ノネコ問題とは
ノネコとは
ネコは約1万年前にリビアヤマネコから家畜化されたといわれています。穀物を狙うネズミなどを追い払うために飼い慣らされたといわれていますが、現在では愛玩動物として、多くの人に大事に飼育されています。奄美大島や徳之島でも、昔はネズミやネズミを狙ってやってくるハブ対策として放し飼いをしていたといいます。しかし、そのような放し飼いにした結果、山中で生活するネコがでてきたほか、ペットとして飼われていたネコが、山中に捨てられ野生化するケースもみられ、これらのネコ(ノネコ)が在来種を捕食する事例が発生しています。
図1.パトロール中に山の中で見かけたネコ(大和村)
イエネコによる在来種への影響は世界でも大きな問題になっており、現在は「世界の侵略的外来種ワースト100」の中に選ばれています。特に島嶼域での影響は大きく、絶滅してしまった鳥類なども少なくありません。
捕食シーン①奄美大島の山間部でネコに襲われたアマミノクロウサギ(動画はこちら)
捕食シーン②奄美大島の山間部でネコに襲われたケナガネズミ(動画はこちら)
奄美大島のノネコ問題
過去の研究で、奄美大島の山中から発見されたノネコの糞のうち、全体の約3/4が①ケナガネズミ、②アマミノクロウサギ、③アマミトゲネズミなどの希少種であることがわかりました(図2)。奄美大島にはノネコが600~1200頭いるといわれており(2015年の推定)、多くの在来種が捕食されていると考えられています(図3)。
図2.ノネコの糞分析:重量頻度(%) (%)Shionosaki et al. (2015)より作成 |
図3.山中でケナガネズミを運ぶノネコ |
また、これらは山の中だけで起こっているわけではありません。2021年3月には、集落の中でケナガネズミの死体が見つかり、死体の傷口からはネコのDNAが検出されました。このほかにもかみ傷がついた死体が集落内や集落のすぐ近くで発見されています。これらのことから、集落にいるネコ(ノラネコや外飼いネコ)も在来種にとって脅威であることがわかります。
ノネコ問題の解決の難しさ
ノネコ問題がなかなか解決しないのは、ネコの繁殖力と私たちのペットの飼い方にあります。
ネコは生後6ヶ月程度から妊娠が可能になり、1回の出産で1~6頭の仔を産むと言われています。さらに、栄養状況がよければ年に数回、毎年出産することも可能です。つまり繁殖制限(不妊化)をしなければどんどん数が増えていってしまうのです。
環境省は山の中で生活しているノネコの捕獲及び自動撮影カメラなどを使ったモニタリングをしていますが、山中でも繁殖している様子が年中見られています(図4)。
また、山中では首輪をしたネコも撮影されています(図5)。私たちにとって、ネコはペットとして、コンパニオンアニマルとして大切な存在ですが、きちんと管理できないと問題はいつまでも解決しません。ノネコ問題は私たち人間が引き起こした問題です。環境省は関係機関と連携し、この問題に取り組んで参ります。
図4.山の中にかけたカメラに映った子猫たち(大和村)
図5.山の中にかけたカメラに映った首輪をしたネコ(瀬戸内町)