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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

屋我地のアジサシ2020

2021年03月22日
やんばる 佐藤 裕樹

こんにちは。

やんばる自然保護官事務所アクティブレンジャーの佐藤です。

7月から屋我地(国指定鳥獣保護区)のアジサシ類を担当することとなりました。

海鳥の美しく洗練された形と優雅でダイナミックな飛翔には心を奪われるものがありますね。

遅くなってしまいましたが、2020年のアジサシについて調査と活動のご報告です。

今シーズンの幕開けは5月10日頃でした。

その時の記事はこちら→ http://kyushu.env.go.jp/blog/2020/05/2020.html

○アジサシ類の調査報告

屋我地のアジサシ類調査は6、7、8月に1回ずつ、計3回実施しています。

その時の調査結果です。

過去5年の記録と比較してみました。

・6ー8月調査の結果

エリグロアジサシの調査結果


エリグロアジサシの調査結果です。

2020年は合計でのべ72巣(6月15巣、7月57巣)を確認しました。直近5年の中では最も多くの巣が確認され、記録のあるなかでも7月にこれだけの巣が確認されたのは過去最高です。そのうち、7月にヒナを1羽、幼鳥を11羽、8月にヒナを1羽、幼鳥を9羽、確認することができました。確認した巣に比べてヒナや幼鳥の確認数が少なくなったのは、調査の時に波が高く、アジサシたちが繁殖している岩礁を細かく確認できなかったことが要因と思われます。実際はもう少し、巣の数も多いかもしれません。また、例年は8月に古宇利大橋の周辺で長旅に備える親子が確認されますが、今年は確認されませんでした。鳥獣保護区管理員さんの熱心な観察により、子育ては順調に進んでいたことを確認していますので、こちらが把握していない場所にいたのかもしれません。

ベニアジサシの調査結果です。

2020年は屋我地鳥獣保護区内での繁殖は確認されませんでした。6月に成鳥が数羽いたものの、昨年に繁殖が確認された岩礁も含め他に姿はありませんでした。しかし8月の調査では、鳥獣保護区の近くにある養殖用の生簀周辺に約180羽のアジサシの仲間が忽然と現れました。なんと!そのうち120羽ほどはベニアジサシの成鳥と幼鳥でした。どうやら屋我地ではないどこか周辺で、繁殖をしていたようです!

2020年のアジサシたちの繁殖結果をまとめると...

●エリグロアジサシ 

 過去最高の営巣数を確認しました。繁殖も順調に進んでいたため、それなりの数の幼鳥が巣だったと思われます。

●ベニアジサシ

 屋我地での繁殖は残念ながらありませんでした。ただし8月に親子が確認されたことから、周辺での繁殖が考えられました。

2020年はエリグロアジサシの巣立ちした幼鳥たちを把握することはできませんでしたが、

営巣数や観察の結果から、それなりに成功をおさめたのではないかと考えています。

その要因を考えてみると2つのことがあげられます。

1)繁殖岩礁への人の上陸がなかった

 過去には多くの巣が確認され繁殖が順調でも、たった一度の上陸によって全滅してしまう例がありました。釣りやマリンレジャーをする方の協力あっての成果です。感謝いたします。今後ともご協力をよろしくお願いいたします!

2)繁殖のタイミングと台風の襲来がうまくズレた

 屋我地で繁殖するアジサシたちですが、台風による高波で岩礁ごと波をかぶってしまい失敗するケースもありました。今シーズンは長雨による影響はあったかもしれませんが、台風が直撃しなかったことが幸いしました。

○アジサシ類に関する活動

また今年は新型コロナウイルス感染症のため、例年通りの活動が制限されるなか、県内での感染が落ち着いたタイミングで、感染症対策に留意しながらひるぎ学園5年生のみなさんとアジサシ観察会を行いました。

あと2ヶ月もすれば、屋我地にアジサシたちが戻ってきます。

次のシーズンはどうなるでしょうか。

今シーズンは屋我地周辺でベニアジサシが繁殖している可能性もみられたことから、

アジサシの群れを見た!、○○島の周辺で見たなど情報がありましたら、ぜひご一報ください。

そして彼らアジサシたちが安心して繁殖していけるように、

みなさんのご協力をお願いいたします。

アジサシたちの飛来を楽しみに待ちましょう!