奄美大島におけるノネコ管理計画
奄美大島の生態系保全を目的に環境省・鹿児島県・奄美大島5市町村が共同で「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」を2018年3月に策定し、連携して対策に取り組んでいます。
・奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画(PDF)
・奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画ロードマップ(PDF)(2023年度改訂)
ノネコ管理計画では、主に「森林域からのノネコの排除」と「ノネコの発生源対策」を行っています。
森林域からのノネコの排除
環境省では、希少種が多く生息する山間部からノネコを排除するために、奄美大島の森林域で捕獲を行っています(図1)。
2018年に策定したノネコ管理計画をもとに、検討会で議論を重ね作業エリアを拡大しながら効率的・効果的な捕獲を進めています(図2)。
図1.ノネコ捕獲用のかごわな | 図2.2022年度の捕獲作業エリア |
また、捕獲事業では自動撮影カメラによるノネコのモニタリングも行っています。この撮影結果をもとにノネコの柄や特徴から個体識別を行い、各エリアの個体数の概算を行うとともに、行動圏や移動距離の把握、繁殖の確認などを行ってます。
集落でノラネコとして捕獲され、TNR(捕獲して避妊去勢手術の後に現地放獣すること。Trap, Neuter, and Returnの略)された個体が、集落から遠く離れた山中で確認されることもあります(図3)。これまでの捕獲の結果、捕獲を始めてから2年ほどで低密度化が実現できることが分かってきました(図4)。
図3.TNRした個体が山間部でノネコとして捕獲された例
図4.2019年4月から捕獲作業を続けているエリアにおける山中の識別個体の推移
これらのノネコ捕獲事業によって、在来種がどのように回復していくかについても、自動撮影カメラの撮影結果やアマミノクロウサギの糞調査によってモニタリングを行っています(図5)。ノネコの捕獲が進み、発生源対策が進むことによって、在来種が回復していくことを管理計画の目標としています。
図5.在来種5種の撮影頻度の変化(事業開始時点から捕獲があった場所のみ)
捕獲したネコは管理計画に定めているように、譲渡認定者への照会をおこない、譲渡に努めたのち、一定期間引き取り手が見つからなかった個体は安楽死処置を施すことになっています。
・奄美大島における生態系保全のため捕獲したノネコ譲渡希望者の募集について(奄美市HP)
なお、間違って捕獲されてしまった飼い猫については、飼い主が分かる場合には飼い主の元へ帰すこととなっています。飼い主が不明の場合には各市町村で1週間公示を行います。飼い猫は必ずお住いの市町村に登録し、首輪やマイクロチップを装着して飼い猫であることをわかるようにしてください。
ノネコの発生源対策
飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例
奄美大島5市町村では、飼い猫がより幸せに暮らせるように、また不幸なノラネコ・ノネコが増えないように、「飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例」を定めています。
○飼い猫を飼うときはお住まいの市役所・役場で登録しましょう。
○ノラネコへのみだりな餌やりはやめましょう。
○飼い猫にはマイクロチップを装着しましょう。
○ネコは屋内で飼養し、やむをえず外で飼う場合は不妊去勢手術をしましょう。
TNR事業
また、奄美大島ねこ対策協議会では、ノラネコがこれ以上増えないように、TNR(Trap, Neuter, and Return)を行っています。TNRとは、ノラネコを対象に捕獲を行い、不妊去勢手術を行い、元の場所に戻すものです。本事業では各集落にノラネコがどれぐらいいるのかというモニタリングも行っています。
普及啓発活動
ノネコ問題とペットの適正飼養の大切さをみなさんに知ってもらうために、環境省や鹿児島県では出前授業などを実施しています。
これまでの流れ
平成23年7月 5市町村で「飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例」(以下条例)を策定
平成29年7月 条例を改正し、マイクロチップ装着が義務化
平成30年3月 環境省・鹿児島県・奄美大島5市町村で「奄美大島における生態系保全のためのノネコ管理計画」(以下管理計画)を策定
平成30年7月 環境省が山域でのノネコ捕獲を開始
令和元年 3月 飼い猫条例の啓発漫画作成(奄美大島ねこ対策協議会)
令和2年10月 管理計画を着実に進めるためのロードマップを作成