奄美群島国立公園
奄美群島には国内では最大規模の亜熱帯照葉樹林、世界でここでしか見られない固有な動植物たち、世界有数の速度で今も隆起するサンゴ礁段丘、琉球石灰岩の雄大な断崖やカルスト地形、世界的北限に位置するサンゴ礁、マングローブや干潟など、多様な生態系が一体となった自然景観がみられます。
またこれらの自然環境と人との関わりを示す有形無形の文化景観が数多く残されています。
奄美群島は地球の生物多様性の保全に寄与し、地域の暮らしや営みと自然環境保全のバランス維持を目指すために、平成29年3月7日に34番目の国立公園に指定されました。
奄美群島国立公園自然環境アトラス2023
奄美群島の自然や文化の魅力をより多くの方に知っていただくために、『奄美群島国立公園自然環境アトラス』を作成しました。
アトラスとは、複数の地図を一定の方針で編集した地図集のことです。
この『奄美群島国立公園自然環境アトラス』では、奄美群島の生きものや人の暮らしの基盤となる自然環境の情報、土地利用や保護地域制度などの人の営みの情報、人と自然の関わりによる「環境文化」の情報などについて、その空間的な広がりを地図に整理しています。
是非、奄美群島の豊かな自然や文化を地図から眺めていただき、その面白さを再発見いただくとともに、奄美群島の自然や文化に関する教育・学習や普及啓発等にご活用頂ければ幸いです。
※本アトラスの冊子は、奄美野生生物保護センター、奄美大島世界遺産センターで閲覧いただけます。また、奄美群島内の小中高校、図書館・図書室、奄美博物館、AiAi広場、三太郎の里、りゅうがく館などにもお配りしています。
国立公園って、なんだろう?
日本を代表する優れた風景地を「国立公園」として国(環境大臣)が指定するものです。
奄美群島国立公園の区域図(クリックするとPDFファイルが表示されます)
詳細な地図はこちらからご覧頂けます。
国立公園では、環境省をはじめ地域の関係機関や団体等が連携・協力して、自然環境の保全と利用を推進するための様々な取り組みが計画・実施されます。
国立公園には原生的な自然だけでなく、森林や農地、集落などの多様な地域を含んでいます。 そのために、保護のレベルを段階的に設定し、公園内で行うことができる行為を規制する計画を定めています。 規制される行為の種類や規模は公園の地種区分に応じて定められ、特別保護地区、第1種~第3種特別地域、海域公園地区、普通地域の6つの地種区分を設けています。これにより自然環境や利用状況を考慮して、自然の保護と人の活動が両立できる仕組みになっています。 国立公園内で、これらの行為を行う際は事前に下の事務所までご相談ください。国立公園制度や各種手続きについてもこちらまでお問い合わせください。 |
【奄美大島、喜界島、与論島】
●鹿児島県大島支庁総務企画課
電話0997-57-7215
●奄美群島国立公園管理事務所(住用事務室)
電話0997-69-2280
【徳之島、沖永良部島】
●鹿児島県大島支庁総務企画課
電話0997-57-7215
●徳之島管理官事務所
電話0997-85-2919
国立公園の詳細な区域確認は、上記事務所または各市町村役場にて、確認することができます。
国立公園を訪れる観光客や地域住民の皆さんが適正に自然を体験して楽しむために必要な施設を計画し、それぞれの計画に基づき公園事業として国や地方自治体、民間事業者が施設の設置・整備を行います。 また、国立公園で行われる様々な自然体験活動(例えば、登山やスノーケリング、野鳥観察など)において、マナーの普及啓発や、適正な利用のためのルールを定めるなどの普及啓発や、自然環境へ負荷を与えない観光としてのエコツーリズムの推進に努めます。 |
国立公園の新しい考え方
奄美群島国立公園には従来にはない生態系管理型と環境文化型の二つの新しい考え方に基づいて、保護管理されます。
多くの固有で希少な動植物が醸し出す森林の景観だけでなく、生態系全体を保全するために、科学的データに基づいた順応的保護管理を目指していきます。 |
奄美の森や川、浜などの自然環境は、人々の暮らし、営みなど、文化に深く関わってきました。 古道、サンゴ石垣、稲作とそれにまつわる風習のある風景、リーフで魚介類を捕る風習の風景など、人と自然の関わりを国立公園の魅力のひとつとして、守り継いでいく一助となるよう努めます。 |
世界自然遺産の登録
人類共通のかけがえのない財産として、将来の世代に引き継いでいくべき宝物。
それが世界遺産です。
令和3年7月に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界自然遺産に登録されました。
世界遺産登録の条件のひとつとして、その自然の価値が長期的に維持されるように十分に「保護管理」されていることが挙げられており、国立公園などの法制度がそのための主要な手段となっています。
奄美群島国立公園の島々
特徴の異なる亜熱帯の島々
地史の違いから次の2種類に分けられ、動植物や景観の様子が大きくことなります。
山地のある高島(奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島)
新生代第三紀より古い地層から構成され、山地が多く起伏が大きい。山地が海岸線まで迫り、周囲は切り立った崖をなして平地が少ない。
低く平らな低島(喜界島、沖永良部島、与論島)
第四紀に形成された琉球石灰岩からなり、山地が少なく低平な地形。段丘地形がよく発達しており、数段の階段状をした段丘を見ることができる。
奄美大島
年平均降水量が3,000ミリ近い国内有数の雨の多い島で、スダジイが優占する常緑広葉樹林は亜熱帯照葉樹林としては国内最大規模を誇ります。
特に島の中南部の奄美群島の最高峰である湯湾岳(694.4m)を中心に森林が多く、アマミノクロウサギ、オオトラツグミ、アマミエビネといった固有で希少な動植物が生育・生息しています。
海岸は地形の変化に富んだリアス海岸であり、太平洋に注ぐ住用川と役勝川の河口域には広大なマングローブ林が発達しています。
喜界島
サンゴ礁の形成と激しい地殻変動によって段丘地形が特に発達していて、百之台は海抜200m以上の隆起サンゴ礁の台地を形成しています。
阿伝集落一帯には、サンゴの石垣が残された集落と周辺の畑地や段丘にかけて、自然と島民の暮らしが織りなす風景がみられます。
徳之島
北部及び中南部の山地帯には固有で希少な動植物の生育生息している亜熱帯広葉樹林が、海岸には奄美群島では珍しい花崗岩が露出しているムシロ瀬、断崖地形の犬の門蓋及び犬田布岬など特異で雄大な景観がみられます。
希少な動植物の中にはトクノシマトゲネズミやオビトカゲモドキ、トクノシマカンアオイなど徳之島固有種も多くいます。
沖永良部島
大山の山腹には石灰岩が雨水などで溶食されてできた鍾乳洞やドリーネなどのカルスト地形が発達しています。
海岸には琉球石灰岩の海食崖と砂浜、植生、礁湖の一体的な景観が見られます。
特にフーチャの隆起サンゴ海岸で見られる潮の吹き上げは特異な自然現象です。
与論島
島の沖合約1kmに及び広大な礁湖とサンゴ礁特有の色彩豊かで多様な魚類が生育している海中の景観が最大の特徴です。
特にサンゴの死骸である白砂が堆積してできた百合ヶ浜は傑出した美しさです。