九州地域のアイコン

九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

くじゅう連山の山岳信仰

2023年08月08日
くじゅう 神代拓馬
こんにちは。
くじゅうは、30℃近くになる日も多くなり、夏を感じさせる季節になってきました。
 
気温が夏本番になり、登山者の活気が落ち着く時期ですが、皆さんは登山の始まりをご存じでしょうか?現在は娯楽で登山を楽しまれる方が多いと思いますが、遠い昔はくじゅう連山だけでなく、日本全体で全く違う目的で登山していました。そこで今回は、くじゅう連山の登山の歴史について話していきたいと思います。
 
山は水の始まりとされていたことから、古くから水分神(みくまりしん)がいると考えられ、各地で水源信仰が発達しました。くじゅう連山では、中岳近くの御池(みいけ)が年中、水を溜めていることから、水源信仰の対象になっていました。
元々、水だけではなく火山などの自然や気候は、当時の人々には恐ろしく、大きな力を持った神の存在と考えられてきました。その後、最澄や空海などが、800年以降に密教の考え方を日本に普及させ、山林を歩き回ることで、自ら悟りを開こうとする行為が盛んに行われるようになり、くじゅう連山だけでなく、全国各地で山岳信仰が栄えました。これが、登山の始まりとされています。
くじゅう連山では、中岳近くの御池を中心に山岳信仰が栄えました。文献では主に法華院(ほっけいん)、金山坊(きんざんぼう)、猪鹿狼寺(いからじ)の3つの寺院が記録に残っています。昔の文献には、「久住山は、九州第一の高山霊水である」ことや、「山を上宮と崇め、下宮の本宮を獄宮と号した」こと、「坊中十六院あった」ことなどが書かれています。しかし、明治以降、神仏分離が行われ、くじゅうだけでなく全国の山々で山岳信仰の拠点であった多くの寺院がなくなってしまいました。くじゅう連山の各所では、現在も山岳信仰の名残である祠や石碑、仏像などが点在しています。
高山霊水地の御池
法華院開山祭
中宮跡
上宮跡
ミヤマキリシマや紅葉を見るのが目的で登山される方が多いですが、このような歴史巡りをメインとした登山もしてみてはいかがでしょうか?