九州地域のアイコン

九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

薩摩街道 出水筋(いずみすじ)を楽しむ! 出水市の魅力をご紹介

2023年07月25日
出水 岡本 安弘
みなさん、こんにちは。出水自然保護官事務所の岡本です。

 かつて薩摩藩では、街道は「筋」(すじ)と呼ばれていました。薩摩街道 出水筋は薩摩藩の鹿児島城と肥後藩の熊本城を結ぶ街道で、延べ長さは約200キロメートルにもなります。江戸時代は参勤交代ルートの一つで、江戸時代後半になると他の筋よりも出水筋が主流となり重要視されたとのことです。江戸幕末から明治維新の間に活躍した人達も歩いた路だそうです。出水市の区間は、鹿児島県と熊本県の県境から、西隣の阿久根市に至る約30キロメートルの路です。

ご参考:薩摩街道 出水筋のマップは、鹿児島県ホームページをご参照ください。
 出水市には、出水駅に手ぶらで行ってサイクリングを楽しめるサービスがあります。長距離走やタイムアタックなど高いレベルではありませんが、軽やかな風に吹かれ、行き着いた先々の景色や史跡などへ気の向くままに立ち止まって楽しみ、心地良い運動で心身のリフレッシュを味わいながら薩摩街道の出水市区間をサイクリングし、出水市の魅力をご紹介したいと思います。

ご参考:出水駅に手ぶらで行ってサイクリングを楽しめるサービスは以下をご参照ください。

見どころ1 境川の路

出水駅で自転車をレンタル後、サイクルトレインを利用し熊本県との県境を越えて熊本県水俣市の袋(ふくろ)駅に向かいます。袋駅前から薩摩街道 出水筋の古道を楽しむことができます。

 
駅ホームの待ち位置
列車は黄色い線の内側かつ、自転車マークの位置で待ちます。列車に乗る際に乗務員の方に声を掛け、乗り方を聞いたり、降車駅を伝えたりします。
駅ホームのサプライズ
駅に到着したのは熊本県PRマスコットキャラクターが描かれた列車でした。運行スケジュールを全くノーチェックでしたので驚きと嬉しさでいっぱいでした。
袋駅前の小径
熊本県水俣市の袋駅を降り、薩摩街道 出水筋の小径に入っていきます。古道の雰囲気を感じることができ、気分が高まります!
県境近く
県境近く(北側)の分岐はわかり辛くなっています。肥薩おれんじ鉄道線路を右手に見ながら境川へ下って行きます。この路は舗装されていませんでした。通行にご注意ください。
境橋
薩摩藩と肥後藩の境は鹿児島県と熊本県の境に引き継がれています。江戸時代は防衛のため川にかかる橋はなく、明治 西南戦争後に境橋がかけられたそうです。
境川
境川は過去、様々な人が行き来し、時には争いの場所となりました。今は静かに流れています。時のうつろいと重なり感慨深いです。
境橋過ぎの小径
境橋の隣り(南側)にステキな小径が有ります。木々のシャワーを浴びながらベンチ(写真奥の木々を抜けた所に有ります)で一休みすることができます。

見どころ2 野間之関跡、武家屋敷 出水麓(いずみふもと)の路

心地良いアップ・ダウンを繰り替えしながら南下して行きます。八代海(不知火海)の展望や、田んぼや畑、山々などの豊かな自然の景色を味わうことができます。

 
八代海(不知火海)展望
八代海(不知火海)を展望できる場所はお勧めのビューポイントです。気分爽快です! 現在の薩摩街道は自動車も通ります。歩行者優先を心がけ交通ルールを守って安全に走行ください。また、夏場は小まめな休憩と水分補給もお忘れなく。
野間之関跡
江戸時代 泰平の世に入り各藩は国境の警備を緩めましたが薩摩藩は体制堅持のため更に強化したそうです。ここ野間之関は国境警備の要衝かつ最前線だったそうです。
加紫久利神社
加紫久利(かしくり)神社と、清掃されていた方にご挨拶しました。木々と参道がつくる光と影のコントラストがとても綺麗でした。
田んぼと矢筈岳
田植えが終わったばかりの田んぼの横を通りました。九州新幹線の高架橋が見えます。奥の高い山(写真正面少し左)は熊本県境に位置する矢筈岳(やはずだけ)です。雲が掛かり山頂が見えないのが少し残念でしたが、心に残る姿です。
出水の大楠
出水市街を東から西に向かう手前で米ノ津(こめのつ)川を渡ります。そこから薩摩街道を400メートルほど離れたところに樹齢1300年とも言われる「出水の大楠」があります。
米ノ津川清流
大樹「出水の大楠」への行き来では米ノ津川の清流を見ることができます。推しの寄り道ポイントです。
米ノ津川を渡って薩摩街道を約1キロメートル行くと武家屋敷 出水麓に着きます。

見どころ3 野田郷の路

出水市街を東から西に向かいます。かつて薩摩街道で見えた景色と今の景色は違いますが、過去に想いを寄せたとき、変わらないものとつながる時間の路があるように思えます。

 
高尾野川
高尾野川と野田川を渡っていきます。川近くには木陰が有り、休憩することができます。写真は高尾野川です。草むらの危険動物(毒蛇マムシなど)にご注意ください。
野田川
野田川ではカワセミとアオサギを見ることができました。田んぼなど私有地へ入ることはご遠慮ください。
野田郷
野田郷では、江戸時代の武家門や石垣が薩摩街道沿いに約1キロメートルも連なっています。
野田郷
当時の面影を薩摩街道沿いで見れるのはたいへん貴重な体験になりました。私有地のため中に入ることは出来ません。ご注意ください。
野田郷から西へほどなく行くと隣接する阿久根市となります。野田郷駅から出水駅までの行程はサイクルトレインを利用しました。

これまでご紹介した薩摩街道 出水筋を通じて出水市の魅力が少しでも伝われば嬉しく思います。

おまけ 行程の選択肢が多いほど良いのか妄想してみました

サイクリングで行く薩摩街道 出水筋をもっと拡げてみたいと思いました。そのとき、行程の選択肢が多いほど心身に余裕が生まれ危険回避につながると思います。選択肢を増やしてくれるサイクルトレインはとても良い存在です。さて、出水市観光ポータルサイトにステキなプランが掲載されていました。個人見解かもしれませんが、行程の選択肢が多いほど、色んなバリエーションの計画を妄想できて楽しくなります。
以上