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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

ひとはあるものだけで豊かになれる

2023年07月03日
屋久島 中本合海
皆さんこんにちは。屋久島事務所の中本です。
 
今回は屋久島国立公園である口永良部島をご紹介します。
屋久島からフェリーで約2時間の距離に位置する、ひょうたん型をした小さな火山の島です。
人口はおよそ100人、島には小さな商店が1つだけ。

 
屋久島国立公園

島の南東部中央には2015年に爆発的噴火が発生した「新岳」がいまなお噴煙をあげています。
豊かな自然景観が評価され2007年に島全体が霧島屋久国立公園(現在の屋久島国立公園)に指定されました。
屋久島から撮影された2015年新岳噴火

温泉

火山島での楽しみといえば!温泉。泉質の異なる温泉がいたるところから湧き出しており、火山の恵みとエネルギーを肌で感じることができます。
本村温泉
本村温泉(単純温泉)※現在工事中
西之湯
西之湯(含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉)
湯向温泉
湯向温泉(含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉)※現在移転中
寝待温泉
寝待温泉(酸性・含硫黄・ナトリウム・塩化物温泉)※現在利用できません
西之湯は数年前の台風で大きな被害を受け建物が壊れました。
その後島民によるボランティアで建物を再建したそうです。
すぐに資材調達や業者を呼ぶことが難しいこの島では、大抵のことは自分たちの手でやるそうです。子供の頃から手伝うことが当たり前なのだとか。
移住してきた方から、常に人手不足なこの島では1人1人が大事な戦力で、必要とされていると感じると伺いました。

生き物

島の代表的な生き物のエラブオオコウモリ。
エラブオオコウモリ
エラブオオコウモリとは、口永良部島及びトカラ列島に生息するオオコウモリの一種で、口永良部島には最も多い50~100頭(推定)が生息しています。
腕を広げた長さは約14cm、果実を主食としています。
1975年に国の天然記念物に登録され、絶滅危惧ⅠA類(CR)※最も絶滅の恐れがある
に分類されています。生息環境の悪化が危惧される中、2019年には国内希少野生動植物種に指定されました。
そんな大変希少なエラブオオコウモリですが、島内には餌を食べに集まる木が何カ所かあります。
よく見られる木には看板がありますので、日没後30分の餌の時間を狙って探してみましょう。
そのほかにも島内を巡っているとヤクシカや野生化したヤギ、放牧された牛や馬、集落の川ではオオウナギに出会うことができます。
ヤクシカ

えらぶ八景と山

島の8カ所にビューポイントが設置されています。島内をドライブしながらえらぶ八景を探してみてください。
①岩屋泊※現在通行止め ②番屋ケ峰 ③新村 ④永迫 ⑤寝待 ⑥古岳(西麓) ⑦古岳(東麓) ⑧古岳火口※⑥~⑧は立ち入り規制中
 ▼えらぶ八景のひとつ、古岳火口
古岳火口
新岳の噴火前は、古岳や新岳の登山が可能でした。古岳では樹林帯を抜けると海と屋久島、新岳が望め、6~7月にはサツキが咲き誇り山肌をピンクに染めます。山頂まではおよそ2時間半、火口を間近で見ることが可能です。
現在は噴火警戒レベルが3(2023/6/30現在)の入山規制であること、登山口に向かう町道の立ち入り規制により入山することはできませんが、解除されたら皆さんにこの景色を見て頂きたいです!
サツキ

口永良部島の海は珊瑚や魚がたくさん。イルカやウミガメを見ることもできます。
海岸沿いには多くの生き物が生息し、島民はヘキ釣りや磯もん摂りを楽しみます。
口永良部島の海

 
そんな豊かな海に囲まれた口永良部島ですが、実はこんな問題が起きています。
西之浜の漂着ゴミ
漂着ゴミ
西之浜の漂着ゴミ
漂着ゴミ
この写真が撮影されたのは西之浜海岸です。
何年もの間、黒潮に乗って大量の海ゴミが浜に流れ着き続けています。
大量の漁網が絡み合い、大きな塊となり、大きな壁を作っています。
漁網は専用のカッターで切断しながら回収していくのですが、別の漁網やつる性の植物と絡み合い、
袋に入るサイズにカットするのも一苦労。
岩場には大小様々なゴミが挟まっており、砂浜はマイクロプラスチックだらけ。
景観の悪さだけでなく、かなりの悪臭が漂います。
毎年島民による清掃活動に加え、屋久島からパークボランティアによる遠征で1泊2日の清掃活動を行っています。
大量に回収
パークボランティアの活動で昨年度は1tフレコンバック約16袋分もの漂着ゴミを回収しました。
それでも浜からゴミが無くなることはありません。
そして台風で新たに大量のゴミが流れ着くのです。
 
世界遺産屋久島のすぐ隣でこのような現実があるとは、驚きです。
また、外国語表記のゴミを見る度に、自国のゴミもまたどこかの国へ流れていることを考えさせられます。

ひとはあるものだけで豊かになれる

島にはコンビニやゲームセンター、娯楽施設はありません。
通販で購入した商品は1日2日では届きません。
しかし、今なお活動を続ける火山、山の幸、海の幸、温泉、素晴らしい自然があります。
時に優しく、時に厳しい自然と共に暮らすエネルギッシュな人々がいます。
屋久島とは違った魅力を持つ口永良部島。
「ひとはあるものだけで豊かになれる」この言葉の意味を知りたくなったそこのあなた!
火山のエネルギー溢れる口永良部島に是非、訪れてみてください!
 
 
口永良部島ではキャンプができません。民宿やレンタカーには限りがありますので必ず事前に調べてからご来島ください。