屋久島国立公園 屋久島
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2019年05月29日永田岳の登山道を整備しています② 【屋久島地域】
屋久島国立公園 池田 裕二
▲永田岳から九州最高峰宮之浦岳を望む ▲永田岳とヤクシマシャクナゲ
登山道整備を実施している永田歩道の様子です。
ヘリで運搬した資材を人肩運搬で各現場に運び、設計に従って道の洗掘防止の工事を行っています。
(工事区間:焼野三叉路~永田岳~鹿之沢小屋)
2019年5月18、19日の大雨災害を受け、屋久島の山間部ではがけ崩れが多数発生いたしましたが、永田歩道は幸いにも影響は受けずに済みました。
▲施工例:木製の骨組みと、石詰めによる洗掘防止
今回の整備では、洗掘防止工を主として、雨水が川のように流れることを防止するための水切り工、植生保護のための木製橋の設置なども行っています。
引き続き登山をされる皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、ご理解くださいますようお願い申し上げます。
2019年05月28日ヤクシマザルの仔ザルに出会いました 【屋久島地域】
屋久島国立公園 池田 裕二
5月13日、山へ向かう林道の途中で、胸のあたりに仔ザルを抱えたメスに出会いました。
ヤクシマザルの出産シーズンは3月頃から5月頃、普通1回に1頭の仔を産みます。木々の新緑や、昆虫の活動期と重なるため、子育てには良い時期なのでしょう。
この時期の母ザルは神経質になっているので、観察をする際はできるだけ距離を置き、刺激を与えないようにしましょう。
カメラは望遠機能を使い、サルとの距離を十分とって撮影を行いました。
▲仔を抱えるメス。
屋久島ではサルに対し餌付けを禁止しています。そのおかげもあり、サルは人をあまり気にせず自然なふるまいを見せてくれます。餌付けをしてしまうと、人の持っている食べ物を奪うようになってしまうおそれがあります。
人とサルとの良好な関係を崩さないためにも、マナーを守って動物観察をしましょう。
2019年04月25日永田岳の登山道を整備しています 【屋久島地域】
屋久島国立公園 屋久島 池田 裕二
九州最高峰宮之浦岳に次いで2番目に高い山「永田岳」。(標高1,886m)
独特の荒々しい地形から人気の高い山です。
▲晴れた日の永田岳 ▲永田歩道のフォトスポット「ローソク岩」
近年、永田岳周辺の登山道の荒廃が目立ってきているため、現在整備を行っています。
作業は6月14日まで予定しています。
登山をされる皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、ご理解くださいますようお願い申し上げます。
まずはヘリで荷揚げした場所の現場確認を実施しました。
屋久島の山間部は上昇気流が起きやすく、ヘリでの作業が難しいようです。無事に終わりますように。
▲ヘリで荷揚げをして、仮置き場に保管します。
▲雨水で崩れた登山道。こうした場所に洗掘防止として石を詰めたカゴなどを設置します。
下山時に、ジネズミ(ヤクシマジネズミ)に出会いました。
ネズミではなくモグラに近い仲間です。よく見るとモグラ顔。
▲ジネズミの眼はとても小さい。
2019年03月12日屋久島パークボランティアでアメリカハマグルマ駆除 【屋久島地域】
屋久島国立公園 アクティブレンジャー 水川
みなさん、こんにちは!
屋久島自然保護官事務所の水川です。
3月9日(土)に、屋久島国立公園パークボランティアの会の平成30年度最後の活動となる、外来種アメリカハマグルマ駆除in栗生塚崎海岸を実施しました。
2015年にこの場所の駆除を開始して、今回で5回目となりました。
最初の活動(2015年)の様子はコチラ↓
http://kyushu.env.go.jp/blog/2015/12/post-130.html
▲駆除を開始した2015年の駆除活動の様子。
駆除を始めた頃は一面に繁茂しており軽トラックの荷台いっぱいにとれたアメリカハマグルマですが、数年にわたって駆除を続けたことで減少し、今回の活動ではゴミ袋1袋にも満たない量しかとれませんでした。
▲今回駆除したアメリカハマグルマ。数か所に少量ずつ点在する程度に勢力が衰えていました。
前回駆除した場所にはすでに在来植物が繁茂しており、再生しているアメリカハマグルマを探し出すのに苦労しました。
アメリカハマグルマは日当たりのよい場所を好みますが、在来植物がたくさん生えていれば、日陰となってアメリカハマグルマの成長を抑えてくれます。
大変ですが、できるだけ在来植物を残しながらアメリカハマグルマを根っこから抜き取るという作業を行いました。
▲アメリカハマグルマを探す様子。
▲根から抜き取ったアメリカハマグルマ。
たくさん枝分かれしたり茎を長く伸ばして成長し、他の植物の生育場所を奪います。
▲最終的に見つかったアメリカハマグルマはたったこれだけでした!根絶間近です。
引き続きモニタリングを継続し、再生したら抜きとりを行い、根絶を目指します。
平成30年度の屋久島国立公園パークボランティアの会の活動はこれで終了しました。
パークボランティアの皆さん、大変お疲れさまでした!
最後に...
この日活動に向かう途中、なんとツルを発見しました!(私は屋久島で初めて見ました。)
北帰行(出水→シベリア方面への渡り)のシーズンなので、逆方向の屋久島にいて大変驚きました。
出水自然保護官事務所の本多アクティブ・レンジャーに聞いたところ、ナベヅルの成鳥でした。
屋久島への飛来はあまり無いそうで、もしかすると強風にあおられる等して群れからはぐれた個体が、たまたま屋久島へ飛来したのかもしれないとのことでした。
見たところ外傷は見当たらず、問題なく飛べるのではとのことだったので安心しました。
無事に群れに戻ってシベリアまで飛んでいけますように!
2019年03月11日希少な野生植物アオイガワラビを追え!【屋久島地域】
屋久島国立公園 池田 裕二
「種の保存法」で国内希少野生動植物種※に指定されているシダ植物、アオイガワラビの自生地調査を行いました。巨木の残る照葉樹林内で、イスノキやスダジイなどが多く生えています。
▲アオイガワラビ
アオイガワラビ(青毬蕨)は、環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠA類に指定されている大変貴重な植物で、国内では屋久島にしか自生していません。絶滅危惧ⅠA類というランクは、イリオモテヤマネコやツシマヤマネコと同ランクで、希少な生物に当てはめられます。近年、アオイガワラビの減少率は著しく、100年後の絶滅可能性は100%とされています。
ワラビと名がありますが山菜として食べることもできるワラビと近い仲間ではなく、容姿が似ていることからそう名付けられたのでしょう。イガという名の通り、葉柄には棘状の鱗片がついているのが特徴です。
ヤクシカやヤクシマザルなどから身を守るためか、屋久島にはトゲのある植物が多く自生しています。アオイガワラビのトゲは野生動物たちが嫌うほどには鋭く発達していないため、防衛効果のほどはあまりないのかもしれません。
また、屋久島の林床に生える植物には野生動物が嫌う化学成分を含む植物が多く、苦みや辛み、毒などで動物に食べられないよう身を守っています。屋久島で多くみられるナチシダやコバノシイカグマ、ホソバカナワラビなどはシカが食べることなく、きれいに育っています。よほど不味いのでしょう。植物の生存戦略は面白いですね。アオイガワラビは個体数が減少傾向とのことで、動物が嫌う化学成分が比較的少ないのかもしれませんね。
通常の巡視では出会うことは稀なアオイガワラビ、今回の調査でその特徴を詳しく観察することができました。シダの同定(種を判別すること)は経験がものをいうので、図鑑を見ただけではわからないことが多いのです。アオイガワラビにはオニヒカゲワラビとの交雑種「ウスゲアオイガワラビ」が存在するそうです。絶滅危惧種を現場でパッと見分けることのできることも、レンジャーやアクティブレンジャーにとって大事なスキルです。
アオイガワラビはその希少性から、自生地の一部では柵を設置して保護しています。
絶滅危惧種、希少生物を保護することは生物多様性※の観点から、とても重要なことです。屋久島で見られるような独自の生態系や、今ある自然環境を大切に守っていくことが私たちの未来にとっても必要なことなのです。
▲アオイガワラビの羽片の裏側、ソーラスもシダの同定には重要ポイント。
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※昨年9月に国内希少野生動植物種ヤクシマソウについての記事を掲載しました。
こちらもどうぞご覧ください。
【参考:希少な野生植物ヤクシマソウを追え!】
http://c-kyushu.env.go.jp/blog/2018/09/05/
※生物多様性については屋久島国立公園だよりにも掲載しています。
詳しくはこちらをどうぞご覧ください。
https://www.env.go.jp/park/yakushima/ywhcc/np/np_tayori1807.pdf
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2018年12月04日今年度の出前授業が終わりました 【屋久島地域】
屋久島国立公園 アクティブレンジャー 水川
みなさん、こんにちは。
屋久島自然保護官事務所の水川です。
先日、今年度最後の出前授業が終了しました。
今年は屋久島町立八幡小学校4年生に全5回、小瀬田小学校5年生に全3回、神山小学校4年生に全6回の授業を実施しました。
八幡小学校3回までの授業については下記バックナンバーをご覧ください。
http://kyushu.env.go.jp/blog/2018/07/post-492.html
最初に授業が終了したのは小瀬田小学校でした。
毎年小瀬田小は屋久島東部の田代海岸で授業を行っています。
田代海岸は屋久島国立公園になっており、屋久島町指定天然記念物の枕状溶岩やウバメガシなどの海岸林が見られ、ウミガメが産卵に訪れるなど、美しい自然海岸が残っています。
田代海岸での授業は10月12日。
ビンゴゲームをしながら生き物を探したり、海の水の水質調査をしたり、貝殻採集をして自然と触れ合いました。
▲貝殻採集の様子。
▲教室に戻って、拾った貝の種判別と標本作成。
図鑑や標本とにらめっこして採集した貝の名前を調べています。
▲最後は田代海岸の生き物地図を作成しました。
翌週の10月19日は、八幡小の最終授業で西部地域に行ってきました。
世界自然遺産エリアである西部地域は、世界遺産になった理由の一つ、植生の垂直分布を見ることができます。
また、西部地域は屋久島で最もサルやシカが多く生息する場所で、観察に適した場所です。
一方で、シカが増えすぎていることから植生に影響が出ている場所でもあります。
▲まずは植生の垂直分布を見学。
海岸付近の亜熱帯性植物、目線の高さの山肌には照葉樹が広がり、標高が上がるにつれてスギやマツなどの針葉樹が現れ、山頂は厳しい気候条件から背の高い木は育たず、風衝低木林やササに置き換わります。
このように、標高に応じて異なる植生が分布することを植生の垂直分布と呼び、これが海岸から山頂まで途切れることなく残っている屋久島の生態系は、顕著な普遍的価値として世界に認めらています。
▲シカを観察する児童。
▲シカが児童に大接近!そして突然児童の目の前で「フィーヨーッ!!」と大きな声で鳴きました。
これには皆驚き唖然...。
発情期真っ只中のオスジカが縄張りを主張したのでしょう。貴重な体験でした。
▲シカ糞とサル糞も採集。
▲沢で糞を洗って...
▲内容物を観察。
▲サル糞(左)からは消化できていない葉や実の種子や皮が出てきました。
シカ糞(右)からは消化されて細かくなった葉の繊維が出てきました。
▲なぜサルとシカの糞がこんなに違うのだろう?植物と動物の関係は?など、糞から様々な考察ができました。
翌週の10月26日には神山小の野外授業の第一回目があり、栗生塚崎海岸に行ってきました。
▲ビンゴゲームをしながら生き物探し。
▲浜には様々な生き物の足跡がありました。
▲レンジャーのお仕事体験として、海岸清掃をしてもらいました。
台風後ということもあって、浜にはたくさんのゴミが漂着していました。
わずか5分間で大量のゴミが集まりました(右)。
▲教室に帰って海岸の生き物地図を作りました。どの班も個性的で、特に「すなはまっプ」はナイスなネーミングセンスで思わず笑ってしまいました!
さらに翌週の11月6日は神山小のふるさと先生授業でした。
ふるさと先生授業とは、地域が育む「かごしまの教育」県民週間中における学校自由参観日の授業の一つで、地域で活動している人を講師に招き、各学年特色ある授業を展開する神山小独自のものです。
毎年4年生のふるさと先生授業に呼んで頂いており、生き物どうしのつながりについて授業をしています。
▲前回の授業で作成した栗生塚崎海岸の地図を使って、地図内の生き物とそのエサとなる生き物を糸でつなげるゲームをしました。つなげていくと、糸がとても複雑に絡み合っていきました。
児童は「ゴチャゴチャになっちゃったよ~。」「訳が分からない!」と嘆きましたが、これでいいのです!
これこそが生き物どうしのつながり。
全く関係ないと思う生き物も、実は複雑につながり関わり合っているのです。
最後は、ある生き物が地球からいなくなったと仮定してその生き物の糸を外してみました。
▲糸を外す様子。
すると、糸は全部の生き物につながっており、全部の生き物がいなくなってしまいました。
「人間だけで生きていくことはできない。」「たくさんの生き物に支えられている。」「生き物はつながっているからどの生き物もいなくなってはいけない。」と学びました。
翌週の11月13日には、神山小で西部地域の事前学習を行いました。
今年度から、西部地域の授業の前に、ヤクシカやヤクシマザルの生態、観察の仕方などの事前学習を取り入れることにしました。
▲エゾシカとヤクシカの頭骨を持参して児童に見てもらいました。
並べると大きさの違いが歴然でみんな驚いていました!
サルとシカへの興味が沸々と湧いたところで、いよいよ最終授業!
11月27日に西部地域に出かけました。
▲西部地域に入ってすぐにサルの群れに遭遇!
▲植生保護柵の中と外の林床植生の違いを観察していると...
▲柵内に入れる私たちが羨ましかったのか、シカ達が柵のまわりに集まってきて、じーっとこちらを見ていました。
そして教室に戻って班ごとに巨大な調査報告書を作成して発表しました。
▲発表の様子。
わずか1時間でどの班もしっかりまとめました。
児童のみなさんのまとめる力、表現力には大変驚かされました。
▲4つの班の調査報告書。
こうして今年度の出前授業は全て無事終了しました。
屋久島ならではの貴重な体験ができたと先生方にもおっしゃっていただきました。
こうした機会は屋久島の子ども達にとって重要だと改めて感じました。
来年度はどんな子ども達に会えるかな~
2018年11月21日アサギマダラのマーキング会 【屋久島地域】
屋久島国立公園 アクティブレンジャー 水川
みなさん、こんにちは!
屋久島自然保護官事務所の水川です。
11月11日(日)に、自然に親しむ集い~アサギマダラマーキング会~を開催しました。
みなさんは日本で唯一旅(長距離移動)をするチョウ、アサギマダラをご存知でしょうか?
▲アサギマダラ(写真:西川高司)
今の時期(秋)は本州から日本の南の地域や台湾などに向かって移動している個体を見ることができます。
南下する個体は、11月頃旅の途中で交尾し、幼虫のエサとなる草(食草)を見つけて卵を産みつけ、そして一生を終えます。
ふ化した幼虫は越冬し、春になると蛹化・羽化します。そして今度はこの個体が北に向かって旅を始めます。
目指すは本州の高原地帯などの涼しい所。
北上する個体は、6月頃本州のどこかで産卵し、夏前に一生を終えます。
その子どもは夏に蛹化・羽化し、8月下旬頃から南に向かって旅を始めます。
つまり、アサギマダラは世代交代しながら北上と南下の旅を繰り返しているのです。
なぜ旅をするのでしょうか?
ひとつは気温です。
暑さや寒さを逃れるために適温の地へ移動するといわれています。
次に吸蜜花です。
アサギマダラのオスは、ヒヨドリバナなど特定の花からしか蜜を吸いません。
ヒヨドリバナなどの花にはメスを誘うために欠かせないフェロモンの材料となる物質(ピロリジジン・アルカロイド)が含まれています。それらを求めて移動しているそうです。
▲ヒヨドリバナ。
ときには2000kmも旅をするアサギマダラ。
この不思議な旅の実態は、1980年頃から行われている全国の有志によるマーキング調査によって解明されてきました。
アサギマダラは鱗粉が少なく、浅葱(あさぎ)色のまだら模様があるので、そこに油性ペンで文字を書くことができます。
その特性を生かして、捕獲地や捕獲日、捕獲した人の名前を羽に書いて放し、別の地点で再び捕獲された情報を集約して移動経路や時間などを調べます。これがマーキング調査です。
▲マーキングしたアサギマダラ。
捕獲地(屋久島)の「YAKU」、捕獲日「11/7」、捕獲者(水川)のイニシャル「MIZ」、通し番号「3」。
それでは、今回のマーキング会の様子をお伝えします!
このマーキング会は2015年から毎年開催しており、今回で4回目です。
2003年から15年間にわたって屋久島でアサギマダラのマーキング調査を続けていらっしゃる久保田義則さんを講師にお招きして、アサギマダラについてのレクチャーやマーキングの仕方を教わり、実際に野外でアサギマダラを捕獲してマーキングしました。
▲久保田氏によるレクチャー。アサギマダラの生態や外敵、マーキング方法などを、写真を交えてお話し頂きました。
普段なかなか見ることがないアサギマダラの卵や幼虫、蛹、外敵のスズメバチに食べられた幼虫や、幼虫に卵を産み付けるハエなどの写真を見た参加者からは、「ほ~!」「うゎ...」など驚きの声が聞かれました。
▲生きたアサギマダラにマーキングをしてみせる久保田氏と見入る子どもたち。
▲野外に出る前に1人1頭ずつマーキングを実践。
▲いざ、本番!アサギマダラ探しに出発。
▲アサギマダラを捕獲してマーキングする子ども。
▲うまく書けたかな?
▲Myマーキング台を持参したベテラン参加者。
参加者全員最低1頭、多い人で4頭ほどマーキングすることが出来ました。
活動終盤、なんと参加者の男の子が和歌山で10/8にマーキングされたアサギマダラを再捕獲しました。
和歌山で精力的にマーキングをされている方の標識だったそうで、久保田氏はすぐに和歌山からの個体と分かったようです。
▲和歌山でマーキングされたアサギマダラと捕獲した男の子。和歌山の標識が書かれた羽とは別の羽に新しい標識を書いて放しました。
この再捕獲&マーキングによって「約1か月で和歌山から屋久島まで移動した」という一つのデータになりました。
また、今回皆でマーキングした個体が屋久島以南で再捕獲されれば、またそれも貴重なデータになります。
こうした地道なマーキング調査が、まだまだ謎の多いアサギマダラの生態解明につながるのです。
今回はマーキング調査の醍醐味が味わえた会となりました。
久保田氏は、マーキング調査の楽しみは調査自体だけでなく、人とのつながりがあることだとおっしゃいます。
アサギマダラのマーキング調査は全国各地で行われており、メーリングリストなど情報交換の場があります。
アサギマダラを通して様々な人と関わることができるのも魅力の一つだそうです。
アサギマダラのマーキング調査は、マーキングして放すだけでは自分も他者も捕獲情報や移動情報を得ることが出来ません。
いつだれがどこで捕獲し、どんなマークを付けたかを他の調査者に知らせておかないと、再捕獲した人はマークだけ見ても詳細が全く分かりません。
マーキング情報や捕獲情報を他の調査者と共有することで初めて正確なデータとなります。
アサギマダラのマーキング調査についての情報交換はメーリングリストで行われています。
興味のある方は「アサギネット」や「アサギマダラの会」で検索してみてください。
2018年11月07日パークボランティアでヤクスギランド清掃 【屋久島地域】
屋久島国立公園 アクティブレンジャー 水川
みなさん、こんにちは!
屋久島自然保護官事務所の水川です。
最近の屋久島は朝晩が冷え込むようになりましたが、晴れた日の日中は半袖で過ごせるような温かい気候が続いています。
温度差があり体調管理には十分気を付けたい時期です。
さて、11月1日(木)に屋久島国立公園パークボランティアの会でヤクスギランドの清掃を行いました。
会員8名、職員2名の計10名で、2班に分かれて2時間半ほど木道や手すりのコケ落としを行いました。
ヤクスギランドは年間降水量10000mmと、屋久島の中でも特に雨の多い場所です。
湿度が高い分木道や手すりにコケがつきやすく、コケがついた木道は滑りやすく危険です。
この日はまずパークボランティアでもあるヤクスギランドの職員の方から清掃場所や清掃方法についてレクチャーを受けました。
▲レクチャーの様子。ヤクスギランド入口の大きな案内図を使って場所を確認。
その後、2班に分かれて作業を開始しました。
▼A班の作業の様子。木道はデッキブラシ、手すりは金たわしを使ってゴシゴシ擦りました。
▲木道の細かなところはたわしでゴシゴシ。根気のいる作業です。
▼B班の作業の様子。
▲木目がはっきり見えるほど綺麗に手すりのコケを落としました。
何日も雨が降っておらず、木道や手すりはカラカラに乾いていました。
コケは濡れていた方が落ちやすいので、沢で何度も水を汲み、木道を濡らしては擦りを繰り返して綺麗にしました。
ハードな作業でしたが、ヤクスギランドを訪れたお客さんからは「ありがとう」「ご苦労様です」とお声をかけて頂き、疲れも吹っ飛びました。
▲最後にみんなで、はい、ポーズ!大変お疲れ様でした!
2018年11月06日宮之浦岳巡視 【屋久島地域】
屋久島国立公園 池田 裕二
10月下旬に九州最高峰の宮之浦岳(標高1936m、日本百名山の1つ)へ巡視に行ってきました。今回の巡視の中での作業は、モニタリング定点撮影と、携帯トイレブースの簡易補修、台風等による登山道荒廃箇所の調査でした。
モニタリング定点撮影とは山頂部や、展望所、湿地など特徴的な植生の見られる場所で実施している調査です。毎年同じ場所で撮りためたデータから植生や地形などの変化を見ていくことができるので、大切な作業です。
翁岳の鞍部に設置された携帯トイレブースでは10月に屋久島を通過した台風24号により、トイレの固定用ワイヤ―が外れてしまったため、ハンマーで固定杭を打ちなおす作業を行いました。
淀川登山口での朝の気温は約4度とかなり冷え込んでいましたが、日中は半袖シャツで過ごせるほどの陽気。寒すぎず、暑すぎず、快適な登山日和での作業となりました。
▲宮之浦岳登山道から眺めた永田岳方面。
▲投石岳付近のコケ群落はきれいに赤く発色していました。こんな紅葉もいいですね。(おそらくヤクシマゴケの群落)
▲台風等の雨水による土壌流出箇所の調査。1回の大雨で1m近く掘れてしまうこともあります。
▲カメノテの群集
カメノテを食べたことはありますか?
文字通りカメの手のような姿をした海の生き物で、屋久島では人気の高い海産物です。近年、テレビ番組でも食用として紹介されたこともあり、知名度が上がっています。
硬い殻と、鱗のようなものに覆われており、初めて見る方は本物のカメの手かと思ってしまうかもしれません。
また、殻に覆われて貝のようにも見えるので、貝の1種と思ってしまう方も多くいらっしゃるようです。
しかし実際には爬虫類のカメの手でも貝でもなく、エビやカニなどを含む甲殻類※のグループで、フジツボに近い仲間です。意外でしたか?
波のかかる岩場の隙間をよくみると、集まってくっついている様子を見ることができます。
屋久島にはコンクリートで整備された海岸はとても少なく、自然の海岸が残っています。カメノテの生育環境はあちこちで見られます。
カメノテは北海道から沖縄まで広く分布しますが、食べる習慣がある地域は比較的少ないです。塩ゆでしたり、味噌汁に入れたりすると、おいしくいただくことができます。
身を食べる際にはコツが要ります。鱗のような皮の部分を取って中身のピンク色の身を食べます。エビと貝を足したような、濃厚な風味です。
※甲殻類アレルギーの方は要注意です!
その正体も食べ方もあまり知られていない珍味カメノテ、島内のお宿や飲食店でぜひ挑戦してみてください。
今回、屋久島世界遺産センターの貝コーナーの一角にも、カメノテの解説パネルを設置いたしました。ご来館の際には是非ご覧ください。