やんばる
53件の記事があります。
2017年05月09日やんばるにおけるロードキル発生防止に関する様々な取り組み【やんばる地域】
やんばる 皆藤琢磨
皆さんはじめまして。
今年度からやんばる野生生物保護センターに着任いたしました、皆藤(かいとう)と申します。出身は栃木県、沖縄で生活し始めて七年目になります。どうぞよろしくお願いします。
沖縄は現在、寒い冬が終わり、"うりずん"と呼ばれる春の季節にさしかかっています。沖縄に寒い時期なんてあるのか、と思われる方もいるかもしれませんが、北風が強く吹きつける沖縄の冬は、北関東出身の私でさえ意外に堪えます。そんな寒い時期が3月下旬には終わり、長い長い梅雨が始まる5月上旬までのつかのまの一ヶ月は、一年のうちで最も過ごしやすい時期になります。やんばるの木々は新緑美しく、動物たちも活動的になります。"うりずん"とは、そんな春うららかな季節です。
例年、暖かくなってくるこの時期から、ヤンバルクイナを始めとする希少動物種の交通事故が増加してきます。今年のヤンバルクイナの交通事故は、1月から4月上旬までの間に1件しかありませんでしたが、4月中旬~下旬にかけて4件も発生し、今後ますます増加してくるのではないかと心配しています。ちなみに去年は、年間通して合計で34件のヤンバルクイナの交通事故がありました。
やんばる地域では、希少動物種のロードキルを減らすために、自治体・企業が様々な取り組みを行っています。その成果を発表するための会議が、4/27に国頭村ふれあいセンターで開催されました。今年度は、北部国道事務所、沖縄県北部土木事務所、国頭村世界自然遺産対策室、NPO法人どうぶつたちの病院沖縄、JAL・JTAセールス(敬称略)からロードキル発生防止に関する成果報告がありました。
▲今年度のロードキル発生防止に関する連絡会議の様子
環境省やんばる野生生物保護センターでは、ロードキル個体の救護・回収の他に、ロードキル発生防止に関する普及啓発活動を行っています。特に、交通量が増えるゴールデンウィーク期間中には、運転者に配慮して頂くための様々な取り組みを実施しております。過去にロードキルが頻発している道路区間には、例年通り、クイナ注意の看板を設置いたしました。
▲やんばるの道路に合計7カ所設置しました
また、5/3、5/4には、奥ヤンバルの里で開催される鯉のぼり祭りにて、ヤンバルクイナ交通事故防止キャンペーンを実施いたしました。本キャンペーンは、県内・県外問わず、やんばる地域を行楽する方々に、野生動物の交通事故防止のための安全運転について注意喚起を行うことを目的としています。今年度は、お祭りの間、ロードキル発生防止連絡会議のメンバーが、リーフレット・チラシの配布や、マスコットキャラクター「クイちゃん」の紹介、展示ブースにて交通事故に関する情報の提供等の活動を行いました。
▲鯉のぼり祭りでのチラシ配布の様子
やんばるの道路では、路上への動物の飛び出しを防止するフェンスや、道路下に横断トンネルを設置し、できるだけ道路へ立ち入らないよう動物たちにご遠慮頂いています。人・動物双方の安全のためにも、車を運転する際には、運転者側からも、動物たちに寄り添ったご配慮を頂きますよう、よろしくお願いいたします。
2017年04月24日季節の生き物を探しにお散歩に来ませんか?【やんばる地域】
やんばる アクティブレンジャー上開地
こんにちは。
やんばる自然保護官事務所アクティブレンジャーの上開地です。
やんばるの森に春がやってきました。
皆さんは春と言えば何をイメージしますか?ソメイヨシノの桜の花をイメージする人も多いのではないでしょうか。
しかし、やんばる地域を含め沖縄県に住む私たちにとって、桜は春ではなく、冬の花。
沖縄の桜は"カンヒザクラ(ヒカンザクラとも言う)"といって、冬に開花する早咲きの桜なのです(1-2月)。
ソメイヨシノの花が咲くためには冬の寒さが必要なのですが、暖かい沖縄では寒さが足りず、花が咲かないのであまり植えられていません。
▲冬(2月)に咲くカンヒザクラ 鮮やかなピンク色
▲やんばるの春といえば一足早いイタジイの新緑
こんなふうに、やんばるは本土よりも暖かい亜熱帯気候なので季節の植物や生き物の様子が少し違います。
やんばる野生生物保護センターでは、独特な季節の移り変わりや生き物の様子をゆっくりじっくり感じてもらえるように、毎月1回"お散歩観察会"をおこなっています。
▲今月は4/23(日)開催でした。
この観察会は2014年から毎月欠かさず続けています。
過去の観察会の様子をご紹介します。
◀5月 ヘリグロツユムシの幼虫が
↓
↓
↓
◀ 7月には成虫になったり...
◀6月に咲いたノボタンは...
↓
↓
↓
↓
↓
↓
◀嫌われ者になりがちな毛虫も...
↓
↓
↓
◀ほとんどの種類は毒が無く手に乗せても大丈夫です。
500mほどの距離をゆっくり歩くだけで、いろいろな生き物と出会うことができ、毎月季節が移り変わる様子が感じられます。皆さんも身の回りの生き物の様子を観察してみたら、面白い発見があるかもしれませんよ。ぜひお出かけしてみてください。
センター主催の観察会やイベントはホームページで紹介していますので、やんばるへお越しの際は是非、お散歩観察会にも遊びに来てくださいね。
やんばる野生生物保護センター「ウフギー自然館」
http://www.ufugi-yambaru.com/index.html
今月の一枚「センダンの開花」
2017年03月07日やんばる国立公園指定記念行事が開催されました!【やんばる地域】
やんばる アクティブレンジャー上開地
こんにちは。
やんばる自然保護官事務所アクティブレンジャーの上開地です。
3月に入りやんばるでは暖かい日が少しずつ増えてきました。
皆さんの地域はいかがですか?
事務所まわりの芝生を見ると、気温が上がり始めて最初に咲くチクシキヌランがたくさん顔を出しています。
▲お米粒の様な小さな花のチクシキヌラン
春がもうすぐやってきそうな気候の中、やんばるでは去る2月26日(日)に"やんばる国立公園指定記念行事"がおこなわれました!
昨年の9月15日にやんばる国立公園が指定されたことを皆さんとお祝いしました。
当日午前中は、東村慶佐次のふれあいヒルギ公園にてやんばる国立公園標識の除幕式を行いました。しかし、直前までまさかのどしゃぶり。
▲雨の中、除幕式の準備
どうなることやらと心配しましたが、ご参加の皆様の日頃の行いが素晴らしいおかげか開始前には雨が止み、とても良いお天気の中で進行する事が出来ました。
▲比嘉環境大臣政務官と慶佐次に広がるマングローブ林
▲いよいよ除幕です。
▲ジャーン♪
やんばる国立公園の標識は写真のモニュメント型の他に、オーバーハング式、路側式合わせて10基設置されています。これからの日記で紹介していきたいと思いますが、皆さんもやんばる国立公園に来た際は探してみてくださいね。
無事に除幕式を終えた後は、記念式典会場である大宜味村農村環境改善センターへ!
▲記念式典会場
満席になるほど大勢の方にお越しいただきました。
▲山本環境大臣より挨拶
山本環境大臣、翁長沖縄県知事、宮城大宜味村長からご挨拶した後は、新しく制作したやんばる国立公園の紹介映像を初公開しました(映像は今後、ウフギー自然館でご覧いただけます。)。
その後は、やんばるで学ぶ児童生徒達の研究発表でした。
大勢いる大人の前でみんな立派に発表してくれて、私は思わず感動してしまいました。
記念式典閉会の挨拶をした比嘉環境大臣政務官も、素晴らしい取り組みと発表にとても感銘を受けた様子でした。
▲大宜味村立大宜味小学校の野鳥と蝶の観察発表
▲沖縄県立辺土名高等学校環境科発表(クロサギの色について)
▲沖縄県立辺土名高等学校環境科発表(やんばるの川のエコツアー)
さあ、いよいよ締めくくりの祝賀会です。会場は国頭村民ふれあいセンターでした。
▲幕開けの"かぎやで風"
沖縄でお祝い事があるときに踊る琉球舞踊です。踊り手も三味線も太鼓も、みんな地域の方々です。
▲国頭村・大宜味村・東村から、環境省と沖縄県に記念楯をいただきました!
賑やかな音楽と歌に囲まれながら、閉会まで皆さんの嬉しそうな会話が途切れることはありませんでした。
一生に一度立ち会えるかどうかの行事に参加することができて、緊張しながらも貴重な時間を過ごせた一日になりました。
国立公園に指定されたこれからも引き続き、奄美大島・徳之島・西表島とともに4地域で世界自然遺産の登録に向けて地域のみなさんとがんばっていきます。多くの人にその価値の素晴らしさを伝えつつ、やんばるらしさを失わない魅力あふれる場所であるように私もお手伝いしたいです。
これからもよろしくお願いします。
今月の一枚「春の芽生え(シイノミ)」
2017年01月23日ツルヒヨドリについて
やんばる 藤田雄
皆さん、はいさい(こんにちは)。
やんばる野生生物保護センターの藤田です。
本日は皆さんに沖縄県に定着している外来種、ツルヒヨドリについてお話しさせていただきます。
ツルヒヨドリ、という名前だけでは鳥の様にも思えますが、このツルヒヨドリは北アメリカと南アメリカの熱帯地域を原産とする、外来の植物です。ヒヨドリバナという日本在来の植物とよく似た花を付ける蔓性の植物であるため、この名前が付けられています。
沖縄県では1984年にうるま市の天願川河口付近で発見され、沖縄本島中部一帯で繁茂し、西表島にも侵入が確認され、急速に分布をひろげています。そのため、平成28年8月に特定外来生物として新規指定されました。
▲ツルヒヨドリ(遠景)
▲ツルヒヨドリ(近景)
このツルヒヨドリはやんばる地域にも侵入しており、大宜味村田嘉里の田嘉里川と、やんばる野生生物保護センターがある国頭村比地の比地川の川沿いで発生が確認されたため、地域住民のみなさんと一緒に防除活動に取組み始めました。
▲比地川沿いの、ツルヒヨドリが繁茂している場所。コンクリートからススキの生えている場所にかけてツルヒヨドリに覆われている。
また比地川では駆除の際に、山の一部にもツルヒヨドリの繁茂が確認されていたので、こちらでも防除を行いました。
▲ツルヒヨドリが枝の上に繁茂している林。画面中央付近、左上と右下の白っぽい花がツルヒヨドリのもの。
ツルヒヨドリはとても繁殖力が強く、放っておくと森一つを丸ごと覆ってしまう程にも増えてしまうおそれがあります。そうなれば、
在来の植物の生育だけでなく、生態系全般に悪影響が出る可能性があります。
また、農地に入れば農作物にも被害を及ぼすでしょう。
このため駆除が必要なのですが、その際にも注意が必要になります。というのも切り落としたツルから根が張って再生していってしまうためです。このため防除の時にツルが散らばったりするとかえって広げてしまうこともあり、駆除した後には散らばらない様に気をつけなくてはなりません。
ただ、ツルヒヨドリは特定外来生物にあたります。この特定外来生物は、飼育、栽培、保管や生きたままの運搬等が原則として禁止され、これらを行う場合は許可が必要になります。適切な方法で防除しないと、かえって広げてしまう可能性もあるため、駆除を検討される際はまずは、環境省へお問い合わせください。
もし、国頭村、大宜味村、東村の前述以外の地域でツルヒヨドリを見つけた場合は、やんばる野生生物保護センターにご連絡をお願いいたします。
それでは、やんばるより藤田でした。
2016年09月15日続編:夏の渡り鳥「アジサシ」...子育てを終えて... 【やんばる地域】
やんばる アクティブレンジャー上開地
こんにちは。
やんばる自然保護官事務所の上開地です。
9月になり、真夏の強い日差しが少し和らいできましたが、まだまだ暑い日が続いています。
テレビや新聞を見ると、今年の夏は北日本や九州に大きな台風が上陸し、記録的大雨となって甚大な被害が出ていると聞いています。みなさんの地域は大丈夫でしたでしょうか。
沖縄はどうかというと、今年の夏は台風が来ませんでした。
沖縄の海にとっては台風が全く来ないのも困りもので、熱くなった表面の海水と下の冷たい海水をかき混ぜる役割を持つのが台風です。台風が来ないと海水温が熱くなりすぎて、サンゴが白化して長く続くと死んでしまいます。
今、沖縄のサンゴが至るところで白くなっているのがニュースなどで報じられていて、やんばる地域でも白いサンゴが見られています。
サンゴにとっては厳しい夏になりましたが、海の岩礁で繁殖する「アジサシ」にとっては良い年になりました。
(2016年06月01日の日記もご覧下さい。)
8月25日、今年最後の屋我地鳥獣保護区のアジサシ調査を行いました。
この時期、アジサシ達の子育ても後半に入り、巣立ちをした幼鳥が見られるようになります。今年は何羽巣立ってくれたのか...ドキドキしながら船に乗り込みます。
▲調査日の海
この日は遠い太平洋沖にある台風10号の余波で風が少し強い日でした。
風が強い日は、アジサシ達は橋桁の下などでよく休息しています。
▲古宇利大橋の下
アジサシ達はいるでしょうか...?
▲左2羽ベニアジサシ、右エリグロアジサシ
そしてその近くには、それぞれの幼鳥も確認出来ました。
▲エリグロアジサシ幼鳥
▲右:ベニアジサシ幼鳥
今年生まれの個体は、背中や翼にまだら模様があるので見分けられます。
他の岩礁でも両種の幼鳥がみられました。
ベニアジサシは全て巣立ちをしていますが、エリグロアジサシはまだヒナがいて子育て中の岩礁もありました。
釣りやレジャーで岩礁に行く際は、お気をつけください。
▲給餌を受けるベニアジサシの幼鳥
巣立った後もしばらくは親鳥から小魚をもらいます。
▲小魚をもらうエリグロアジサシのヒナ
今回の結果をまとめると、この日確認できた幼鳥の数は、
ベニアジサシ幼鳥19羽、エリグロアジサシ46羽でした。
この数は、調査を開始した2006年以来、最も多い数です!
今年の成功の要因は、
台風が来なかったことに加えて、釣り人の影響を最小限に抑えられたからだと思っています。
屋我地ひるぎ学園とおこなったデコイや看板の設置を、テレビや新聞などに沢山とりあげてもらったおかげで沢山の人に周知され、釣りやレジャーに来た人が協力してくれたのだと思います。
ベニアジサシのデコイ設置の結果は、残念ながらカラスの影響で繁殖を誘因する事は出来ませんでしたが、別の岩礁で繁殖を成功させてくれました。
これまでの活動のおかげで今後の課題も見えてきました。
今年、巣立った幼鳥たちは10月になると親鳥と共に越冬地へ帰っていき、繁殖するために戻って来るのは2年後です。
これからも、アジサシたちにとって安心して子育ての出来る屋我地であるように、地域の皆さんと活動していきたいと思います。
みなさんの住んでいる地域の海にも、子育てをする鳥たちがいるかも知れません。
遊びに行く際は、優しく見守ってもらえたらと思います。
今月の一枚「アジサシのにぎわう岩礁」
2016年06月07日平成28年度奥ヤンバル鯉のぼり祭りとロードキル防止キャンペーン
やんばる 藤田雄
皆さん、はいさい(こんにちは)。
やんばる野生生物保護センターの藤田です。
今日は皆さんに、平成28年度奥ヤンバル鯉のぼり祭りと、環境省の行っているロードキル防止キャンペーンについてお伝えします。
▲平成28年度奥ヤンバル鯉のぼり祭りの様子
去年にもこのアクティブレンジャー日記でお伝えした様に、やんばる地域では野生動物の交通事故、ロードキルが多発しています。
このロードキルを防止するため、環境省では交通事故防止の為のキャンペーンを行っています。その一環としてゴールデンウィークに開催された国頭村奥区の奥ヤンバル鯉のぼり祭りに参加させていただき、クリアファイルやパンフレットなどで野生動物や交通事故についての情報をお伝えし、パネルなどの展示で環境省や関係機関の取組の紹介をさせて頂きました。
そしてこのキャンペーンのために、あのヤンバルクイナのクイちゃんが今年も登場してくれました。
しかもクイちゃんだけではありません。今回の鯉のぼり祭りには、キョンキョンも駆けつけてくれました。
▲来場者の方とふれあう環境省のマスコットキャラクター「クイちゃん」
クイちゃんとキョンキョンには多くの来場者の方が駆け寄り、一緒に写真を撮って下さいました。大勢の方が、ヤンバルクイナについて興味を持って下さった様に思います。
ただ、心配な事もあります。ヤンバルクイナの交通事故が、最近増加傾向にあることです。5月の26日の時点で、12羽のヤンバルクイナが交通事故に遭っていることが確認されました。そのうちの10件は4月と5月に発生しています。それだけでなく、ケナガネズミの交通事故も今年に入ってから2件発生しています。
最近沖縄は梅雨入りし、雨の降る日が多くなりました。雨の降っている時や雨上がりには、地面に出てくるミミズなどを求めてヤンバルクイナが道路へ近づいてくることがとても多いです。
もし雨が降っているときや雨上がりにやんばるを車で走ることがあれば、一層注意して運転していただければ幸いです。
それでは、やんばるより藤田でした。
2016年06月01日夏の渡り鳥「アジサシ」の子育てを守るために【やんばる地域】
やんばる アクティブレンジャー上開地
こんにちは。
やんばる自然保護官事務所アクティブレンジャーの上開地です。
沖縄・奄美地域は5月16日に梅雨入りしました。
この梅雨入りを境に、様々な生き物が夏支度を始めます。
夏の渡り鳥である「アジサシ」たちも、梅雨入り前後に子育てのために沖縄へやってきます。
やんばる地域では「ベニアジサシ」と「エリグロアジサシ」の2種類のアジサシが繁殖します。
(2013年06月20日の日記もご覧下さい。)
▲左:ベニアジサシ、右:エリグロアジサシ
2006年から繁殖状況調査を続けている国指定屋我地鳥獣保護区(以下、屋我地)では、
今年は梅雨入りの少し前の5月9日に最初のエリグロアジサシがやってきました。
ベニアジサシは例年より少し遅れて5月28日頃から飛来し始めました。
さぁいよいよこれからアジサシ達の子育てが始まります。
屋我地では主に海の岩礁の上で繁殖するのですが、
このような岩礁は、釣りやレジャーをする人達にとっても良い場所になっているようで、釣り竿を固定するパイプや足場が設置されている事があります。
▲エリグロアジサシの繁殖岩礁
▲釣り竿を立てる塩ビパイプ
岩礁の上は夏の太陽の強い日差しが当たります。
親鳥は卵やヒナが熱で死んでしまわないように日陰を作るのですが、この時に人が近づいてしまうと親鳥が警戒して飛び去ってしまい子育てに失敗してしまうことがあります。
これまでの調査でも、繁殖を放棄した岩礁を調べてみると釣りの餌や蚊取り線香のゴミが落ちていました。
別の岩礁では生まれたばかりのヒナが死亡していました。
そして残念なことに、年々アジサシ達のヒナの巣立ち数や、飛来してくる親鳥の数が減少していて、特にベニアジサシの数が急激に少なくなってきています。
▲岩礁に残っていた釣り餌(小エビ)のゴミ ▲死亡していたエリグロアジサシのヒナ
これまではパンフレットや、海岸沿いに看板を立てて注意喚起をおこなっていましたが、昨年からの新たな取り組みとして、繁殖岩礁に簡易看板を設置しています。
今年は、屋我地島のひるぎ学園(旧屋我地中学校、小学校が統合)の5年生と一緒に看板を設置しました。
▲看板設置の様子 ▲5年生手作りのポスター
そして、今年は国内初の試みでベニアジサシのデコイを設置しました。
デコイとは、本物の鳥とそっくりに作った模型の事です。
群れで行動するタイプの鳥は、仲間の姿を見つけると同じ場所に集まる習性があります。
集団繁殖をする希少な鳥たちの繁殖をうながすなど、保全対策の為に使われます。
このデコイの色づけも、ひるぎ学園の4~6年生のみんなが協力してくれました。
▲デコイの色づけ ▲デコイの設置
自然や生き物の保全対策をおこなう時、私たち職員だけでは出来ない事がたくさんあります。一番大切で必要なのは、地域の人達の理解と協力です。
今回のベニアジサシの保全対策も、野鳥の専門家からアドバイスをもらったり、地域の人々、学校の協力のもとにおこなう事ができました。
6月になるとアジサシ達は産卵を始めます。
初めてのベニアジサシのデコイを使った対策がうまくいくように、みんなでドキドキしながら見守っていきたいと思います。
皆さんが海へ遊びに行くときも、海鳥が近くで営巣してないかどうか気を付けながら夏の海を楽しんで下さいね。
いつまでも美しい海に、アジサシ達が舞う姿が見られますように...。
今月の一枚「アジサシが食べる小魚の群れ(おそらくキビナゴ)」
まるで川の流れの様に形を変えながら泳いでいきました。
2016年04月08日ヤンバルクイナの集落プレイバック調査について
やんばる 藤田雄
みなさん、はいさい(こんにちは)。
やんばる野生生物保護センターから藤田です。
やんばる地域は急に暖かくなって参りました。これからの季節、寒暖の差で体調を崩さない様気をつけたいと思います。
本日は2月4日から23日に、国頭村と東村の小学校で行われた、ヤンバルクイナの集落プレイバック調査についてお話しします。
(佐手小学校にて、用具の準備をするNPO法人どうぶつたちの病院沖縄の皆さん)
プレイバック調査というのは、スピーカーなどで鳥の鳴き声を周囲に響かせ、鳥たちがその鳴き声に反応して鳴き返す声を聞き取り、いつ、どこから、どんな風に鳴いているかを記録する、という調査方法のことです。
やんばる野生生物保護センターではこのプレイバック調査をやんばる地域の各集落で、2005年からNPO法人どうぶつたちの病院沖縄の皆さんと、各集落の小学校および小中学校の教師と生徒の皆さんの協力のもとで行っております。今年は国頭村の佐手小学校、奥小学校、安田小学校、北国小学校、安波小学校と、東村の高江小中学校の皆さんに協力していただきました。
(生徒と教師の皆さんへの調査手順の説明 左:奥小学校 右:高江小中学校)
この集落内でのプレイバック調査では主に各集落に設置されている放送用のスピーカーからヤンバルクイナの鳴き声を再生し、集落内の4から5地点に分かれた各班が再生された音声に鳴き返す声を聞き取り記録します。
班員の役割は、時計を持っていつ鳴いたかを調べる時計係、地図を持ちながら鳴き声に聞き耳を立ててどこからどんな風に鳴いたかを聞き分ける聞き取り係、時間と場所と聞こえ方を紙に書き留めて記録する"記録係"の3つに分かれます。
そうして記録したヤンバルクイナの鳴き声を、最終的に1枚の地図に纏めて調査結果を記録する。これが集落プレイバック調査の流れとなっています。
(左:辺戸集落でヤンバルクイナの鳴き声を聞き取る北国小学校の皆さん 右:調査結果をまとめる安田小学校の皆さん)
(安波小学校にて、調査結果の発表)
本年度は全ての小学校での結果を合わせて、47羽のヤンバルクイナの鳴き声が確認されました。これは昨年の結果と比べると10羽以上増えており、特に辺野喜や安波といった、国頭村の南の集落では数が増えているという結果が得られました。少しずつヤンバルクイナの生息域が回復している、ということかもしれません。
協力していただいた各校生徒の皆さん、教師の皆さん、NPO法人どうぶつたちの病院沖縄の皆さん、どうもありがとうございました!!
それでは、やんばるより藤田でした。
2016年03月31日国頭村 産業祭り
やんばる 藤田雄
みなさん、はいさい(こんにちは)。
やんばる野生生物保護センターから藤田です。
やんばるでは最近、暖かい日が続いています。春が、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。
本日は2月13日と14日に道の駅ゆいゆい国頭で開催された、国頭村産業まつりとヤンバルクイナの交通事故防止の取組についてお話しします。
(国頭村産業まつりのオープニングセレモニー)
このお祭りのテーマは、地産地消。出店された数々の屋台はもちろん、農作物の収穫体験など、このテーマに則った様々な出し物が行われます。
美野定雄さん、菊田一朗さんの二人展"山原の風"の開催、熱帯魚を観察できるスペースの設置や、これとは別に魚の掴み取り大会などの開催もありました。
(左:熱帯魚の展示スペース 右:魚の掴み取り大会のために運搬されてきた魚 )
そんなお祭りに我々やんばる野生生物保護センターはNPO法人やんばる・地域活性サポートセンターのみなさんと一緒に参加し、ヤンバルクイナのマスコット達を登場させて貰いました。クイちゃん、キョンキョン、くーやんです!
(会場に登場したヤンバルクイナのマスコット達 左:くーやん 右:キョンキョンとクイちゃん)
やっぱりみんな、子供達には大人気。くーやんへ駆け寄って抱きついたり、クイちゃんとキョンキョンにチューしてとおねだりしたり、いろんな質問をしたりもしていました。
でもヤンバルクイナがどんなものを食べているかについて、どんな風に成長して大人になっていくかについて、交通事故の重点区間について、どんな時に交通事故が起こりやすいかについて、そしてやんばる野生生物保護センターや国頭村安田のクイナの森でもっと詳しい展示がされている、と説明すると、真剣に聞いてくれました。みんな、ちゃんと聞いてくれてありがとうね!
それでは、やんばるより藤田でした。
こんにちは。
やんばる自然保護官事務所アクティブレンジャーの上開地です。
春も落ち着き、うりずんの季節となりました。
沖縄では、暖かくなった春から梅雨入りする5月中旬頃までのさわやかな季節を"うりずん"といいます。
("うりずん"については皆藤アクティブレンジャーの日記で詳しく紹介しています。)
◀鮮やかな新緑もだいぶ緑に
変わってきました。
ちょうどこの季節は、渡り鳥が移動する季節でもあります。
さて、ここで問題です。
日本では何種類の鳥が観察されているでしょうか。
「日本鳥類目録改訂第7版」を読んでみますと、633種の野鳥(外来種を除く)が記録されています。
ではやんばる地域では何種類かといいますと、そのうちの半分以上(約300種以上!)もの野鳥が観察されています。
面積で比較してみると、やんばる地域は日本の0.1%ほどしかありません。
どうしてこんなに狭い範囲でたくさんの野鳥を観ることが出来るのでしょうか?
◀センターの館内展示
カエルの仲間も日本に生息する種類の約1/4(10種/41種)もの種類が生息していて、そのほとんどが沖縄や、やんばるだけに生息する固有種です。
ではなぜ鳥類は300種以上もの種類がみられるのでしょうか。
その秘密が渡り鳥にあります。
ちなみに渡りをせずに、1年を通して同じ場所にいる鳥を留鳥といいます。
やんばる地域に固有の鳥であるこの3種も留鳥です。
◀ヤンバルクイナ
◀ノグチゲラ
◀(ホントウ)アカヒゲ
※この3種は環境省の法律 "種の保存法" で国内希少種に指定されています。
(詳しくはコチラhttp://www.env.go.jp/nature/kisho/hozen/hozonho.html)
その他の留鳥は30種ほどです。
◀(オキナワ)シジュウカラ
◀(リュウキュウ)キジバト
◀イソヒヨドリ などが留鳥
つまり、やんばる地域でみられる鳥の90%、270種以上は渡り鳥なのです!
◀毎年冬にやってくるサシバ
◀春になると子育てのために南方からやってくる(リュウキュウ)アカショウビン
そして、今年の春の渡りの季節では、ちょっと珍しいお客さんが渡りの途中でやんばるに立ち寄ってくれました。
◀ソリハシセイタカシギ
◀ ムラサキサギ
※渡り鳥ではなく日本では八重山諸島の留鳥です。
稀に離れた場所まで飛んで行くことがあります。
やんばるの森や畑、水を張った田んぼは、季節を変えて長距離を渡る鳥たちの大切な生息地や休憩場所になっています。
4月も終わり、サシバの"チンミー"という声が聞こえなくなってさみしいですが、今は入れ変わるようにアカショウビンやサンコウチョウの賑やかな声が聞こえています。
皆さんの地域にも、きっと春の渡り鳥が来ているはずです。
私は昔、東京都内の緑地が残っている場所でオオルリを見たことがあります。
何気ない小さな森や草地も渡り鳥たちにとっては旅の途中のオアシスなのかも知れません。
0.1%のやんばるで沢山の野鳥が観察出来るように、都会の小さな緑地でも楽しい出会いがあるかも知れません。
やんばるはGWが明けてもうすぐ梅雨入りですが、皆さんの住む地域の梅雨入り前のお天気の日には、身近な緑地へお出かけしてはいかがでしょうか。
今月の頑張った一枚 「ヤンバルじゃない"クイナ"」
沖縄へは冬鳥としてやってくるのですが、見つける事が難しい鳥。顔が草で隠れてしまいました。
ヤンバルクイナとどこが違うのか、調べて比べてみてね。