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アクティブ・レンジャー日記 [九州地区]

九州地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2018年1月11日

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2018年01月11日出水のツル羽数調査

出水 本多孝成

 出水自然保護官事務所のアクティブレンジャー、本多です。今回は、ツル羽数調査について紹介します。

 出水では市内にある鶴荘学園(旧荘中学校)と高尾野中学校の「ツルクラブ」の生徒が中心になり、二か所(荒崎・東干拓)の人工ねぐらから朝飛び立つツルの羽数調査をしています。もともとは、地元のツル保護監視員の方と荒崎地区の子供たちが同好会的に羽数調査を行っていたそうですが、1966年、旧荘中学校にツルクラブが正式に発足して以来、継続的に調査が行われるようになったそうです。調査はツルの飛来数が特に多い期間(11月から翌1月まで)に合計6回行われ、その中の最大記録数は越冬シーズンの公式羽数として公表・記録されます。およそ60年の長い歴史をもち、子供たちがインジケーター(数取器)を片手に調査を行う光景は、出水の冬の風物詩となっています。

 

▲高尾野中学校が担当する東干拓の羽数調査(左)と、鶴荘学園が担当する荒崎の羽数調査(右)

 出水には一万羽を超えるツルが飛来しますが、この膨大な数のツルたちをどのようにカウントしているのでしょうか。羽数調査の大まかな流れについて紹介します。

 羽数調査は、ツルの「日の出とともにねぐらから飛び立つ」という習性を利用して行います。出水のツルは、二か所(荒崎・東干拓)に整備された人工ねぐらにて集団で夜を過ごし、翌朝、日の出と同時にねぐらから飛び立ち、エサを求めて市内の各地に散らばって行きます。

 ツルクラブの生徒たちは、ツルが飛び立つ前(日の出前。5時半ごろ)から集合し、ねぐら付近へ移動・待機します。徐々に空が明るくなり、ツルが飛び立ち始めたら羽数調査を開始し、双眼鏡やインジケーターを使いながら「ねぐらから飛び立った数(A)」、「ねぐらに入った数(B)」、「ねぐらに残った数(C)」をカウントします。調査終了後、AからBを引き、Cを足し合わせて羽数を算出、結果発表して調査は終了となります。

▲ねぐらから飛び立つツルたち@荒崎(水が張ってあるところが人工ねぐらです)

 羽数調査はただツルを数えれば良いというわけでは無く、そこにはツルの理解や配慮ある行動が欠かせません。

 例えば、調査中はツルだけでなくカラスやカモ等、他の野鳥も飛び回ります。明け方の薄暗い中、ツルだけを正確にカウントするのは想像以上に難しく、他の野鳥との見分け方をきちんと知っておく必要があります。そのため子供たちは事前にツルの見分け方や生態を学んだり、また映像を用いた羽数調査の練習を行ったりして、本番に備えているそうです。

 また、ツルを驚かさない配慮も必要になります。ねぐらで休んでいるツルに光や音などの刺激を与えてしまうと、一斉に飛び立ってしまい、調査ができなくなってしまいます。そのため、調査中は目立たない黒のベンチコート(企業が毎年寄贈)を着用し、また私語も慎むようにしているそうです。調査結果が出水の公式記録になる...という責任もあり、現場は張り詰めた雰囲気に包まれます。

 最後に、今シーズンから新たに始まった東干拓の車両規制の取り組みを紹介します。

 荒崎の羽数調査はツル観察センター屋上より行っており、安全が確保されていますが、東干拓(高尾野中学校が担当)の調査は、信号の無い農道の脇で行っています。そのため、信号機のある国道を通らず、農道を通って近道をしようとする車両が、調査中の生徒たちの背後や、ねぐらの近くをハイビームで時速60kmほどのスピードで通り抜けることがたびたびありました。羽数調査中のこのような車両の通行によって、生徒の安全面の問題や、車のライトに驚いたツルが調査前にねぐらから飛び立ってしまい、調査不可になってしまう問題が起きていました。

▲車両通行止めポイントを数か所設置。出水自然保護官事務所も交通誘導のお手伝いのため参加しました。

 そこで、鹿児島県ツル保護会主動のもと、東干拓の車両通行規制が今シーズン三回目の調査(11/25実施)から行われるようになりました。調査中(5:30-8:00)は調査地点を含む農道の一部を通行止めにし、通行車両は迂回路を利用してもらうようにしました。すると、すべての車両が快く迂回してくださり、今シーズン三回目から六回目の調査まで、生徒たちの背後を通過する車両はゼロとなりました。今後、より安全に調査を進めて行くためにも、地元の方々の理解・協力はとても重要だと実感しました。

 今回紹介した羽数調査のように、出水ではツルに関する様々な取り組みが実施されています。出水ではどうしてもツルの飛来数やその増減ばかりに注目が集まりがちですが、数字の裏側でどのような活動が行われているのかを学んだり想像したりすると、また違った視点でツルの観察が楽しめるのではないでしょうか。

※今シーズンの調査結果はこちら

出水ナビ:http://www.izumi-navi.jp/news/detail/145

※羽数調査の過去の記録はこちら

クレインパークいずみ:http://www.city.kagoshima-izumi.lg.jp/page/page_80092.html

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