奄美群島の昆虫
奄美群島は、琉球列島の中でも早い時代に周囲から孤立し、その後さらに沖縄諸島とも分離して、独自の歴史をたどりました。そして現在、奄美には沖縄のどの山よりも高い湯湾岳(奄美大島)や井之川岳(徳之島)をはじめとする山々があり、沖縄本島北部のやんばるの森や西表島に勝るとも劣らない豊かな森が残っています。
そうした島の成り立ちや環境を反映して、沖縄とよく似た昆虫相を持ちつつも、奄美独特の個性的な昆虫たちも多く棲んでいます。さらに、夏の台風や黒潮の影響で、内地では見られない熱帯性の虫たちも生息しています。しかし昆虫相の調査は不十分で、今でも新種や奄美初記録の種の発見が相次いでいます。
※昆虫相:ある地域に棲む昆虫の種類構成
クワガタムシの仲間
アマミマルバネクワガタ(Neolucanus protogenetivus protogenetivus) クワガタムシ科 奄美大島、加計呂麻島、徳之島の固有で、その亜種ウケジママルバネクワガタ(Neolucanus protogenetivus hamaii)は請島の固有亜種。洞のあるような大きな木をすみかとし、8月下旬頃から成虫が発生します。森林伐採や過度な採集によって生息数が減少したと考えられており、現在は以下の法令で捕獲等が厳しく規制されています。 【種指定等】:アマミマルバネクワガタ 【種指定等】:ウケジママルバネクワガタ |
アマミマルバネクワガタ ウケジママルバネクワガタ |
アマミシカクワガタ(Rhaetulus recticornis) クワガタムシ科 奄美大島から徳之島にかけて見られる固有種です。シカクワガタ属のクワガタムシは東南アジアの大陸部分を中心に分布し、日本には本種のみが分布します。大型のオス個体のアゴが鹿の角の様に湾曲することからシカクワガタと呼ばれています。 【種指定等】 |
アマミシカクワガタ |
アマミミヤマクワガタ(Lucanus ferriei) クワガタムシ科 奄美大島の固有種で8月に現れます。本州などで見られるミヤマクワガタと比べてかなり小さく、大型のオスでも50mm未満です。高い木の上などでオスの姿を目にすることがありますが、メスの姿はなかなか見ることが出来ません。 【種指定等】 |
アマミミヤマクワガタ |
スジブトヒラタクワガタ(Dorcus metacostatus) クワガタムシ科 奄美大島から徳之島の固有種です。背中にはっきりとした太いスジを持つのが最大の特徴で、奄美のクワガタムシの中では、比較的よく目にすることが出来る種類です。 |
スジブトヒラタクワガタ |
チョウの仲間
オキナワカラスアゲハ (Papilio okinawensis) アゲハチョウ科 中琉球の固有種で、奄美亜種は奄美大島から徳之島にかけて分布しています。奄美大島では3月から10月頃まで、年に4回発生するようです。発生の時期には花に来る姿をどこでも見かけ、雄はしばしば水溜り近くで吸水しています。幼虫はカラスザンショウやハマセンダンの葉を食べます。琉球列島にはほかに、大隅諸島にミヤマカラスアゲハ、カラスアゲハ(トカラ亜種)、ヤエヤマカラスアゲハ(八重山の固有種)が生息しています。 |
オキナワカラスアゲハ・メス オキナワカラスアゲハ・オス |
リュウキュウアサギマダラ (Ideopsis similis) タテハチョウ科 東南アジアを中心に生息し、日本では奄美大島以南で見られます。羽の模様が美しく、ひらひらと飛ぶことから人気の高い種類です。冬になると沢山の個体が集まり、木の枝などに身を寄せ合うようにしている姿を見ることが出来ます。 |
リュウキュウアサギマダラ |
コガネムシの仲間
マルダイコクコガネ(Copris brachypterus) コガネムシ科 奄美大島と徳之島にのみ生息します。糞虫と呼ばれる仲間でアマミノクロウサギやリュウキュウイノシシなどの哺乳類の糞をエサとしています。羽を持つものの退化しているため飛ぶことは出来ません。近年の研究により、徳之島のものは別亜種とされています。 【種指定等】 |
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ケブカコフキコガネ(Tricholontha papagena) コガネムシ科 ケブカコフキコガネは一属一種の中琉球固有種。成虫が冬に発生するという特異な生態をしています。奄美からは今のところ大島のほか喜界島と徳之島から知られ、奄美群島のものは奄美亜種とされます。奄美群島では2月頃の暖かい夜に活動し、雄は活発に飛翔して光に集ります。成虫は食物を摂らないようです。 |
ケブカコフキコガネ |
オキナワシロスジコガネ(Polyphylla schoenfeldti) コガネムシ科 オキナワシロスジコガネは他の多くのコガネムシ同様、梅雨の前後に現われ、雄も雌も光に集ります。中琉球の固有種です。 |
オキナワシロスジコガネ |
その他の昆虫
フェリエベニボシカミキリ (Rosalia ferriei) カミキリムシ科 奄美大島の固有種で、成虫は梅雨の半ばころから姿を現し1ヶ月ほど見かけます。雄は昼過ぎにスダジイなどの太い立ち枯れ木に飛来し、樹幹にとまって雌がやってくるのを待っています。雌を見つけるとすぐにその背に乗って、他の雄からガードします。雄同士が出会うと互いに咬みあうケンカになりますが、たいてい体の小さいほうが逃げ出します。八重山諸島から台湾には近縁種のベニボシカミキリが生息しています。 ・種指定等: |
フェリエベニボシカミキリ |