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アクティブ・レンジャー日記 [九州地区]

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。

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やんばる

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2011年07月06日アクシデントを乗り越えて~ノグチゲラの巣立ち~【やんばる地域】

やんばる アクティブレンジャー上開地

今年、やんばるにはもう既に3つの台風がやってきました。
5月に1号・2号が上陸し、そして6月末には5号が、上陸はせずとも強風を伴い、やんばるの近くを通り過ぎました。この時期に台風が3つもやってくるのは異例のようで、塩害や例年にない多大なる農作物の被害をもたらしました。

台風の被害に遭ったのは人間だけではありません。


6/29
ここはやんばるの国頭村内の森です。
画面中央にイタジイの枯死木が倒れています。
アップでみてみましょう。


枯死木の樹洞入り口からクチバシが出ています。

もうしばらく待っていると…


シダの葉で隠れていますが真っ赤な頭のノグチゲラのヒナが見えますか?(写真の取り方が下手ですみません)
左側の幹に隠れているのは、給餌にきた雌です。

そう、台風の影響でノグチゲラの営巣木が倒れてしまったのです。

台風2号(5/29)の影響で、既に営巣木の幹は折れていましたが、隣りの木に寄りかかり、なんとか立っていました。

台風2号によって幹が折れている様子。(渡久地豊氏撮影)

しかし、今回の台風5号(6/25)によって完全に倒れてしまったのです。

その様子の確認のため、この日は調査に同行させていただきました。
1つの巣が2回の台風に遭うのは、とても珍しい事のようです。

ノグチゲラの生態調査を長年していただいている渡久地豊さんによると、前日は樹洞内には2羽のヒナがいたそうですが、この日は1羽しかおらず、もう1羽は通常よりも早く先に巣立ち、近くの幹にとまっていました。


先に巣立っていたヒナです。地面に降りてしまっています。
一見親とそっくりですが、頭頂部は雄雌共に鮮やかに赤く、幹に捕まる脚力はまだ弱く、尾羽も短くて顔つきは幼い印象があります。
よたよたと危ない足取りで幹を登っては落ち、地面を歩いてはまた登るを繰り返していました。

危なっかしい足取りで心配ですが、1番心配なことはこの営巣地周辺には人の手によって持ち込まれたマングースやノネコが確認されていることです。ノネコとは、人の手で飼われていた猫が野生化したものをいいます。
マングースやノネコはハンティング能力に優れており、このようなノグチゲラのヒナなど簡単に食べてしまうでしょう。

樹洞に残っているもう1羽も地面から数センチほどの高さにいるため、ヘビなどの他の天敵から狙われやすくなっています。
無事に巣立つか心配です。

この日、巣立ちは確認出来ないまま観察を終えて戻りました。
後日、私は確認に行くことが出来ませんでしたが、調査員の渡久地さんから連絡を頂き、7/2に無事に巣立ったそうです。
7/2の巣立ちは、1999年に始まった環境省の調査の中でもっとも遅く、また、倒木からの巣立ちは例が無いそうです。

ノグチゲラは様々なピンチを乗り越えて巣立って行きました。
今頃は親の後をついて回りながら、初めてのやんばるの森を探索していることでしょう。

今回の巣のペアは6才オス・7才メスで2007年と2009年に繁殖が確認されています。
環境省のこれまでの調査では、13年連続で繁殖が確認されている個体もおり、相手のどちらかがいなくなってしまうまで毎年同じペアで繁殖する事が分かってきました。

ノグチゲラは国指定特別天然記念物・国内希少野生動植物種(種の保存法)・環境省レッドリスト絶滅危惧IA類(CR)に指定されています。
分布域は、昔は名護岳でも確認されていたそうですが、マングースの侵入やノネコの影響で今は北部3村(国頭村、大宜味村、東村)内という狭い地域に限られています。
本来、肉食性ほ乳類のいないやんばるの森で、独自の進化を遂げてきたノグチゲラはやんばるの宝物です。
そんなノグチゲラをこれからも温かく見守っていきたいと思います。

※ノグチゲラを観察するときは近づかないようにしましょう。巣に近寄ると子育てを放棄してしまう事があります。

ノグチゲラについてもっと知りたい方はウフギー自然館HPへどうぞ!!
http://www.ufugi-yambaru.com/yanbaru/yanbaru_tyourui.html


*私のコンパクトデジカメではうまく撮影出来ませんでしたので、渡久地さんが撮影されました写真をご覧下さい。


巣穴から顔を出すヒナ。

メス親に給餌されるヒナ。

綺麗な写真ですね。私も1眼カメラを早く買って腕を磨きたいです。

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2011年05月19日*ヒメアマガエル変態中*【やんばる地域】

やんばる アクティブレンジャー上開地

こんにちは。
やんばる野生生物保護センター「ウフギー自然館」の 上開地です。
皆さん、この生き物が何か分かりますか?


体が半透明で内蔵が透けています。魚でしょうか…?




何と、実はオタマジャクシです。



3匹がカメラ目線でこちらを見ています。


このオタマジャクシらしからぬ風貌の持ち主は、ヒメアマガエルという日本最小のカエルで、
南西諸島や中国、台湾をはじめ東南アジアに広く生息しています。
アマガエルという名前がついていますが、緑色のアマガエルとは全く異なるジムグリガエル科に属しています。
日本に生息するジムグリガエル科はこの1種のみです。


ウフギー自然館では、ただいまこのオタマジャクシが変態中です。

え?変態?

……

変態とは、簡単に説明しますと、生き物の成長の過程で姿形が著しく変化することをいいます。
イモムシ幼虫が蛹になり蝶に変わるのも変態の一つです。
ここではオタマジャクシがカエルになる事を指します。
(皆さん知ってました??)


オタマジャクシからカエルへの変化はまず後脚から始まります。
小さな後脚がひょろっと伸びはじめ、だんだんとしっかりした脚になります。
その後、前脚が皮膚を破っていきなり生えてきます。(その瞬間はなかなか見られません…。)

前脚が生えるといよいよ陸に上がる準備が出来てきます。


前足が生えてきたので別の容器に移してあげました。
まだまだ尻尾が長いです。時々ジャンプしますが、水の中は尻尾を使って泳いでいます。


オタマジャクシとカエルの中間。

下ぶくれ顔がかわいいです。


さぁ、いつ頃カエルになるのかなぁと楽しみにしながら、翌日見てみると…



たった12時間で顔つきがカエルに!!



尻尾も短くお腹から見るともう立派なカエルです。

あまりの早変わりに驚きです。
明日にはもっと完全なカエルになっている事でしょう。

他のオタマジャクシ達の成長も楽しみです。


ウフギー自然館では今、他にも沢山の身近な生き物を展示しています。



ミナミヤモリの卵。2ヶ月ほどで孵化予定。ピンクがかっているのは中で成長している証拠です。


ガラスヒバァの幼蛇。脱皮前なので眼が白く濁っています。


どの生き物も毎日成長し、様々な変化を見せてくれます。
私も負けずに成長していきたいと思います。

皆さんも是非ウフギー自然館へ、この子達の成長を観察しに来てください。

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2011年05月08日『ウフギー自然館』 リニューアル1周年記念企画展【やんばる地域】

やんばる アクティブレンジャー上開地

はじめまして、こんにちは。
ご挨拶が遅れましたが、國吉さんと同じく4月からやんばる地区アクティブレンジャーに着任しました上開地(かみがいち)です。

やんばるに到着した日から毎日新しい生き物との出会いの連続で、
あっという間に1ヶ月が過ぎ、気がつけばゴールデンウィークも終りの日を迎えました。
今年は梅雨入りが早いそうで、せっかくの連休も大雨に見舞われましたが
カエル好きな私には良い天気でした(^^)

大雨の日に林道に出てきたイシカワガエル(県指定天然記念物、レッドリスト絶滅危惧ⅠB類)


イシカワガエルと同じ日に出てきたイボイモリ(県指定天然記念物、レッドリスト絶滅危惧Ⅱ類)
この子の隣にはロードキルに遭ってしまった個体もいました…



さて、やんばる野生生物保護センターは、昨年2010年4月29日に公募で決まった新たな愛称『ウフギー自然館』(ウフギー=大木)と共にリニューアルオープンしました。
おかげさまで今年は1周年を迎え、ゴールデンウィークに合わせリニューアル1周年の記念企画展を行いました!

企画展示担当の私の初めてのお仕事…。
気合いが入ります!

内容は
・ウフギー自然館1年間の活動報告
・ストップロードキル情報(2010)
・身近な生き物展示
・やんばる・ロードキルクイズ

です。


特に力が入ってしまったのが『身近な生き物展示』。
やんばるの方達にとっては身近でも、
千葉県から来た私にとっては珍しい生き物ばかりで、
センターの周りを散策しては毎日図鑑とにらめっこです。


企画展が始まると沢山のお客様が来館してくださり、
皆さん熱心にクイズに挑戦してくれました。

やんばる・ロードキルクイズ
皆さん解けますか??

子供達もロードキルの現状に思わず「かわいそう…」
とつぶやいています。

採点は赤ペンで一問ずつ◎をつけていったのですが
大人も子供も花丸満点をもらうと嬉しそうなとっても
いい表情になってくれて、頑張って作ったかいがありました(^^)

身近な生き物展示で特に人気があったのは、ガラスヒバァやアカマタの幼蛇です。
大きくなるとちょっと怖い人も、小さなヘビには「可愛い~」と言っていただけました。



『ウフギー自然館』は連日大賑わいで、ゴールデンウィークだけで
何と500人以上のお客様にご来館いただきました。

沖縄県内の方はもちろん、北海道や東日本大震災の被災を受けた茨城からいらした方もいました。
アンケートには
「身近な生き物についてもっと知りたくなった」
「固有種の多さに驚いた」
「外来種も多いことに驚いた」
「やんばるの自然はすごいなぁと改めて思った。何とが自分たちで絶滅を防ぎたい」
などのご意見を頂き、涙が出そうなくらい嬉しい私です。

これからも皆さんにやんばるのすばらしさを発信していけるように日々努力・勉強していきます。

この記事を読んでくれたみなさまも是非一度、いや、何度でも
やんばるの自然を満喫しにいらしてください。
車の運転はゆっくりのんびり(^^)

やんばるはいつでも皆さんをお待ちしています。

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