マングース
マングースの根絶について(令和6年9月3日)
外来生物法の「特定外来生物」に指定されているフイリマングースは、奄美マングースバスターズによる地道で丁寧なわなやカメラ点検、マングース探索犬とハンドラーによるモニタリングの結果、奄美大島からのマングース根絶を宣言しました。
【報道発表】奄美大島における特定外来生物フイリマングースの根絶の宣言について
1993年の有害鳥獣捕獲の開始から2018年の最後の捕獲までに32,647頭のマングースが、一連の事業の中で人間によって命を奪われてきました。加えてマングースが生息している間、そのエサ動物となった無数の命が日々、マングースによって奪われてきました。しかし考えてみてください、マングースは単に連れてこられたところで、なんとか生き延びるためにエサとなる生物を食べていただけです。これらの命は本来、人がマングースを連れてきさえしなければ、失わずに済んだ命であるということを、私たちは決して忘れてはいけません。私たちは生きている動植物を他の地域に運んでしまうようなことがないように、十分に気をつけなければいけません。
マングースの根絶によって在来種は回復を遂げ、本来の姿を取り戻しつつあります。将来、在来種も増えて問題が起きたら駆除すればいいということではありません。世界自然遺産に登録された島として、島に住む、島を訪れるひとりひとりが関心を持って、人と野生生物とがうまく共存していけるように向き合っていきたいものです。
以下、これまでのマングースやその防除についての取組みを紹介します。
マングースの侵入と被害
マングースは、もともと南アジアに広く生息する哺乳類ですが、1910年、ハブなどの駆除を目的としてガンジス川河口(現在のバングラデシュ)から沖縄島に導入されました。奄美大島には、1979年に沖縄島から運ばれた数十頭が放されたとされています。
しかし、当初の想定とは異なりマングースはハブの天敵とはならず、代わりにアマミノクロウサギやアマミイシカワガエルなど奄美大島に生息する多くの動物を捕食することになってしまいました。マングースは分布域を広げ、ピーク時には10,000頭まで増えたと推定されています。
フイリマングース(Herpestes auropunctatus)
奄美大島マングース防除事業
環境省は、2000年に奄美大島で本格的なマングース駆除に着手し、2005年からは「奄美大島からのマングースの完全排除」を目標に、外来生物法に基づく防除事業を進めています。この事業の中心を担うのが「奄美マングースバスターズ」です。
山中に計画的に設置された30,000個を超えるマングース捕獲わなの点検、自動撮影カメラによるマングース生息情報の収集、マングース探索犬によるきめ細かな探索、新しいわなの開発など、組織的な防除を進めています。
奄美マングースバスターズ
2005年のマングース防除事業の開始と同時に結成された、マングース捕獲のための専門チームです。結成時12名だったメンバーは、ピーク時の40余名を経て、現在では約35名となっています。
時に豪雨にうたれ、ハブと遭遇しつつも、奄美大島の自然をよみがえらせる熱意を持ち日々森に入っていくプロ集団です。
マングースを目撃したら、奄美野生生物保護センター(TEL:0997-55-8620)にご一報ください。
奄美マングースバスターズ(令和4年1月7日撮影)
マングース探索犬
マングース探索犬は、ハンドラーと呼ばれる訓練士(奄美マングースバスターズのメンバー)とともに森に入り、マングースの臭いや糞を探索します。奄美大島ではマングースを探して穴などに追い込む生体探索犬と、マングースの糞を探してマングースがいるかどうかを調べる糞探索犬がいます。探索犬は、マングースが少なくなった中での効果的な捕獲や、マングースの根絶に向けてマングースがいないことを確かめるために大きく貢献してきました。現在はマングースが確認できない状況がつづいていますが、マングース根絶の可能性を評価するためのモニタリング手法のひとつとして、重要な役割を担っています。
探索犬とハンドラーによるマングース探索
マングース防除事業の成果
マングース防除事業による、組織的かつ日々の根気強い取組が実を結び、平成30(2018)年度の1頭を最後に、その後はマングースが捕獲されていません。
令和2年度奄美大島におけるマングース防除事業の実施結果及び令和3年度計画について
マングースの捕獲状況
マングースの捕獲数、マングースの生息密度の指標となるCPUE(1000わな日あたりの捕獲数)は年々減少して、令和元(2019)年度には捕獲数0頭(CPUEも0)になりました。現在のところ、捕獲数0の状態が継続しています。
マングース捕獲範囲・地点の経年変化
在来種の回復
マングース防除事業の成果により、アマミノクロウサギやアマミトゲネズミ、カエル類など在来種の回復が確認されるようになりました。
アマミトゲネズミ
個体数の増加、分布域の拡大が確認されています。
アマミトゲネズミ(常田守氏 撮影)
カエル類
アマミイシカワガエル、オットンガエル、アマミハナサキガエルといった固有のカエル類も、研究者の調査や奄美マングースバスターズのモニタリング等によって分布域の拡大などが確認されています。
マングースの完全排除に向けて
奄美大島のマングース防除事業では、2005年からの防除実施計画、2013年からの第2期防除実施計画に基づいて。今後はこの計画に基づき、「2022年度までの奄美大島からのマングースの根絶」を目標に、奄美マングースバスターズを中心とした組織的かつ計画的な防除を進めてきました。この結果、2018年4月に最後の1頭の捕獲があって以降、約4年にわたり捕獲のない状態が続いていることから、根絶の可能性が高くなっています。このため、第2期防除実施計画を2020年度までで終了として、2021年度から新たな5ヶ年計画として「根絶確認及び防除完了に向けた奄美大島におけるフイリマングース防除実施計画」へ移行しました。
奄美大島ほど大きな島でのマングースの根絶が達成されれば、世界的にも例がなく、奄美大島のマングース防除事業は、先進的なチャレンジとして国際的にも注目されています。どのような情報を元に根絶を判断するのかには、慎重な評価が必要です。奄美大島の森が、本来の生きものたちで賑わうときを目指して奄美マングースバスターズや関係者とともに一歩一歩、着実に取組を進めていきます。
○パンフレット「 世界でたったひとつの奄美を守る 」
根絶確認と防除完了に向けたマングース防除実施計画
目標:マングースの根絶を慎重に確認するために、わな等によるモニタリングを継続しつつ科学的に根絶評価をして、2025年度末までに奄美大島からのマングースの根絶を確認することを目標とします。 また、すべての防除資材を撤去して、マングースの再侵入の防止体制の構築に取り組み、マングースによる在来生態系への影響が抑えられている「防除完了」状態を根絶確認後も維持することを目標とします。
モニタリングの体制:わなによる捕獲や探索犬、自動撮影カメラ等のモニタリングは、奄美マングースバスターズを中心とした組織的な体制を確保した上で、計画的に行う。 また、マングース探索犬を育成しつつ、ハンドラーとともに育成を図りつつ探索作業を行います
○計画の詳細はこちら。