました。

 

回収したゴミ

▲ゴミが入ったフレコンバック。

 

島にゴミ処理施設はなく、産業廃棄物は鹿児島本土に搬出しなくてはなりません。

回収しても次から次へとゴミは漂着し、回収すればするだけ処分費用がかかってしまう...。

良い解決策はないものかと頭を抱えます。

 

また、活動前日に3年ぶりに新岳がごく小規模な噴火をしました。

活動中も噴火は続き、風向きによっては車に降灰したり、火山ガスの臭いがしたりしましたが、島の方は冷静でした。日々の備えがあるからこそ、いつも通りの暮らしができているのだと感じました。

 

新岳噴火の様子

▲噴火の様子。昼夜問わず噴火していましたが、島の人は落ち着いていつも通りの生活をしていました。

 

今回は、口永良部島の火山とともに生きる島民の力強さを感じるとともに、離島のゴミ問題の深刻さを痛感する活動となりました。

 

集合写真①。

集合写真②。

▲最後にみんなで、はい、チーズ!お疲れ様でした。

※口永良部島では8月29日10時00分に噴火警戒レベル4(避難準備)から3(入山規制)に引き下げられており、現在も噴火警戒レベル3(入山規制)が継続されております。(平成30年11月4日16時00分

※ 詳細は、気象庁HP等をご覧下さい。

○気象庁HP(口永良部島の噴火警戒レベルを3(入山規制)へ引下げ、平成30年8月29日10時00分発表)http://www.jma.go.jp/jma/press/1808/29b/kuchinoerabu180829.html 

○口永良部島の活動状況

http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/activity_info/509.html

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2018年10月18日屋久島と台風 【屋久島地域】

屋久島国立公園 池田 裕二

 屋久島は九州南部に位置し、台風の進路上にあるといっても過言ではありません。そのため台風の通過は毎年必ずあるものとして身構えておく必要があります。

 台風による強い風雨により、倒木や土砂崩れ等の発生があるため、台風通過後には環境省が管理する登山道や設備等の点検を行っています。

 とくに標高の高い山間部では低地の市街地に比べてより強い風が吹き、倒木、落枝等が発生しやすいため、設備の損壊が心配です。山間部に設置したトイレや縄文杉の展望デッキなど重要な設備があり、台風通過後は安全第一でできるだけ早く状況を見に行き、通常使用に問題が無いか確認を行います。破損した場合は修理にかかる手続きを早急にしなければいけません。場合によっては現地で危険木等の除去作業も行います。

 今回は台風24号の影響が大きく、大きな倒木が多かった印象を受けました。島の低地で風速40m級の風が吹いたので、山の上は瞬間的にもっと強い風が吹いたのかと推察されます。

台風での倒木

台風後の倒木

 ▲登山道をふさぐ倒木。

 台風は被害をもたらすこともありますが、自然のサイクルの中でしっかりと役に立っていることもあります。例えば、森林内の下層植生が乏しい屋久島の山では、強風によって千切れた木の葉は地表で食べ物を探すヤクシカにとって良い食料になることがあります。ヤクシカは食べることのできる樹種の葉を探して歩き回っています。

 また、立ち枯れした木や弱った木が台風で倒されることにより、森の中に光が入り、次の世代の木々が育つことで森が更新されていきます。枯れて地面に落ちた木は森の中で虫や菌などによって分解され、再び森の養分となって循環します。

 河川に溜まった落ち葉や腐葉土は大雨の影響で海へと一気に流されます。これらもいずれ分解され、海にすむ生き物たちの栄養源となるのです。

 台風は人の生活にとって脅威ですが、屋久島の自然は台風とともにあり、厳しい自然に耐えながらバランスを保っているのですね。

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2018年09月05日希少な野生植物ヤクシマソウを追え! 【屋久島地域】

屋久島国立公園 池田 裕二

 国内希少野生動植物種という名称をご存知でしょうか。

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 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)に基づき、国内に生息・生育する絶滅のおそれのある野生生物のうち、人為的な影響により減少が見られる種等を環境省が「国内希少野生動植物種」に指定しています。

 また、新種、初確認種(日本に生息していることが初めて確認された種)、再発見種(絶滅したと思われていた種が見つかった場合)のうち、特にその保存を緊急に図る必要があると認められる種を「緊急指定種」に指定しています。

 平成30年2月現在、国内希少野生動植物種として、鳥類39種、哺乳類9種、爬虫類7種、両生類11種、魚類4種、昆虫類44種、陸産貝類19種、甲殻類4種、植物122種の全259種が指定されています。また、緊急指定種として爬虫類1種が指定されています。

 詳細URLはこちら▼

 http://www.env.go.jp/nature/kisho/domestic/index.html

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 平成30年1月には屋久島の植物4種が新たに国内希少野生動植物種に指定されました。4種とはタブガワヤツシロラン、ヤクシマヤツシロラン、ヤクシマヒゴタイ、ヤクシマソウです。いずれも島内での生育地は限られています。

 先日、ヤクシマソウ生育調査のため、森に入りました。ヤクシマソウはホンゴウソウ科という聞きなれない植物の仲間です。地上からの高さは数cm。花や実のひとつひとつの大きさは直径約1mm、花茎は細く髪の毛のような細さです。全体的に赤紫色をしており、薄暗い林床では見つけることが難しく、地面をじっと見つめながら探します。葉緑素を持たず、光合成をしない植物で、土の中の菌に寄生して栄養をとって生きるという、とても変わった生態です。

 菌に寄生するヤクシマソウが自生しているということは、その環境が、私たちの目には見えない豊かな菌類の生育地とも言えます。枯れ葉や枯れ木が何百年もの間、菌類に分解され循環を繰り返している古い森にこうした生態系が形作られています。

 このような環境はいまや貴重となっており、なおかつ生育地やその周囲の伐採など開発の危機に瀕していることが多いのです。ヤクシマソウは2016年に新種として記録されたものですが、その希少性によってわずか2年ほどで国内希少野生植物種に指定されました。

ヤクシマソウ

▲ヤクシマソウ。あまりに小さく、そして不思議な形に職員一同驚きを隠せませんでした。

林床のヤクシマソウ

▲落ち葉の中からひょっこり。

 ヤクシマソウは屋久島でもごく限られた地域でしか見つかっておらず、株数も多くはありません。今回の調査は湿度の高い林内で地面にしゃがみ込みながら、およそ3時間の探索を行いました。汗だくになりながらも努力の甲斐あって全員がヤクシマソウを見つけることができました。みな調査に夢中になり、見つけるたびに「あった!あった!」と歓喜の声をあげていました。ヤマビルやマダニ、マムシなどに遭遇しなかったのも幸いでした。

 まだまだ詳しい研究が期待されるヤクシマソウ、環境変化に弱いとされ、生育地そのものを保護していくことが大切です。

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2018年08月13日自然に親しむ集い~夏休み自由研究!川の水と生き物調査隊~ 【屋久島地域】

屋久島国立公園 アクティブレンジャー 水川

みなさん、こんにちは!

屋久島自然保護官事務所の水川です。

 

8月5日(日)、自然に親しむ集いを実施しました。

自然に親しむ集いは、屋久島自然保護官事務所と屋久島町と(公財)屋久島環境文化財団研修センターが共催で年3回実施している屋久島町民対象の自然観察会です。

平成30年度第1回目は当事務所が主催で、昨年大変好評だった川の水と生き物調査を実施しました。

今年もキャンセル待ちが出るほど多数の応募がありました。

 

当日は良く晴れた真夏日で、絶好の川日和でした。

昨年同様小瀬田にある男川で、15名の参加者と活動しました。

今回は屋久島国立公園パークボランティアの方にも活動補助をお願いし、スタッフとして参加頂きました。

 

最初のレクチャーをする様子

▲最初のレクチャー。川と私たちの生活は密接に関わっていることを説明しました。

 

川の上流へ移動する様子

▲いよいよ川へ出発!まずは上流へ移動。冷たくてとっても気持ちいい!

 

流速を測定する様子

▲流速を計りました。

ウキに300㎝のヒモをつけて流します。

ウキを水に浮かべた瞬間からヒモがピンと張るまで流れた時間を計測すると、流速が計算できます。

今回は6秒だったので、300㎝÷6秒=50/秒(速さはふつう)でした。

 

生き物採集の様子

▲待ちに待った生き物採集!最初の20分間は石の裏にいる指標生物を集中して探しました。

大人も子供も夢中になって、あっという間に採集時間が終わりました。

 

次は採集した生き物とパックテストを使って水質調査です。

調査隊ということで、子供達は調査表にしっかりデータを記入していきます。

 

調査表を記入する参加者の様子

 

調査表を記入する様子

▲調査表にデータを記入する様子。

 

採集した生き物を観察する様子

▲採集した生き物を観察し、指標生物を調べます。

 

採集したテナガエビ

▲大きなテナガエビもいました。

 

指標生物による水質判定

▲調査表に指標生物の数を記入して、水質を判定。

結果は「きれいな水」であることが分かりました。

 

パックテストも使って水質を調べてみました。

 

パックテストの様子

▲亜硝酸態窒素を判定する様子。色は全く付かず、「きれいな水」であることが分かりました。

 

川の調査方法や指標生物を初めて知る人がほとんどでしたが、皆とても楽しんでくれたようです。

川や生き物に触れる良い機会になったのではないでしょうか。

 

この夏は異常な暑さです。皆さんも涼しい川へ遊びに行ってはいかがですか(^^)

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2018年08月13日教職員向けESD研修! 【屋久島地域】

屋久島国立公園 アクティブレンジャー 水川

みなさん、こんにちは!

屋久島自然保護官事務所の水川です。

 

8月1日、夏休み真っ只中の屋久島町立八幡小学校にて教職員のESD研修会が行われ、そこで講話する機会を頂きました。

 

教育のプロの方々を前にどんなことを話すべきか大変悩みましたが、意外と学校現場では環境教育に取り組んでいても「ESD(持続可能な開発のための教育)」の視点が不足していたり、そもそもESDについて詳しく知らないという先生も多いようだったので、ESDとは何かという基本的なことからESDの取り組み方、かつ、今後ESDを進めるうえで参考になればと、屋久島の自然環境や課題、屋久島自然保護官事務所が実施している環境教育等について話しました。

また、SDGs(持続可能な開発目標)についても説明し、SDGsを見据えたESDの取り組みを提案させて頂きました。(残念ながらSDGsを知っている先生はいませんでした。)

 

職員室で教員を前に話す様子

ESD研修会の様子。パワーポイントと配布資料を用いてお話しました。

 

少しでも先生方の参考になる話を...と張り切って準備した発表用パワーポイントは約70枚。(削って、削って、この枚数...)

1時間以上の発表となってしまいましたが、先生方は最後まで熱心に耳を傾けてくださいました。

話が終わってからは、「もう少し詳しく聞いていい?」「○○は世界自然遺産地域?」「とても興味深かった」「大変参考になった」など、嬉しいお言葉を沢山頂きました。

校長先生からは「他の学校にも有意義な研修ができたと報告・宣伝しておきます!」と言って頂きました。

 

学校でESD推進を目指す一方、ESDについて教職員が学ぶ機会が少ないそうです。

まずは校内の教職員でESDについて理解を深めようと、八幡小学校の校長先生が企画した研修会でした。

今回貴重な機会をくださった八幡小学校の先生方に感謝致します。 

 

ESDでは、これまでの「知識伝達型」の受動的な学びのスタイルではなく、グループ活動などの協働的な活動や体験活動を取り入れて児童の主体的な学びを引き出す工夫が求められます。

「本物」に出会い、五感を使って体験し、発見する、気づく。といった学習過程で、私たちの出前授業が活かせると思っています。

今後も学校と連携しながら、持続可能な社会づくりに貢献できればと思います。

 

ESDについて詳しく知りたい方はコチラ↓(環境省HP

https://edu.env.go.jp/whatesd.html

 

SDGsについて詳しくは知りたい方はコチラ↓(環境省HP

https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h29/html/hj17010101.html

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2018年08月10日巡視中に出会った珍しい生き物たち 【屋久島地域】

屋久島国立公園 池田 裕二

巡視中に珍しい生き物たちに出会いました。

▲ヤクシマエゾゼミ(屋久島固有種)

標高の高い山間部にすむ、とても珍しいセミ。夏、山に入るとギーという鳴き声が聞こえますが、普段は高い木の上にいるため、なかなか姿は見せてくれません。屋久島だけにしかいない固有種です。

ちなみに屋久島にはヒグラシやミンミンゼミは分布していません。

撮影地:ヤクスギランド

固有種ヤクシマタゴガエル

▲ヤクシマタゴガエル(屋久島固有種)

山間部に生息する、枯れ葉そっくりのカエル。山を歩いていると、足元から突然大ジャンプすることがあります。幼生の期間が非常に短いようで、まだオタマジャクシを見たことがありません。

撮影地:ウィルソン株付近

絶滅危惧種アシガタシダ

▲ヒカゲアマクサシダ(絶滅危惧ⅠB)

どこでも見られるシダではなく、とても珍しい大型シダです。落ち葉が堆積し、林床植生が豊かな森で育っています。

撮影地:低地の照葉樹林内

絶滅危惧種タイワンアオネカズラ

▲タイワンアオネカズラ(絶滅危惧ⅠB)

国内では屋久島と西表島にしか自生しない珍しいシダ。鑑賞目的で採集されることがあり、個体数減少のおそれがあります。

撮影地;低地の照葉樹林内

絶滅危惧種シシンラン

▲シシンラン(絶滅危惧Ⅱ類)

ランではなく、イワタバコの仲間。古く大きな木に着生しているのを見ることができますが、繁殖力は弱いようで、若い木に着生している個体や子株はほとんどみかけません。

撮影地:照葉樹林内

地衣類ヤスデゴケモドキ

▲ヤスデゴケモドキ

コケと名前に入りますが、蘚苔類ではなく地衣類の仲間。小型で非常に見つけにくい。ヤスデゴケモドキの古い記録は日本各地からあるものの、近年の生育状況はよくわかっていないようです。屋久島では3地点で見ることができました。地衣類は大気汚染に弱いとされており、減少傾向にあるようです。

撮影地:宮之浦岳登山道

屋久島は2万年ほど前まで九州と地続きだったと考えられ、九州や本州と共通した生き物が多い島です。しかし、島の標高差が生み出す独特の環境や、原生的な自然環境も残っているため、固有種や絶滅危惧種など、他ではなかなか見ることができない生き物たちが暮らしています。貴重な自然を残していきたいですね。

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2018年07月27日縄文杉登山道などの熱中症対策 【屋久島地域】

屋久島国立公園 池田 裕二

 夏真っ盛りで屋久島もにぎわっています。

屋久島の安房岳付近

    

暑い時期に注意したいのが熱中症ですね。特にトレッキングでは日常生活以上に注意が必要です。山は涼しいものだと思いがちですが、屋久島の人気のトレッキングコースのうち、縄文杉トレッキングをはじめ、いくつか人気のコースは比較的標高が低く、また長距離で長時間の活動のため夏場は特に熱中症に注意が必要です。

 【熱中症になりやすい条件はこちら】

★梅雨時期から9月頃にかけての気温と湿度が高い日。

★レインウェアを着ながら登山道を登るとき。

★標準的なコースタイムよりも早く、急いだ登山。

★カメラ機材や宿泊用装備など重い荷物を持っての登山。

★水分補給やトイレなど休憩を我慢しての行動。

 夏の午後は山間部に雲がかかりやすく、湿度が高い中では汗も乾きづらく体温調整ができにくくなります。  また雨天時はレインウェアを着ての行動となりますが、雨が止んだ時はすぐレインウェアを脱ぐなど、こまかな体温調整がおすすめです。標準的なコースタイムは、体への負荷を軽減するための目安となります。

 雨上がりや曇天時、雨が降っていない状態でレインウェアを着て登山をする方を見かけたときは一言声をかけて熱中症にならないよう注意を呼び掛けています。

 水分補給は最重要ポイントです。トイレに行くのを我慢するために水分補給を控えるのは危険ですのでやめましょう。縄文杉トレッキングルートは水が汲める場所がいくつもあり、またバイオトイレや携帯トイレブースなど、屋久島の他の登山道よりトイレ環境は整備されていますので、水分補給とトイレは我慢しないでください。水場やトイレの場所は地図で事前に確認しておきましょう。夏場の登山では休憩をこまめにとるのが理想です。

 熱中症になると正常な判断や、体の運動機能が弱まり、転倒や道迷いのリスクも上がります。休憩をしっかりととり、体をケアしながら無理のない登山を楽しみましょう。

【熱中症の主な症状】

★軽症:めまい、失神、足の筋肉のけいれんなど

★重症:頭痛、嘔吐、全身けいれん、高体温、意識障害

 少しでも意識がおかしい場合は、病院への搬送が必要です。

環境省熱中症予防情報サイト

http://www.wbgt.env.go.jp/doc_prevention.php

▼宮之浦岳登山道の水場の看板を修正しました。

宮之浦岳登山道の水場

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2018年07月19日出前授業を実施しました! 【屋久島地域】

屋久島国立公園 アクティブレンジャー 水川

みなさん、こんにちは!

屋久島自然保護官事務所の水川です。

 

6月と7月に屋久島町立八幡小学校で出前授業を実施しました。

 

八幡小学校では平成20年から毎年4年生を対象に授業を実施していますが、一昨年3、4年生が複式学級で3年生も授業を受けたため、その子ども達が4年生になった昨年は授業がありませんでした。

そのため2年ぶりの授業でした。

 

1回目と2回目は教室で国立公園や世界遺産、レンジャーの仕事や屋久島が抱えている問題などをお話ししました。

○×クイズや中身当てゲームをしたり、ヤクスギやウミガメの標本を見てもらうなどして、楽しみながら学んでもらいました。

 

教室で授業する様子

▲教室授業の様子。

お話し好きな子が多く、授業の途中でも「あれ知ってるよ!」「これは○○なんだよ!」と児童自ら話し始めてしまうことが多々あり進行に苦労しましたが、全員参加型の授業ということで私も楽しみました♪

 

3回目は屋久島国立公園でもある栗生塚崎海岸に出かけて、海の生き物探しやレンジャーの仕事体験をしてもらいました。

この日は梅雨明けが発表された日でカンカン照りの猛暑でしたが、皆元気にザブザブ海に入って夢中で生き物を探しました。

 

タイドプールで生き物採集をする様子

▲タイドプール(潮だまり)で生き物探しをする様子。ズボンが濡れても気にしない!

 

ビンゴゲームをしながら生き物探しをする様子

▲生き物探しはビンゴゲーム形式で、ビンゴシートに書かれた生き物を班で探してもらいました。

魚、ヒトデ、ナマコ、貝、カメノテ、オカヤドカリ、カニなど、沢山の生き物を見つけることができました。

 

ウミガメ産卵シーズンということで、上陸、産卵跡も見てもらうことができました。

 

ウミガメが掘った穴を観察する様子

▲ウミガメが卵を産むために掘った穴を見学する様子。大きな穴に皆びっくりしていました。

浜のどんな所に卵を産んでいるか児童に問いかけると、波打ち際から一番遠い場所を選んで産んでいることに気付きました。

どうしてこんな場所に産むのかな?

ここでふ化した子ガメは海に帰る時どんな試練があるだろう?

産卵環境を実際に見ることで、色々な考察ができました。

 

またレンジャーの仕事体験として、海岸の入口にある環境省の看板を清掃してもらいました。

 

看板清掃をする様子

▲看板清掃の様子。雑巾でゴシゴシ磨いてもらいました。

「レンジャーはこんな仕事もするんだね!」と驚いていました。

 

教室に戻ってから、浜で採集した貝殻の標本作りをしました。

 

教室で貝の標本作りをする様子

▲標本の作り方を説明する様子。

 

最後は海岸で見つけた生き物や海岸の魅力をマップにしてもらいました。

 

海岸マップをつくる様子

▲海岸マップ作りの様子。

マップ作りを通して活動をふりかえることで、栗生塚崎海岸は沢山の生き物が暮らす自然のままの美しい海岸であることに気付きました。

そして、もし砂浜がコンクリートで固められたら...、タイドプールが埋め立てられたら...、今日見つけた生き物達はどうなってしまうだろう?オカヤドカリやスナガニは生きていけるかな?ウミガメは卵を産めるかな?サンゴは?カメノテは?

と、考えを発展させることもできました。

 

最後に一人ずつ子どもレンジャー認定証を授与しました。

今後は子どもレンジャーとしてもっともっと屋久島の自然について知り、自然を守るために何ができるか考えて、行動に移してもらいたいと思います。

 

次回は秋、最終授業です。

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2018年06月20日森の掃除屋さんヤクシマルリセンチコガネ【屋久島地域】

屋久島国立公園 池田 裕二

 林道を歩いていた時に、地面にきれいな虫がいることに気づきました。

 ヤクシマルリセンチコガネのようです。名前に瑠璃(るり)という色が入っている通り、体の表面は青緑色で美しい金属光沢があります。

 実はこの虫、シカやサルのふんを食べる、ふん虫です。汚れ一つないピカピカの体からは想像できませんね。(画像はサルのふんを食べているところです)

 植物質を多く食べるシカやサルのふんには、未消化の植物片とともに、様々な微生物が含まれており、ふん虫にとって大事な栄養源となります。

 森の中では動物のふんもしっかりと再利用されます。動物のふんは、ふん虫に食べられることによってさらに分解され、無駄なく土へ還ります。

 自然界からはゴミが出ません。

 人間社会も見習いたいですね。なるべくゴミを出さない生活を目指しましょう。

 ちなみに、ふん虫というと海外の「フンコロガシ」が有名ですがヤクシマルリセンチコガネはふんを転がしません。

 じっと見ていたら、ふんを自分の体と同じくらいの大きさにちぎって、それをひきずってそのままどこかへ移動していきました。

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