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アクティブ・レンジャー日記 [九州地区]

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。

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阿蘇くじゅう国立公園 くじゅう

179件の記事があります。

2012年08月03日ヒゴタイと保護活動 【くじゅう地域】

阿蘇くじゅう国立公園 くじゅう アクティブレンジャー 指原

くじゅうは朝から快晴!爽やかな風が吹いています。
保護官事務所は標高1,000mの場所にあり、13時の気温が28度と涼しいです。
事務所に当然エアコンはなく、網戸越しに入ってくる風が天然のクーラーです。

さて、くじゅうの夏も折り返しが過ぎ、夏の風物詩である「ヒゴタイ」の花が色づき始めました。ヒゴタイはキク科の植物で、野焼きなどの管理がなされた草原に多く生育しています。



ヒゴタイは、いまからおよそ15万年以上前、氷河期に中国・朝鮮半島と日本が陸続きになっていた頃に、日本に入ってきた植物と言われています。
それ以来、国内の草原が分布している地域で世代を重ねて来ました。今では草原自体が全国的に少なくなっていますが、草原が比較的多く残っている阿蘇くじゅう地域には生き残っています。

それでは、ヒゴタイの花が咲くまでを写真で見てみましょう!



1、トゲトゲがありますが、このひとつひとつがつぼみで、花になります。
  つまり、花がたくさん集まってボールのような球状の形になるんです。
  つぼみは緑色。花の色とずいぶん違うんですねぇ。
2、緑色から次第に紫色がかった色になってきました。
3、紫色に変身! 見た目通り触るとまさにチクチク、そして少しベトベトします。
4、ついに花が咲きました。トゲトゲしさがなくなり、柔らかくてやさしい感じになります。

さて、ヒゴタイの生態話が長くなりましたが、その希少なヒゴタイを保護し後世に残すため、7月28日(土)にくじゅう地区パークボランティアのみなさんが保護活動を行いました。

今回の保護活動では、鑑賞する観光客のみなさんにヒゴタイの希少さや保護の大切さを理解してもらえるよう、メッセージカードを作成しました。

何万年も世代をつないできた命。これからも守っていきたいですね。
ヒゴタイは、長者原ビジターセンターに隣接するタデ原湿原の木道等で観察できます。
お盆過ぎまで楽しめますよ~。ぜひ、生で見てみてください!

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2012年07月19日登山道の補修作業を行いました 【くじゅう地域】

阿蘇くじゅう国立公園 くじゅう アクティブレンジャー 指原

雨が多い今年の梅雨ですが、今日も雷鳴が轟く不安定なお天気です。
早く梅雨が明けて欲しいと願うばかりです。

さて、先週木曜日の12日に、泉水山(せんすいさん)の登山道整備を行いました。
今回は、九重・飯田高原観光協会の協力を得て、総勢13名で、ぬかるんで滑りやすい箇所を補修しました。



くじゅう連山の登山道の地表部は、「黒(くろ)ボク土」という、柔らかくてもろい土に覆われていて、踏圧や雨などで侵食されやすい特徴を持っています。
また、雨や雪など水分を吸いやすく、ドロドロの液状になるので、登山時にはコケないようにと、非常に神経をつかいます。



写真の黒ボク土は、火山から放出された火山灰由来のものです。
降り積もった火山灰の上に植物が生え、それが枯れた後に土中の微生物の働きでだんだん変化し、褐色~黒色の土へと変化します。そして、また火山灰がその上に降り積もって…という遷移を繰り返して現在に至り、くじゅうの地層を見ると、褐色の層と黒色の層をきれいに見ることができます。
(地層は主に登山道沿いで見られますが、地層展示のある長者原ビジターセンター http://c-kyushu.env.go.jp/nature/tyojyabaru/ では、くじゅうの大地の歴史を分かりやすく確認できます。)



作業当日は、雨の後で土が少しドロドロしていましたが、荒廃して斜面になっていた登山道に木板を設置して階段上に整備しました。
また、登山道に雨水が多く流れ込まないように、雨水の逃げ道である水道(みずみち)を掘って、登山道の浸食スピードを緩める対策もしました。

が、泉水山の登山道は荒廃が激しく、2年前に整備した箇所で壊れたものも多く見受けられました。
今回の工法が正しかったのかどうかなど、今後も見守りながら地道に補修をやっていくしかなさそうです。

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2012年06月22日初夏の風薫るくじゅう 【くじゅう地域】

阿蘇くじゅう国立公園 くじゅう アクティブレンジャー 指原

こんにちは!
今日は、目が覚めるような青空が広がっています。

午前中に訪れた久住高原では、牛が元気に草をはみ、背後には阿蘇の五岳もはっきり見えました。



この草原が続く雄大な景観は、いつ何時見ても感動します。
阿蘇くじゅう国立公園の草原景観は、まさに日本の宝です。

ところ変わって、飯田高原のタデ原湿原では、初夏を彩るキスゲ〔別名:ユウスゲ〕(ユリ科)の花が一輪咲きました。



観察していると、ハチがさっそく「蜜を拝借~♪」とばかりに、花の中へ潜っていきました。
茎の方へ目をやると、そこにはびっしりとアブラムシが。
白い粒のようなものがそれで、甘みがあると言われる茎はアブラムシの大好物のようです。

花の終わったチガヤ(イネ科)は、白い尻尾のような綿毛に変身(写真下)。
風でゆらゆらとなびく姿は、つい、ぼ~っと見とれてしまいます。



これからのくじゅうは、草原を中心に花の季節を迎えます。
風薫る、花咲く高原へ遊びに来てみませんか?

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2012年06月08日山がピンクに染まる週間 【くじゅう地域】

阿蘇くじゅう国立公園 くじゅう アクティブレンジャー 指原

みなさんは遠くから山を眺めて、山が花で染まる景色を見たことはありますか?



写真は、6月6日(水)に坊ガツル湿原から撮った、くじゅう連山の東側にある「平治岳(ひいじだけ)」という山です。
山頂付近が筆で色づけされたようにピンク色に染まっています。
紅葉ならまだしも、花の色で山の色が変わるなんて、私はくじゅうに来るまで見たことがありませんでした。

では、その山頂はどうなっているのか。期待で胸が膨らみます!

山頂はご覧のとおり、ミヤマキリシマのお花畑!!



ミヤマキリシマはツツジ科の低木で、くじゅうや阿蘇、雲仙、霧島など、火山地域特有の環境で育つ、地球上で九州にしか自生しない貴重な高山植物です。

くじゅう地域は、ミヤマキリシマの大群落がある九州でも屈指の生育地で、この時期は登山者が全国から花を愛でにやって来ます。
去年初めてミヤマキリシマの咲く光景を見たときは、鳥肌が立ちました。
まさに感動の花園です。

ミヤマキリシマは現在、標高1600m~1700mにかけてのエリアで見ごろを迎え始めています。6月中旬すぎくらいまで楽しめそうです。



ミヤマキリシマもよ~く見ると、ピンクの中でもオレンジがかった色の花があったり、稀にまっ白な花を咲かせているものもあったりします。
人間と同様、花の表情もそれぞれ違っています。花の表情を観察してみるのも楽しいですよ。

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2012年06月08日くじゅう連山の山開き 【くじゅう地域】

阿蘇くじゅう国立公園 くじゅう アクティブレンジャー 指原

第60回のメモリアルイヤーとなった「くじゅう山開き祭」が、6月3日(日)、大船山(たいせんさん)山頂で行われました。
当日は山開き祭、そしてくじゅうの初夏のシンボルであるミヤマキリシマ(ツツジの仲間)を待ちに待った多くの登山者が訪れました。



(上)山頂祭でスピーカーを片手に挨拶する竹田市長代理の渡辺さん。
(中)白装束をまとった天台宗・久住山猪鹿狼(いから)寺のお坊さんによる神事。
(下)登山者皆さんで安全を祈願して万歳三唱!

この日は、朝から曇天&ガスが立ち込め、スッキリしない天気でした。
しかし、山頂祭が終わって下山中、なんとガスがはれ、ミヤマキリシマとくじゅうのやまなみが眼前に現れました!



ガスがはれた後のみずみずしいミヤマキリシマは、なんとも綺麗です。

1年間で一番多くの登山者がくじゅう連山に訪れるこの時期。
今週末から来週にかけては、山頂付近でミヤマキリシマが見ごろを迎え、同時に登山者の数もピークを迎えることが予想されます。

梅雨に入り、登山道も雨の影響でグチョグチョになっている箇所も多く、また、岩の上は大変滑りやすくなっています。足元に十分気をつけながら、一歩一歩ゆとりを持って山登りを楽しんでください。

ただ、登山道を外れて歩くと自然を傷めてしまいます。ご協力よろしくお願いします。

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2012年05月29日『アクティブ・レンジャー写真展』開催中 【くじゅう地域】

阿蘇くじゅう国立公園 くじゅう アクティブレンジャー 指原

カッコウに続いて、ハルゼミもジャージャーと鳴き始めました。
保護官事務所にいながら、なんとも贅沢なBGMです。

さて、長者原ビジターセンター(TEL0973-79-2154)では、6月20日(水)まで、『アクティブ・レンジャー写真展』を開催中です。



昨年末に南阿蘇で始まった巡回写真展も、折り返し時期を迎えました。
国立公園や希少野生生物保護の最前線で活動する、九州6地区(阿蘇、くじゅう、雲仙、対馬、えびの、屋久島)計9名のアクティブ・レンジャーの個性が光る写真展となっています。


上の写真は、くじゅう作品の一部です。

各地区の素晴らしい自然はもちろん、現在それぞれの地区が抱えている課題やその現状について、メッセージを添えて展示しています。
また、小さなプレゼントがもらえる、クイズチャレンジもありますよ。

くじゅうの長者原にお立ち寄りの際は、タデ原湿原の自然散策とセットで、写真展も楽しんでいただければうれしいです。

ちなみに、6月9日(土)は、わたくし指原が、ビジターセンター内にて解説等のご案内をします。

皆様のご来館をお待ちしています。


***くじゅう展示終了以降の写真展開催日程***

 6月27日(水)~7月30日(月)
  屋久島世界遺産センター

 8月7日(水)~9月9日(日)
  えびのエコミュージアムセンター

※上記スケジュールは現時点での予定であり、期間、場所等が変更になることもあります。ご了承ください。

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2012年05月16日模様のナゾ 【くじゅう地域】

阿蘇くじゅう国立公園 くじゅう アクティブレンジャー 指原

先日巡視で訪れた「姫島」の観音崎での出来事です。
あ、姫島といっても「くじゅうにそんなところあったっけ?」と思われる方もいるかもしれませんね。
しばし、姫島のご紹介を...。



姫島は、大分県北部の国東半島からフェリーで約20分ほどの瀬戸内海西端に浮かぶ離島です。
波で浸食を受けた奇岩断崖など、海岸部特有の素晴らしい自然景観が楽しめ、島の約半分が瀬戸内海国立公園に指定されています。
くじゅう自然保護官事務所は、くじゅう地域だけでなく、瀬戸内海国立公園の大分県地域についても、公園管理を行っています。
ちなみに、ニホンザルで有名な高崎山や神仏習合の仏の里として有名な国東半島の中心部も瀬戸内海国立公園に含まれています。

さて、前置きが長くなりましたが、さっそく観音崎で撮った下の写真をご覧ください。



これはツワブキという植物の葉っぱですが、にょろにょろにょろと線が縦横無尽に描かれています。
「いったい、誰の仕業なんだ?!」
と思っていたら、佐保レンジャーが、
「これは虫が食べた後だよ。」と教えてくれました。

事務所に戻って調べてみると、これは通称「ハモグリムシ(葉潜り虫)」という虫たちによるものだとか。
代表的なものには、ハモグリバエやハモグリガなどが挙げられるようです。
でも、どうやってこの模様が描かれているんでしょうか?
どこが始まりで終わりか分かりますか?



成虫が葉に卵を産みつけたあと、孵化した幼虫は葉の中へ潜入し、ムシャムシャと葉の肉を食べながら進み、成長していくので、このような跡がつくそうです。
よーくみると、線がだんだん太くなっていっているのが分かりますね。
写真の葉っぱでは、線は葉の端まで到達しておらず、脱出した気配がないので、まだ幼虫は葉の中で成長途中なのでしょう。

今回は、残念ながら幼虫の姿をとらえられませんでした。
もっと鋭い観察眼が必要ですね。

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2012年04月27日季節変化の爪痕 【くじゅう地域】

阿蘇くじゅう国立公園 くじゅう アクティブレンジャー 指原

4月26日(火)、牧ノ戸峠から久住山の登山道の巡視に行ってきました。
久住分れ(くじゅうわかれ)という場所へ向かう登山道にさしかかった時・・・



進入禁止ロープを張っている杭が、ばたばたとドミノ倒しのように整然と倒れていました。
立て直そうと、スコップで穴を掘ってみると・・・



穴に水がしみだして、5cm程度の深さになりました。
この場所は、水が集まりやすいようです。

冬の間は寒さで土も凍っていますが、暖かさと寒さが入り混じる春になってからは、凍って溶けての繰り返しによって土が持ち上げられ、土がゆるくなって倒れてしまったようです。
また、最近の春の嵐も影響したのかもしれません。



作業後、すっかりきれいになりました。

これからGWに突入して、山は連日、賑わいをみせます。
正しく登山道を歩いて、山登りを楽しんでくださいね!

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2012年04月18日名水と花咲く 男池園地 【くじゅう地域】

阿蘇くじゅう国立公園 くじゅう アクティブレンジャー 指原

4月16日(月)に、くじゅう連山の西側にある、黒岳山麓の男池(おいけ)園地へ巡視に行ってきました。
黒岳はくじゅう連山の中で唯一、山頂までが原生林で覆われており、巨木はもちろん、素晴らしい広葉樹の森が広がっています。
男池は、「男池湧水群」として環境省の名水100選に選ばれており、黒岳によってもたらされる、きれいな湧水が周辺で湧いています。


ひしゃくで水が飲める男池湧水(上)。冷えた天然水が喉を潤してくれます。
男池の名水が豪快に落ちる「名水の滝」(下)も散策におすすめ。

散策路に入ると、カエデ類が他の木より早く新芽を出していて、うっすらと森も緑がかっていました。

その中で、ひときわ目を引く植物を発見!


みなさんは、何に見えますか~??

私は、空を飛ぶ鳳凰のように見えます。

これはチドリノキというカエデの仲間です。
果実が千鳥の飛ぶ姿に似ていることから名がついたそうです。
なので、この写真のような姿からつけられたわけではないみたいです。
ちなみに、赤いのは、鱗片葉(りんぺんよう)と言って、葉の一部です。

そして、足元には、目を凝らさないと気づかないような、小さな草花たちが可憐に花を咲かせていました。


(左上から時計回りに)
アズマイチゲ(キンポウゲ科)、ハルトラノオ(タデ科)、セントウソウ(セリ科)、シロバナネコノメソウ(ユキノシタ科)

黒岳では、4月29日(土)に山開きが行われ、4月末から5月初め頃に、シャクナゲの花が咲きます。
山登りや自然散策に、よい季節ですね!

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2012年04月10日今シーズンも無事終了 【くじゅう地域】

阿蘇くじゅう国立公園 くじゅう アクティブレンジャー 指原

数回に渡り、野焼きの話題をお伝えしましたが、今回がこれでラスト。
九重町にある飯田高原の野焼きは、7日(土)に泉水山とタデ原湿原を焼き、無事終わりました。


上:タデ原の野焼き風景。
下:やまなみハイウェイとタデ原。ドライブ日和!

野焼きが終わって、関係者もほっと一息。
これで、くじゅうの春もようやく開幕です。

4月末には、タデ原や泉水山では、湿原や草原を好む、以下のような花々が咲き誇ります。

タデ原のサクラソウ(上)と泉水山のキスミレ(下)。
見られるのも間近です。もうしばらく、お待ちください。

特に泉水山のキスミレは、山肌を黄色に染めるほど一面に咲き乱れ、飯田高原随一の自生地です。

野焼きによって維持されてきた「くじゅうの春」を味わいに、ぜひおいでください。

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