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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

屋久島と台風 【屋久島地域】

2018年10月18日
屋久島国立公園 池田 裕二

 屋久島は九州南部に位置し、台風の進路上にあるといっても過言ではありません。そのため台風の通過は毎年必ずあるものとして身構えておく必要があります。

 台風による強い風雨により、倒木や土砂崩れ等の発生があるため、台風通過後には環境省が管理する登山道や設備等の点検を行っています。

 とくに標高の高い山間部では低地の市街地に比べてより強い風が吹き、倒木、落枝等が発生しやすいため、設備の損壊が心配です。山間部に設置したトイレや縄文杉の展望デッキなど重要な設備があり、台風通過後は安全第一でできるだけ早く状況を見に行き、通常使用に問題が無いか確認を行います。破損した場合は修理にかかる手続きを早急にしなければいけません。場合によっては現地で危険木等の除去作業も行います。

 今回は台風24号の影響が大きく、大きな倒木が多かった印象を受けました。島の低地で風速40m級の風が吹いたので、山の上は瞬間的にもっと強い風が吹いたのかと推察されます。

台風での倒木

台風後の倒木

 ▲登山道をふさぐ倒木。

 台風は被害をもたらすこともありますが、自然のサイクルの中でしっかりと役に立っていることもあります。例えば、森林内の下層植生が乏しい屋久島の山では、強風によって千切れた木の葉は地表で食べ物を探すヤクシカにとって良い食料になることがあります。ヤクシカは食べることのできる樹種の葉を探して歩き回っています。

 また、立ち枯れした木や弱った木が台風で倒されることにより、森の中に光が入り、次の世代の木々が育つことで森が更新されていきます。枯れて地面に落ちた木は森の中で虫や菌などによって分解され、再び森の養分となって循環します。

 河川に溜まった落ち葉や腐葉土は大雨の影響で海へと一気に流されます。これらもいずれ分解され、海にすむ生き物たちの栄養源となるのです。

 台風は人の生活にとって脅威ですが、屋久島の自然は台風とともにあり、厳しい自然に耐えながらバランスを保っているのですね。