アクティブ・レンジャー日記
令和元年度 出水ツルフェスタを開催しました 【出水地域】
2020年03月30日出水自然保護官事務所の本多です。
今回は、2月1日(土)~9日(日)に実施した「パーク&ライド出水ツルフェスタ」(以下、ツルフェスタ)についてお伝え致します。ツルフェスタとは、ツル渡来地をさらに魅力的な場所へと磨き上げていくために、様々な社会実験を通じて地元や観光客の方々にご意見を伺うイベントです。
※過去のアクティブレンジャー日記では、「なぜツルフェスタを行うのか」、「どのようなイベントなのか」についてご紹介しています。是非ご覧ください。
・2019年の記事 http://kyushu.env.go.jp/blog/2019/03/post-562.html
・2018年の記事 http://kyushu.env.go.jp/blog/2018/03/post-425.html
▲今年度のツルフェスタのチラシ画像。写真クリック(タップ)で拡大表示できます。
ツルフェスタは今回で4回目の実施となりました。出水市との共催など、地元のご協力を頂きながら年々ステップアップしてきました。
今回のツルフェスタの取り組みについて、当日の写真と共に紹介致します。
*******************************************************************************************************
<ガイド付きバスツアー>
ツルフェスタの目玉の一つである、ガイド付きバスツアーを今回も地元のご協力のもと実施しました。
ツアーでは、「ツルガイド博士」や、ツルや野鳥の生態に詳しい地元の専門家、地元の農家の方にガイドとしてご活躍頂きました。また、今回新たに地元ボランティアの方々が、ツアーの進行役としてそれぞれの経験を活かし、全体の雰囲気を盛り上げて下さいました。
▲ツルガイド博士による解説。自作のイラストや、ツルの生態についてびっしり書かれたノートを活用したり、また、持ち前の明るさやまぶしい笑顔、様々な魅力を持つ子どもガイドは大変好評でした。
ツルの渡来地は、ただツルが沢山集まる場所ではなく、様々な農作物や海苔等、豊かな自然環境に恵まれた地域です。このような魅力を余すことなく発信するため、バスツアーでは①バードウォッチングコースと②出水ご当地産物コースの二つのコースを用意しました。
バードウォッチングコースではお馴染みのナベヅル・マナヅルや、15年ぶりに飛来したアネハヅル、ヘラサギ等の貴重な野鳥を見ることができました。参加者の方々が、興和光学株式会社の協賛により無償でお借りした双眼鏡を手に、アネハヅル等の「お目当て」を探す真剣なまなざし、そして見つけたときの感動的な雰囲気が印象に残りました。農業コースでは、農業や海苔養殖の現場で農家の方々と合流し、農業・海苔養殖の苦労話や、地元の魅力、幼少期からのツルとのかかわりについてお話を伺いました。現場の空気感等、言葉だけでは伝わらない情報を得ることができ、非常に貴重な体験となりました。
▲(左):バスツアーの様子。バスは、高い車高から見下ろすようにして観察できるため、ツルの家族の様子や、カナダヅル、クロヅル等の「(大多数のナベヅルに比べて)見た目が少し白っぽく見える」という感覚を共有しやすい点もメリットだと思いました。
(右):15年ぶりに飛来が記録されたアネハヅル。写真クリック(タップ)で拡大表示できます。
<PHV車の試乗体験>
今回新たな取り組みとして、トヨタプリウスPHV(プラグインハイブリッド)車の試乗体験が行われました。これは、出水市が事務局となり、鹿児島トヨタ自動車株式会社の協賛のもとで実現したメニューです。前述のバスツアーよりも移動・ツルの観察に自由が効くことから、同ツアーのデメリットを補う観光体験が可能になり、大変好評だったようです。
私も試乗させて頂きましたが、ツル等の野鳥を間近で観察できると共に、風の音やにおい、道端の草花の質感等、バスツアーでは味わえないツル渡来地の魅力を満喫することができました。加えてPHV車は動作が非常に静穏であるため、エンジン音などによるツルへの刺激(環境負荷)が最低限に抑えられる点においても、ツル渡来地に非常にマッチした魅力的な観光スタイルであると感じました。
▲ツルフェスタで貸出が行われたPHV車。同車およびツアーバスは立入規制エリア内への進入可とし、東干拓を走行する際は運営スタッフが手動でゲートを開閉して対応しました。
<その他>
▲昔の生活様式やツルとのかかわりについて、地元の歴史に詳しい方が解説する特別ブースを、観察センター内に設けました。
▲地元の義務教育学校、鶴荘学園の生徒による「ツルラップ」のPV撮影(Youtubeに公開されていますhttps://www.youtube.com/watch?v=3Pc-xQrw3n4)や、「ツル科」の研究発表が行われました。
▲クレインパークいずみでは、出水の干潟の野鳥を紹介する企画展や地元の飲食店による出店が行われました。
*******************************************************************************************************
ツルフェスタを通じて、出水は、ツルガイド博士や地元のボランティア等の素晴らしいスキルや才能・熱意を持った人々に加え、ツル以外の貴重な野鳥や農作物・海苔、豊かな自然環境等、大きな可能性を秘めた場所であると改めて気付きました。そうした地域のポテンシャルを、今後もツルフェスタ等の機会を通じて多くの人に知って頂けたらと思いました。
一方で、ツル渡来地は、農地であると共に生活道路として利用される等、地元の方々の日常生活に欠かせない土地です。ツル観光あるいはツル保護のどちらかに偏るのではなく、地元の方々が納得できるようなツル渡来地のあり方について考えたいと思いました。