徳之島におけるノイヌ・ノネコの状況
徳之島でもネコによる在来種の捕殺が確認されており、環境省では山中でノネコの捕獲を行っています。2020年1月20日~25日にはアマミノクロウサギの死体2頭とケナガネズミの死体2頭が確認されましたが、これは死体からのDNA検出によりネコが捕殺したものと推定されました。また、2021年10月27日にはトクノシマトゲネズミの死体7頭が確認されましたが、これも同様にネコのDNAが検出されています。
さらに、徳之島では人の生活圏で生活し、人から餌をもらっているネコが山にいる希少種を捕食することが2019年の研究で確認されています(※1)。また、野外のネコは人に流産などを引き起こすことがあるトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii )の感染源となることが知られています(※2)。徳之島の野外のネコ125匹を調べた2021年の研究では、半数近く(47.2%)のネコがトキソプラズマの抗体を持つ(=感染したことがある)ことが確認されました(※3)。
こうした状況を踏まえ、ノネコの発生源となる飼い猫をきちんと管理することがとても大切です。徳之島3町では飼い猫条例が改正されるなど適正飼養の推進(※4)や市街地や集落においてノラネコの個体数を増やさないためのTNR(Trap, Neuter, and Return)などが行われています。
徳之島ではイヌによる被害も深刻です。被害は度々確認されており、2022年3月9日にはアマミノクロウサギの死体3頭(うち1頭には妊娠していました)が確認されましたが、DNA検出によりイヌによるものと推定されました。また、2021年10月13日~14日には、徳之島の集落の居住地域内でイヌによると思われるアマミノクロウサギの死体2頭が確認されました。リードを付けられていないイヌが人の生活圏と山を行き来して希少種を捕殺しているのです。
人や希少種への被害を生まないためにも、私たち一人一人が外来種問題について知るとともに、ペットは最期まで責任をもって飼うことが大事です。
アマミノクロウサギを咥えるネコ (2017年1月18日) |
ネコにより捕殺されたトクノシマトゲネズミ (2021年10月27日) |
イヌにより捕殺されたアマミノクロウサギと同日近くで自動撮影されたイヌ(2022年3月9日) |
※1 人が餌をあたえるネコが希少種を捕食する(森林総合研究所HP)
※2 三條場ほか.2021.トキソプラズマ症 -身近な人獣共通感染症の伝播サイクルとワンヘルスに基づいた対策の道筋.日本衛生動物学会誌「衛生動物」72巻,1-8ページ.
※3 Shoshi et al., 2021. Prevalence of serum antibodies to Toxoplasma gondii in free-ranging cats on Tokunoshima Island, Japan. Journal of Veterinary Medical Science. 83(2): 333-337.