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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

さわやかな清流沿いを歩く! 出水市の魅力をご紹介

2023年06月26日
出水 岡本 安弘
みなさん、こんにちは。出水自然保護官事務所の岡本です。

今回、鹿児島県出水市の米ノ津川(こめのつがわ)清流域より初夏の魅力をお伝えします。米ノ津川の延べ長さは約21キロメートルで、源を出水市東部の伊佐市境の山地に発し、出水市の中央部を経て、西部の八代海(不知火海)に注いでいます。中流域から下流域の川沿いに整備されてある片道約14キロメートルのトレイルコース(※1)を歩きながら、爽やかな清流と新緑が映える豊かな自然をご紹介します。

<トレイル歩行での注意点>
・登山などと同様、歩行は自己責任となります。※1のホームページに掲載されているコースの歩き方・マナー・注意事項・その他の情報および、歩行計画・連絡手段・天候などのご確認をお願いします。特に今回のコースは山間部の川沿いに有るため、川の増水や斜面の崩れはどこででも起こりえます。安全を最優先でお願いします。(安全が確保できなければ迷わず中止や迂回をお願いします。)
・片道約14キロメートルは長いと思われる方がいるかもしれません。実際、小休止を入れつつも山間部の約5時間歩行は疲れが蓄積しました。見所箇所など一部のセクションだけを歩く方法も有ります。
出水駅(※2)から西側(下流側)起点までは市街地で約2キロメートルです。西側起点から東側(上流側)起点までのトレイルコース近くの幹線道路(国道447号)では路線バス(※3)が運行されています。安全をしっかり確保しつつ、無理のない計画でトレイルをお楽しみください。
 

東側(上流側)起点を出発! 出水市 上大川内

標識 スタートポイント
起点など、所どころに専用の標識が立っています。
厳島神社
厳島神社へご挨拶。お務め中の神社の方と朝の挨拶を交わして出発です。
今回利用したトレイルコースの情報はホームページ掲載(注意情報や迂回路など)が最新ですが、歩くときの参考として、木製の杭タイプとテープタイプの2種類の標識が設置されています。
標識 木製杭
標識にはさわらないようにお願いします。
標識 テープ
風雨などで破損している場合も有りますので、お手元に最新の地図やコース情報をご準備して歩いてください。

トレイル沿いで田植えが始まり、田んぼが輝いてました!

田んぼ
朝日が、田植えが終わったばかりの田んぼを輝かせていました。
田んぼ
右側の農道がトレイルコースで、立ち止まって振り返ったところです。農作業の迷惑にならないよう歩きました。挨拶を交わすと気持ちが良かったです。
田んぼの良く見える所に米の豊作を守ると言われる石像「田之神」が建てられていました。コースそばに幾つか有りました。みなさんも少し寄り道して探してみてはいかがでしょうか。
田之神
右手にはメシゲ(御飯しゃもじ)、左手にはお椀を持たれています。「タノカンサア」と呼ばれ親しまれているそうです。お花が添えられ、地域の人たちから大事にされているんだな~と感じました。

爽やかな清流沿い

西の下流側へ向かいますが山間部のため途中には上りも有ります。上りでも苦無く歩けるよう、下りでは一旦立ち止まって、振り返ったり、左右を見渡したり「景色を満喫するぞ!」というぐらいのペース配分が良いかもしれません。でも歩きながら周りを見渡すのは危ないです。歩くときは一歩一歩に集中をお願いします!
清流
写真右奥からの農道がトレイルコースです。爽やかな清流のすぐ横を歩きます。
清流
山間部の川沿いは川の増水や斜面の崩れがどこででも起こりえます。安全が確保できなければ迷わず中止や迂回をお願いします。
清流
釣りをされてる方がいました。鮎釣りでしょうか。

見所箇所のご紹介1 高川ダム、五万石溝跡(ごまんこくみぞあと)

高川ダムは水田用と畑地用の水補給のため築造されました。バードウオッチングのスポットでもあります。代表的な野鳥は、通年:ヤマセミ、カワセミ 夏:アカショウビン、オオルリ 冬:オシドリ、アオジ などなど。出会えたらラッキーですね。
五万石溝跡は約20年の歳月をかけ江戸中期1734年に完成したと伝えられています。延長は約20キロメートルにも及び、五万石(1石=150㎏)の米を収穫することを目指してこの名が付けられたとのことです。
高川ダム
高川ダムを撮影した場所(トレイルコース上のダム奥側。未舗装の狭い道路)は緑深く豊かな自然で取り囲まれています。この日はいませんでしたが、ダム周辺でヒルが確認されているそうです。舗装道路で陽が入る対岸でもバードウオッチングができます。(トレイルコースである写真奥のダム造築物を写真右から左へ行くと対岸に行けます。コースから200メートルほど外れます。) カワセミを両岸で見かけました。
五万石溝跡
五万石溝跡は過去の水害で大きく損壊したこともあり現在は使用されていないそうですが、今に残る溝跡を見ると築造当時の土木工事水準の高さをうかがい知ることができます。トレイルコース沿いをしばらく続く溝跡で、築造当時のたいへんな苦労に想いを馳せながら歩きました。

トレイル最大の難所?!

今回のトレイルで、私が感じた最大の難所は山岳遊歩道です。この区間は急傾斜で、足下に落ち葉と石が有ります。過去の大雨影響なのか滑りやすいです。注意して歩行してください! ヒル対策もお願いします。
山岳遊歩道
山岳遊歩道の東側(上流側)入り口です。

見所箇所のご紹介2 見頃のアジサイ、苔むす小径(こみち)

市街地ではアジサイと苔むす小径(こみち)がとても美しかったです。地域の方がとても大事にされているからこそ見れる美しさに、しばらく立ち止まって眺めていました。
アジサイ
アジサイが見頃を迎え、とてもキレイでした。歩いてきた疲れを忘れさせるほど美しく咲いてました。
苔むす小径
「住宅街の中に苔むす小径が有る!」と驚きました。ほどよい竹と木々で少し薄暗く、両脇の水路から水分を得られるのがちょうど良いのかもしれません(大雨時は増水に注意かも)。ふかふかの苔を傷つけないよう、ゆっくり歩きました。

西側(下流側)起点に到着! 出水市 麓(ふもと)町

以下標識写真の後ろの建物は出水麓(いずみふもと)歴史館です。館内には鎧・兜、古文書、空撮映像やジオラマ、年表などが展示されています。出水麓武家屋敷群の歴史と文化を楽しみながら学ぶことができます。
標識 エンドポイント
後ろの建屋は出水麓歴史館です。入り口の前には雨をしのげるベンチとテーブルが有り、休憩することができます。
伺った武家屋敷の竹添邸、税所(さいしょ)邸ではガイドさんから説明を聞くことが出来ました。それぞれの邸で造りの特徴が違うそうです。違いを実際に見て、たいへん興味深く感じました。通りの石垣や区割りも当時の面影をそのまま残しているそうです。今も江戸時代と同じ様な景色が見られることに、とても感慨深くなりました。
武家屋敷
税所邸の門です。周囲の石垣は、建てられた当時からほとんど変わってないそうです。
武家屋敷
当時の面影をそのまま残す碁盤の目のような町割と、写真のような大きな通りが印象的でした。
次は、ぐんぐん育った稲穂を「夏」、朱や黄金に染まった山肌や稲穂を「秋」、その次は「冬」、そして「春」。山々の樹木、清流、田園などの風景、野鳥などの動物、季節ごとの豊かな自然を見に、これからも歩いてみたいと思いました。米ノ津清流域の魅力が少しでも伝われば嬉しく思います。

 
(※1)九州オルレ「出水コース」を利用させていただきました。詳しくは鹿児島県出水市観光ポータルサイトからご確認をお願いします。特に、歩き方・ルール、注意事項、その他情報(チェック点)のご確認をお願いします。九州オルレ出水コースを歩こう! 
「お知らせ」に出水コースの記事が有りました(2023年6月19日現在)。参考で記述します。『【出水コース】コース再開及び迂回路について 2022年03月03日』【出水コース】コース再開及び迂回路について お知らせ 九州オルレ
(※2)出水駅 鉄道利用時は、最新の時刻表および運行状況など各鉄道会社のホームページでご確認をお願いします。
・JR九州 出水駅の案内 出水駅 JR九州
・肥薩おれんじ鉄道 出水駅の案内 出水駅 肥薩おれんじ鉄道
(※3)トレイルコース近くの幹線道路(国道447号)路線バス利用時は、最新の時刻表および運行状況など出水ふれあいバスのホームページでご確認をお願いします。今回、下流から上流へ移動で利用したのは「大川内便」です。ふれあいバス 出水市
(※4)日本最大級の出水麓(いずみふもと)武家屋敷群 日本最大級の出水麓式武家屋敷群 出水ナビ English) One of the largest in the country - The Izumi-Fumoto Samurai Residences  The Izumi-Fumoto Samurai Residences - One of the largest in Japan|IZUMI NAVI
日本遺産に登録されています。出水麓 薩摩の武士が生きた町 English) Japan Heritage Fumoto - Defense Network of Satsuma Samurai
 

<おまけ> 薩摩黒和牛とサプライズな出会い、日本最大級のアジサイ峡


ゴールで薩摩黒和牛が迎えてくれました。観光用牛車の牛で、お客さんが来るまで待機しているところでした。サプライズで出会えたので、ゴールを迎えてくれてありがとう!って勝手にお礼を言いましたが、私のことなど少しも気に掛けず、草を食べるのに集中してました。これから牛車のお仕事ですもんね。
東側(上流側)起点近くの国道447号から側道の舗装道路を5キロメートルほど行くと、日本最大級のアジサイ峡「東雲(しののめ)の里」が有ります。ひとつの小高い丘が全て園になっていて、滝や沢、自然の地形を活かした遊歩道や展望台があります。もし、お時間が許せば、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。私が立ち寄った際、色とりどりのアジサイを満喫できました。秋には紅葉が楽しめそうです。トレイルで案内しました路線バスで近くまで行けます。
以上