九州地域のアイコン

九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

アサギマダラのマーキング会 【屋久島地域】

2018年11月21日
屋久島国立公園 アクティブレンジャー 水川

みなさん、こんにちは!

屋久島自然保護官事務所の水川です。

1111日(日)に、自然に親しむ集い~アサギマダラマーキング会~を開催しました。

 

みなさんは日本で唯一旅(長距離移動)をするチョウ、アサギマダラをご存知でしょうか?

 

アサギマダラの写真

▲アサギマダラ(写真:西川高司)

 

今の時期(秋)は本州から日本の南の地域や台湾などに向かって移動している個体を見ることができます。

南下する個体は、11月頃旅の途中で交尾し、幼虫のエサとなる草(食草)を見つけて卵を産みつけ、そして一生を終えます。

ふ化した幼虫は越冬し、春になると蛹化・羽化します。そして今度はこの個体が北に向かって旅を始めます。

目指すは本州の高原地帯などの涼しい所。

北上する個体は、6月頃本州のどこかで産卵し、夏前に一生を終えます。

その子どもは夏に蛹化・羽化し、8月下旬頃から南に向かって旅を始めます。

 

つまり、アサギマダラは世代交代しながら北上と南下の旅を繰り返しているのです。

 

なぜ旅をするのでしょうか?

ひとつは気温です。

暑さや寒さを逃れるために適温の地へ移動するといわれています。

次に吸蜜花です。

アサギマダラのオスは、ヒヨドリバナなど特定の花からしか蜜を吸いません。

ヒヨドリバナなどの花にはメスを誘うために欠かせないフェロモンの材料となる物質(ピロリジジン・アルカロイド)が含まれています。それらを求めて移動しているそうです。

 

ヒヨドリバナ

▲ヒヨドリバナ。

 

ときには2000kmも旅をするアサギマダラ。

この不思議な旅の実態は、1980年頃から行われている全国の有志によるマーキング調査によって解明されてきました。

アサギマダラは鱗粉が少なく、浅葱(あさぎ)色のまだら模様があるので、そこに油性ペンで文字を書くことができます。

その特性を生かして、捕獲地や捕獲日、捕獲した人の名前を羽に書いて放し、別の地点で再び捕獲された情報を集約して移動経路や時間などを調べます。これがマーキング調査です。

 

マーキングしたアサギマダラ

▲マーキングしたアサギマダラ。

捕獲地(屋久島)の「YAKU」、捕獲日「11/7」、捕獲者(水川)のイニシャル「MIZ」、通し番号「3」。

 

それでは、今回のマーキング会の様子をお伝えします!

このマーキング会は2015年から毎年開催しており、今回で4回目です。

2003年から15年間にわたって屋久島でアサギマダラのマーキング調査を続けていらっしゃる久保田義則さんを講師にお招きして、アサギマダラについてのレクチャーやマーキングの仕方を教わり、実際に野外でアサギマダラを捕獲してマーキングしました。

 

久保田氏によるレクチャーの様子

▲久保田氏によるレクチャー。アサギマダラの生態や外敵、マーキング方法などを、写真を交えてお話し頂きました。

普段なかなか見ることがないアサギマダラの卵や幼虫、蛹、外敵のスズメバチに食べられた幼虫や、幼虫に卵を産み付けるハエなどの写真を見た参加者からは、「ほ~!」「うゎ...」など驚きの声が聞かれました。

 

久保田氏が子どもたちにマーキングをして見せる様子

▲生きたアサギマダラにマーキングをしてみせる久保田氏と見入る子どもたち。

 

マーキング練習の様子

▲野外に出る前に1人1頭ずつマーキングを実践。

 

野外でアサギマダラを探す様子

▲いざ、本番!アサギマダラ探しに出発。

 

アサギマダラを捕獲してマーキングしている子ども

▲アサギマダラを捕獲してマーキングする子ども。

 

マーキングを終えて手のひらでアサギマダラを観察する子ども

▲うまく書けたかな?

 

マーキング専用台を持参した参加者

Myマーキング台を持参したベテラン参加者。

 

参加者全員最低1頭、多い人で4頭ほどマーキングすることが出来ました。

 

活動終盤、なんと参加者の男の子が和歌山で10/8にマーキングされたアサギマダラを再捕獲しました。

和歌山で精力的にマーキングをされている方の標識だったそうで、久保田氏はすぐに和歌山からの個体と分かったようです。

 

和歌山の標識個体に屋久島の標識を記入する子ども

▲和歌山でマーキングされたアサギマダラと捕獲した男の子。和歌山の標識が書かれた羽とは別の羽に新しい標識を書いて放しました。

 

この再捕獲&マーキングによって「約1か月で和歌山から屋久島まで移動した」という一つのデータになりました。

また、今回皆でマーキングした個体が屋久島以南で再捕獲されれば、またそれも貴重なデータになります。

こうした地道なマーキング調査が、まだまだ謎の多いアサギマダラの生態解明につながるのです。

今回はマーキング調査の醍醐味が味わえた会となりました。

 

久保田氏は、マーキング調査の楽しみは調査自体だけでなく、人とのつながりがあることだとおっしゃいます。

アサギマダラのマーキング調査は全国各地で行われており、メーリングリストなど情報交換の場があります。

アサギマダラを通して様々な人と関わることができるのも魅力の一つだそうです。

 

アサギマダラのマーキング調査は、マーキングして放すだけでは自分も他者も捕獲情報や移動情報を得ることが出来ません。

いつだれがどこで捕獲し、どんなマークを付けたかを他の調査者に知らせておかないと、再捕獲した人はマークだけ見ても詳細が全く分かりません。

マーキング情報や捕獲情報を他の調査者と共有することで初めて正確なデータとなります。

アサギマダラのマーキング調査についての情報交換はメーリングリストで行われています。

興味のある方は「アサギネット」や「アサギマダラの会」で検索してみてください。