西海国立公園 佐世保
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2019年06月25日安満岳・鯛ノ鼻ガイドウォーク 【平戸・九十九島地域】
西海国立公園 佐世保 岡山桂
こんにちは!
佐世保自然保護官事務所の岡山です。
5月25日(土)、九十九島ビジターセンターのイベントスタッフとして「安満岳・鯛ノ鼻ガイドウォーク」に参加しました。このイベントは、平戸地域の主要な公園区域である安満岳から鯛ノ鼻までを歩き、その自然や文化とのふれあいを目的とするものです。
左:安満岳山頂まで続く石の参道 / 右:西禅寺庭園跡
平戸島最高峰の安満岳(536m)は山の上半部に広がるアカガシ主体の原生林と、山頂周辺の輝石安山岩から成る残丘(メサ地形)が特徴です。山頂へ続く石の参道を横に下っていくと楊柳山西禅寺跡があり、明治時代の廃仏毀釈で廃寺となりましたが、現在も残っている庭園に往時の隆盛が偲ばれます。山頂付近にある白山比賣(はくさんひめ)神社の裏手には潜伏キリシタンが祈りを捧げたとされる「安満岳の奥の院様」と呼ばれる石のほこらと薩摩塔があります。
このように、安満岳は仏教、神道、キリスト教の3つの信仰の地として神聖な山とされ、昨年7月に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産の一つ「平戸の聖地と集落(春日集落と安満岳)」として、世界文化遺産に登録されました。
「安満岳の奥の院様」と呼ばれる石のほこらと薩摩塔
安満岳山頂から望む春日集落の棚田
山頂の岩場からは春日集落の棚田が見え、講師の解説と共に眺望を楽しみました。
左:コガクウツギとイシガケチョウ / 右:金色に光るシロダモ
安満岳から鯛ノ鼻へ続く道端にはコガクウツギがたくさん咲いていました。コガクウツギはアジサイに近い種で、めしべとおしべのある生殖用の花とは別に「装飾花」と呼ばれる虫を呼ぶためだけの飾りの花(正確には花ではなく「がく」)を持っています。花を観察しているとタイミング良く翅の模様が特徴的なイシガケチョウが止まり、思わずシャッターを切りました。
他にも、葉の裏が金色に光るシロダモの新芽や、フワフワして触り心地が良いヤブムラサキなど、道路沿いの草木を五感を使って楽しみました。
鯛ノ鼻の展望所は昨年秋に改修工事が完了し、以前より前へ突き出た形となったため、平戸島北に位置する生月島全体が見えるようになりました。数日前に降った雨が幸いしたのか、この日はなんと生月島右後方に対馬まで見えていました!後日、みんなにこのことを話してもなかなか信じてもらえなかった程、平戸島から120km離れた対馬が見えるのは珍しいことだったようです。写真では小さすぎて写っていないのが残念です。
左:鯛ノ鼻から望む生月島 / 右:サルノコシカケの幼菌が付いたアカガシ
古くから信仰の山として親しまれ、国有林や国立公園区域として守られてきたアカガシ主体の原生林を持つ安満岳ですが、アカガシの中にはサルノコシカケというキノコの幼菌が付いたものもありました。特別な原因があるのかはわかりませんが、これは木が弱っている証拠であり、こういった木が増えていけば森の風景も少しずつ変わっていくのかもしれません。
2019年02月07日江楯池野鳥観察会 【平戸・九十九島地域】
西海国立公園 岡山桂
こんにちは!
佐世保自然保護官事務所の岡山です。
まだまだ寒い日は続きますが、スノースポーツが趣味の私にとっては雪の積もらない佐世保での冬に少しばかり物足りなさを感じます。
この時期の佐世保市内の江楯池(えたていけ)には留鳥を含む多くの野鳥が集まることから、1月19日、九十九島ビジターセンターによる野鳥観察会が開催され、スタッフとして参加しました。
江楯池
写真の白くなった木々を見て、「佐世保は雪が積もらないのではなかったのか」とツッコミを入れたくなった方もいるかもしれませんが、実はこれ、すべて鳥のフンなのです・・・!
木々を真っ白に染めたのはほとんどがカワウによる犯行。彼らは1年を通して観察することができ、夕方になると白く染められた木が黒く見えるほど、何百ものカワウが集まるそうです。
左:水面近くを飛ぶカワウ / 右:夕方に集まり始めたカワウの群
秋から冬ごろ見られる鳥のひとつに当地長崎県の鳥に指定されているオシドリがいます。色彩の地味なメスに対し、オスは特徴的な派手な色と「イチョウ羽」と呼ばれるイチョウの葉のような形の羽がよく目立ちます。オスのこのような羽の色は求愛や繁殖の時期にのみ見られる特徴です。夏には「エクリプス」や「エクリプス羽」と呼ばれるメスとよく似た地味な羽になり、オシドリ以外のカモ類でも、同様の季節による変化を見ることができます。
左:メスとその前後を泳ぐオスのオシドリ / 右:オス2羽とメス1羽のマガモ
今回の観察会では他にも、マガモ、カルガモ、トモエガモ、ハシビロガモといった淡水ガモを始め、ホシハジロやカイツブリ、オオバン、アオサギ、ハイタカ、さらに鳴き声の聞こえたシロハラなどや、観察舎までの林道で見つけたものを含めると、約1時間の間に20種近くの野鳥を確認することができました。
左:野鳥観察舎 / 右:野鳥観察の様子
今回は冬の江楯池での野鳥観察を紹介しましたが、秋には佐世保市南東に位置する烏帽子岳山頂からのアカハラダカやハチクマの渡り観察も人気です。
フィールドでの野鳥観察は静かに鳥たちを見守ることがマナーです。そうすることで鳥たちの鳴き声も聞こえ、また違った楽しみ方もできます。
夕方の江楯池
2018年08月20日小値賀島周辺離島における生きもの・地形調査 【平戸・九十九島地域】
西海国立公園 岡山桂
こんにちは!
佐世保自然保護官事務所の岡山です。
7/14-15、五島列島小値賀島の周辺に浮かぶ小島に、平戸・九十九島地区パークボランティアのメンバーと共に生きものと地形の調査に行きました。
平戸市南端の宮ノ浦漁港からチャーター船で出発し、途中に見える野崎島には、先日世界遺産に登録された『長崎と天草の潜伏キリシタン関連遺産』の構成資産「野崎島の集落跡」があります。この島では現在、人が住まなくなったことでシカが増え、シカの食害による裸地化が進み、島の斜面崩壊が起こっています。人と自然の共存が続いてきた土地では、両者のバランスが崩れてしまうと、このように自然にとっての悪影響を及ぼすことがあります。
野崎島南部 平島全景
出発しておよそ2時間で到着した平島の北部は火山の隆起によってできたもので、主に玄武岩から成り、南部は火山灰や火山礫などの堆積によってできています。また、島の北側には玄武岩で囲まれて外海と切り離され浅い内海となったラグーンがあります。
玄武岩から成る平島北部 火山性堆積物から成る平島南部
玄武岩で囲まれたラグーン
生きものの調査では、海岸の開発で個体数減少のおそれのあるスナビキソウや鮮やかな青緑色が美しいアヤニシキなど、海岸に生育する多くの植物を確認できました。
スナビキソウ アヤニシキ
当初は平島でキャンプする予定でしたが、熱中症のおそれがあり、有人島の大島へチャーター船で渡り、区長のご厚意で公民館に泊めてもらうことができました。
2日目は小値賀島の北に浮かぶ納島へと渡ると、アコウの巨木が目に入りました。アコウは絞め殺しの木とも呼ばれ、鳥などによって運ばれたアコウの種子が他の木の上に落ちると、元の木を絞め殺すように絡まりながら成長するためそう呼ばれています。
納島はラッカセイの生産が有名ということなので、ラッカセイ畑を見学しました。道中にはトキワススキも見られました。「ススキといえば秋じゃないの?」と思われるかもしれませんが、このトキワススキは夏に穂を出すのが特徴です。こうして納島での人々の生活の様子や生きものの調査を終えました。
アコウの巨木 トキワススキ
今回、平島や納島での調査を終え、島の特徴的な地形が作り出す美しい風景と、それが育む多様な生きものの姿を観察することができました。
子どもたちの夏休みもあと少しですが、まだまだ暑い日は続きます。水分はこまめに摂り、しっかりと熱中症対策をして、最高にアツい夏を楽しく過ごしましょう!
2018年07月05日高島の宝物を発見しよう! 【平戸・九十九島地域】
西海国立公園 佐世保 岡山桂
はじめまして!
今年5月から佐世保自然保護官事務所のアクティブレンジャーとして採用された岡山です。これから西海国立公園の平戸・九十九島地区での活動をたくさん発信していきたいと思います。
6月9日(土)、高島という島で開催された自然観察会にスタッフとして参加しました。九十九島の離島には他のイベント等で訪れたこともありましたが、有人島へ行くのは初めてで、新たな発見ができると楽しみにしていました。
高島は人口200人、島の南部に集落があり、北部は自然がそのまま残されている島です。今回のイベントは島の南端に位置する番岳に登り、自然や遺跡を見学した後、集落を散策するという行程です。
展望所から見る高島 番岳と海沿いの集落
208もの島々で構成される九十九島の中で、高島にのみ生育する植物に出会うことができました。ミヤコジマツヅラフジは、海岸に近い場所に生育し、ハート型の葉の裏にフワフワした毛がある南方系のつる性樹木です。
集落周辺で見つけたデンジソウは、葉の形がクローバーにも似ていますが、漢字の田の字に似ていることから名付けられたシダ類の水草です。なぜ同じ地域なのに高島でのみ見られるのかよくわかりませんが、島の植生の豊かさを感じました。
ミヤコジマツヅラフジ デンジソウ
番岳山頂には戦時中、対空砲台が設置され、現在は探照灯跡や聴音照射指揮所跡など戦争遺産が残されています。聴音照射指揮所から敵の戦闘機の高度や距離、速度を測定していたそうです。
天候に恵まれ、山頂の展望台からは、高島漁港と後方に九十九島の島々を望むことができました。
聴音照射指揮所の内部 番岳山頂の展望台からの眺望
島の志賀神社にはクジラの石像があります。偶然出会った島の方のお話によると、大正時代、島に大きなクジラが漂着し、高値で売れたため島民が潤ったことを記念して造られたそうです。
今回の自然観察会では、高島の豊かな自然と歴史、そして温かい島民の心に触れることができました。高島からは、世界遺産「長崎と天草の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産がある黒島へフェリーの所要25分で行けます。皆さんも九十九島の島めぐりを楽しんでみませんか。
2017年02月01日「最西端・化石ウォーク」活動支援
西海国立公園 佐世保 佐伯信吾
「最西端・化石ウォーク」活動支援
(1)日 時:平成28年11月13日(日)
(2)場 所:佐世保市小佐々町 神崎鼻
(3)講 師:天草御所浦白亜紀資料館学芸員 鵜飼 宏明 氏
天草御所浦白亜紀資料館の学芸員鵜飼氏に神崎鼻の海岸を案内していただきました。鵜飼氏はこの付近一帯の野島層群研究の第一人者。前日の九十九島サロンでは幻の湖という題でここの化石の話をしてもらいました。
一般の方の参加の中に多くのパークボランティアも加わり、約2000万年前の出来事や生き物、岩石、地層について学習しました。
この一帯を含めて佐賀県から下五島まで広がる大きな湖があった話で参加者をぐっと引きつけ、昔のことを知るために今の生き物と化石を比較すること、野島層群より古い層は中国にはないこと、周辺の大陸の例として中国の生き物と比較することも重要であること等の解説の中で、特に興味をひかれたお話は地層の見方についてでした。例えば積み重ねた本を横に徐々に倒していくと地層の断面が露出します。
ここ神崎鼻の海岸がいい例であるとのことです。これを下(古い方)から上(新しい)の方向に向かって調査するのが基本であることを現場を見ながら解説していただきました。
化石探しになると次々に貝類を探しだしていました。ガマノセガイ、サギの足跡、湿地に生息するワニの足跡、コサザヒメタニシ等を観察できました。
また、噴火により火山灰が空中に散布され、これに雨があたりころころした丸い固形物となった火山豆石も確認しました。
講師が手持ちの化石を説明
低学年の子ども達が参加していましたが、この子達が地元を案内できる鵜飼さんのような学者に一人でもなってもらえればと願うばかりです。
2017年01月23日全国・自然歩道歩こう月間「佐志岳トレッキング」活動支援
西海国立公園 佐世保 佐伯信吾
全国・自然歩道歩こう月間「佐志岳トレッキング」活動支援
(1)日時:平成28年10月30日(日)
(2)場 所:長崎県平戸市津吉町 佐志岳(347m)
平戸大橋から車で1時間弱の場所に佐志岳はあります。
山頂からは360度の展望がきくため、低い山ですが満足感のある山です。平戸特有の植物を観賞するため市外、県外からの登山客があります。
この日の朝は、放射冷却で冷え込んだもののトレッキングにはふさわしい日和りとなりました。集合場所は、麓の南部公民館駐車場。ここから登山口の駐車スペースが狭いのでスタッフの車に便乗して出発。登山口は民家の脇にあり、軽自動車がやっと通れるぐらいの道幅です。
今回の講師は、パークボランティア(PV)の副会長邑上氏にお願いしました。
山頂までの登山道が草に埋もれて危険と云うことで、この日のために前もって邑上氏達が除草をされていました。(安全確保ありがとうございました。)案内も、面白く、楽しくそして飽きない解説です。
低い山ですが、登山道はかなりの勾配があるので休憩をとりながらのゆっくりした歩きです。佐志岳の山頂が見える場所まで来るとサインを見ながら佐志岳の特徴を説明後、中腹あたりの岩場まで歩くと休憩も含めて参加者を座らせ岩場にあるチョウセンノギク、ダンギク、イトラッキョウ、イブキジャコウソウ、サワヒヨドリの説明。ジャコウソウの説明では、五感で覚えると云うことでこの植物の匂いも嗅いだり触ったりしながら説明でした。
山頂に着いた頃には予定通りのお昼時。邑上氏昼食の定番のアゴ(トビウオ)の干し物や手作りの一品をお裾分けして頂き美味しい昼ご飯になりました。
昼食後、霞も殆ど無く島々もはっきり見える中、山や島の名前、特徴について説明していただいた後無事下山しました。案内ありがとうございました。
2017年01月23日「上段の野トレッキング」活動支援
西海国立公園 佐世保 佐伯信吾
「上段の野トレッキング」活動支援
(1)日時:平成28年11月6日(日)
(2)場 所:平戸市小田町 上段の野(190m)
平戸大橋から車で1時間弱の場所。
上段の野の展望所。
展望所から志々伎湾及び佐世保方面を一望できます。
西側から北側にかけての斜面は、メカルガヤ、ススキ、チガヤが主の草原。東、南側は林
となっています。講師は、地元で漁業に従事しておられるパークボランティアの稲下氏に案内していただきました。
スタート、稲下氏は集合場所の説明を始めました。ここは、埋め立ててできた場所で昔は、
川の河口であったため、びっくりするような大きなハマグリやカガミガイ(ハマグリ程の大きさで白く丸く平たい貝)が多く獲れていたそうな。今では、ハマグリがよく食されているが、地元の人はカガミガイの方が味がよかったのでハマグリより食されていたこと、川では天然ウナギを捕って食べていたなど今聞くと羨ましい限りの話ばかり。内容は植物がメインでしたが、町の歴史や上段の野の草原が維持されて来た経緯等も話していただきました。やっぱり、地元のことは地元の人に説明してもらうことが一番だとあらためて思いました。
秋の味覚エビヅル、ムベ、ミカンを食したり秋ならではのトレッキングでした。稲下さん、ユーモアいっぱいの案内ありがとうございました。
2016年12月08日黒子島保全普及啓発活動関係者の研修活動支援
西海国立公園 佐世保 佐伯信吾
平成28年10月31日
参加者46名(パークボランティア及び関係者)
西海国立公園平戸平戸・九十九島パークボランティアと
黒子島は、平戸港の入り口にある楕円形の無人島です。
この日、数少ない西海国立公園特別保護地区そして国指定特別天然記念物になっている黒子島に上陸しました。昔、この島は平戸藩主松浦家の所有で樹木の伐採が禁止されていたため暖地性樹木が鬱蒼とした状態をなしており、1951年に国の天然記念物に指定されました。1969年に長崎県で開催された国民体育大会にご臨席なされた昭和天皇が、わざわざこの島に立ち寄りになられた程の島です。
小雨の中実施されました。
平戸港から瀬渡船で約10分弱。
そこには桟橋もなくこの日のために簡易の浮き桟橋を準備しました。浮き桟橋と島とつなげる工事用足場が不安定だったので落水等の事故を心配しましたが無事上陸。
スタートは、まず平戸港正面の西海岸にある黒子島神社に参拝し、鳥居をくぐり裏山へ。
鬱蒼とした林内の足下はツタがはい、これが足に絡まり何度か倒れそうになりました。林内では、フウトウカズラ、ビロウ、アオキ、タブ、スダジイが目に付きましたが特に目立った樹木はアコウの大木。おそらく樹齢数百年はたっているだろうと思われる見事なものでした。林内に塹壕と井戸のような跡がありました。
西から林を横切り急な斜面を降りて北海岸へ出たのですが、そこにはどうやってこんな大きな石を積んだのだろうと思わせる石積みの砲台跡がありました。説明によると2台の砲台があったが使用されたかどうかは分からないとのことでした。おそらく平戸瀬戸に入ってくる外国船を攻撃するためのものだったのでしょう。
帰りは東海岸を右周りに黒子島神社に戻ってきました。
2016年12月08日平戸市中津良小学校 若宮浦干潟の観察会
西海国立公園 佐世保 佐伯信吾
日 時 平成28年10月23日(木)
場 所 平戸市中津良 若宮浦干潟
対 象 平戸市中津良小学校3、4、5、6年生
地元中津良(なかつら)小学校の総合的な学習の時間の活動協力依頼があり学校近くにある若宮浦干潟で生き物観察会を実施しました。
これは、地元在住のパークボランティアが地元の自然を小学生に知ってもらおうと学校に働きかけ、学校も是非にということで実施に至ったもので全校児童の25名で複式学級になっている小さな学校です。
干潟には敷佐川(しきさがわ)、中津良川の2つの川が流れ込み、干潟になっている(写真)
入り江は、細長く蛇行し以前は海苔養殖も行っていたそうですが今では跡形も残っていません。
中津良地区は、中津良川のゲンジボタル棲息地と知られ、時期には観察会も実施されるなどから地域ぐるみで自分達の自然を大事にしようというムードが漂っているところです。
今回の登場生き物は、ドロアワモチ(写真)、ケフサイソガニ(写真)、カブトガニの子ども(写真)、大きくて美味そうなノコギリガザミの一種(写真)そして児童達が見つけたアナジャコの一種。
中でも干潟をはっていたドロアワモチに児童達は特に興味を示し、不思議そうに手に取り観察しながら我々の説明に聞きいっていました。
カブトガニについては特別に剥製を持ってきて、雌雄の見分け方、この干潟のような産卵場所が年々減少しているため生息数も減少していること等を説明しました。
また、児童達は、底なし沼の様な干潟で遊び(写真)、長靴を干潟に取られた児童を助けに行った児童も足を取られる等面白い光景に笑ってしまいました。
おそらく、この干潟に入ったのは殆どが初めての児童達ばかりであったと思います。遊ぶことから自然環境保全が始まると考えます。これを第一歩として、若宮浦干潟でもっともっと遊んで欲しい。
終盤、平戸は歴史だけでなく稀少動植物の種類の多さでも特に貴重な島だから、地元の自然は地元の人が保全、保護する意識が必要なことを話して終わりにしましたが、この話に児童達が熱心に耳を傾けていたのが印象的でした。
こんにちは!
佐世保自然保護官事務所の岡山です。
長崎県北部の松浦市で平成29年7月にオキナワキノボリトカゲの生息が確認されました。オキナワキノボリトカゲは沖縄県と奄美諸島のみに生息する日本の固有種で、環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。物資の運搬時に紛れていたものやペットとして飼っていたものなど、人間の手が加わった何らかの原因によって松浦市へ入ったものがそのまま定着してしまっているようです。一般的によく知られる「外来種」という言葉は、人間によって国外から持ち込まれた生物のことを指しますが、松浦市でのオキナワキノボリトカゲのように人間によって国内の別の地域から持ち込まれた生物のことを「国内外来種」と呼びます。宮崎日南市や鹿児島県指宿市では、20年程前から定着が確認されているそうです。
国内外来種であるこのトカゲが在来種にどのような影響を及ぼすか、生息域はどこまで拡大しているのかなどを調査するため、長崎女子短期大学の松尾教授の指導のもと九十九島動植物園「森きらら」のスタッフを中心に平成29年度からヒアリング調査を行ってきました。昨年度からは私や長崎県と松浦市の職員なども加わり捕獲調査を開始しました。オキナワキノボリトカゲの研究をされている兵庫県立大学の太田教授の意見も交え、毎月2回の調査日を設けて季節の変化によるトカゲの行動の変化なども調べています。
左:松浦市で確認されたオスのオキナワキノボリトカゲ / 右:調査の様子
オキナワキノボリトカゲは全長200~300mm、頭胴長(頭の先から尾の根元までの長さ)60~85mm程度の、尾長が長い樹上性のトカゲで、食性は昆虫などの小動物です。少なくとも原産地では冬眠はしないようです。オスの成体は日中、木の枝上の見通しのよい場所から縄張りを見張っており、幼体やメスの成体は木の根元付近の低い場所にいるとのことです。また、オスの成体は鮮やかな黄緑色をしているため、地味な茶色の幼体やメスの成体と比べ簡単に見つけることができます。ただ、周囲の明るさに合わせて多少は体色の明暗を変えることができるので黄緑色と茶色の混じった成体も多く、現状、私たちでは雌雄の判別が難しいため、専門家に判別の基準を確認しているところです。
左:メスの幼体と思われる個体 / 右:雌雄の判別が難しい体色の個体
9月9日(月)には朝昼晩計3回調査を行いました。調査にあたっては、釣り竿の先に輪にしたテグスを付けて釣り上げたり、直接手で捕獲したりしました。昼の調査の後、松浦市役所の会議室で、捕獲したトカゲの胃内容物の吐き戻しや形態観察をしました。吐き戻しはトカゲの口へ生理食塩水などを注入し、注入したものと一緒に胃の中のものを吐き出させるという作業ですが、技術が必要な作業であるため、この日はうまくいきませんでした。形態観察では、個体ごとに異なる特徴と共通した特徴を肉眼で観察し、それらが性別や成長段階による差なのか、あるいはただの個体差なのかを考察しました。こちらも併せて専門家に確認を取ってみようと考えています。
左:胃内容物の吐き戻し作業 / 右:形態観察
夜の調査では懐中電灯で枝先を照らすと寝ているオキナワキノボリトカゲが5個体確認できました。一見、起きているように見えても光に反応せず、顔の前で私が手を動かしてもピクリとも動きませんでした。
枝先で寝ている個体(まぶたはあるはずなのに目を開いたまま寝ている!?)
11月12日(火)の調査では、寒くなってトカゲの活動が鈍くなってきたためか、これまで比較的容易に確認できたオスの成体は見つけることができませんでした。しかし、これまでほとんど確認できなかった幼体を4個体も捕獲することができました。頭胴長30mm程度の生まれて間もないような個体だったため、越冬のためにエサ探しを粘っていたのかもしれません。
先の調査で幼体を確認できたことからも、確実にこの地域で定着しているということが分かります。現在は、胃から出てきた昆虫の残骸から何を食べているのか専門家に調べてもらっており、これからの季節は越冬方法なども調べていきたいと考えています。現状では爆発的に増える可能性はほぼないとされていますが、生態系への被害が顕著に現れてからでは手遅れになってしまうため、定期的な調査を今後とも続けていきたいと思います。