ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [九州地区]

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。

RSS

屋久島国立公園 屋久島

163件の記事があります。

2011年05月23日淀川小屋トイレ使用禁止のお知らせ[屋久島地域]

屋久島国立公園 屋久島 アクティブレンジャー 田川

現在、屋久島の淀川登山口から40分の場所にある淀川小屋トイレが、原因不明の漏水のため使用できなくなっています。使用禁止がいつ解除されるかは、まだ見通しが立っていません。

さて、今年度の5月に淀川小屋に新しい携帯トイレブースが設置されました。下の写真の右側が既存のトイレで、左側が携帯トイレブースになります。



今まではテントを用いたブースだったため手狭でしたが、新しい携帯トイレブースはこのようになっており、荷物を置くスペースがあるなど広々としています。また、底上げした金網の上に便座を置いているため、臭いや湿気がこもりにくく清潔に使うことができます。


使用方法や設置場所は次の様になっています。携帯トイレブースは2011年5月現在、主要縦走路沿いに8箇所設置しています(テントの携帯トイレブースを含む)。縦走を行う方や淀川小屋に宿泊を考えている方は、屋久島の環境や淀川小屋周囲の環境を汚さないためにも、携帯トイレの持参にご協力ください。よろしくお願いいたします。


詳しくは、屋久島世界遺産センターHPを参考にしてください。http://www.env.go.jp/park/kirishima/ywhcc/np/keitait.htm

ページ先頭へ↑

2011年02月09日九州いきものリレー ~屋久島の生物多様性(21) ヒシクイ~

屋久島国立公園 屋久島 アクティブレンジャー 田川

今回屋久島から紹介するいきものは、ヒシクイです。


【和名】ヒシクイ,オオヒシクイ【科名】カモ科
【撮影日】1月29日 【撮影場所】屋久島町安房 春田浜
【備考】上の写真にはヒシクイが2匹、オオヒシクイ1匹写っています。
ヒシクイとオオヒシクイは、見分けが付きにくいですが顔と嘴がスっと通っているのがオオヒシクイ、嘴が太く顔と嘴の境がボコッとしているのがヒシクイです。



ヒシクイは冬鳥で、ロシア東部シベリアから渡来します。
越冬地として有名なのが宮城県の化女沼で、ほとんどの場合、琵琶湖以北で越冬するそうです。今年、屋久島まで来たのは、記録的な寒波から逃れるためにやってきたのかもしれませんね。

ヒシクイは絶滅危惧Ⅱ類、オオヒシクイは準絶滅危惧に指定されている希少な鳥です。もし見かけた際は、脅かさないようにそっと遠くから観察してください。

ページ先頭へ↑

2011年01月14日九州いきものリレー ~屋久島の生物多様性(20)ヒレンジャク~

屋久島国立公園 屋久島 アクティブレンジャー 田川

冬の屋久島には色々な鳥が、渡り鳥としてやってきます。今日紹介するいきものは、はるばるシベリアから屋久島に渡ってきたヒレンジャクです。



【和名】ヒレンジャク【科名】レンジャク科
【撮影日】1月7日 【撮影場所】屋久島町 小瀬田集落付近
【備考】繁殖期は昆虫食、非繁殖期は果実食になります。日本には冬鳥として渡来します。

ヒレンジャクは、後頭部の冠羽がピンと立っているところや、尾羽の緋色が特徴的な鳥です。



上の写真は、ヘクソカズラの実を食べているヒレンジャクです。咥えた実を、頭を振ってちぎっている様子が観察できました。



【撮影日】1月1日 【撮影場所】福岡県 久留米市
ヒレンジャクは群れで行動することが多く、街中では上の写真のように群れで電線に止まっている姿が観察できます。冬から春にかけてしか見ることができないヒレンジャク、みなさんも是非探してみてください。

ページ先頭へ↑

2010年12月27日太忠岳登山道巡視 【屋久島地域】

屋久島国立公園 屋久島 アクティブレンジャー 田川

南の島、屋久島にも本格的な冬が訪れ、山間部では雪が積もり始めました。全国的に荒れ模様となった25日と26日は、屋久島も強風が吹き、雨や雹が降るなど荒れた天気となりました。
27日に、登山道の積雪状況や冬季の危険箇所を確認する目的で、太忠岳に巡視に行ってきましたのでご報告いたします。
太忠岳山頂は標高1497mあり、天柱石と呼ばれる巨石が鎮座しています。下の写真の巨石が、天柱石です。正確な大きさは分かりませんが、40~50mほどの大きさがあるように見えます。山頂からは、荒川登山口近くの尾立ダムや屋久島の安房集落を見ることができます。



さて、太忠岳登山道の積雪状況は下の写真のようになっていました。太忠岳登山道途中にある天文の森を過ぎ、標高1300mを超えると20cm近い積雪がありました。どこに雪に隠れた窪みや浮き石などがあるか分からないため、慎重に進まなければなりません。積雪した登山道は、全ての場所で注意深く歩く必要があることが分かりました。


白い雪化粧をまとった、屋久杉の森は厳かな雰囲気が漂っていました。雪山は、寒かったり、滑ったりするなどあまり良くない先入観がありましたが、この雰囲気を味わって雪山に対する気持ちが180°変わりました。



以上のように雨の島と呼ばれている屋久島は、冬季は雪の島になります。冬季に登山される方は、南の島だと侮らずにしっかりとした冬山の装備をご準備ください。

なお屋久島登山道の積雪情報は、屋久島観光協会のHPに記載があります。登山を検討されている方は、是非一度ごらんになってください(http://www1.ocn.ne.jp/~yakukan/index.htm)。

ページ先頭へ↑

2010年08月31日九州いきものリレー ~屋久島の生物多様性(17)ヤクシマシオガマ

屋久島国立公園 屋久島 アクティブレンジャー 田川

屋久島の稜線部では、秋の花が咲き始めています。
今回ご紹介するいきものは、屋久島固有種のヤクシマシオガマです。



【和名】ヤクシマシオガマ
【科名】ゴマノハグサ科
【撮影日】2010年8月22日
【撮影場所】標高1700m付近の明るい場所
【備考】絶滅危惧Ⅱ類 (鹿児島県 2003)
下の方から次々と開花するため、花期は長めです。



名前の分からないハエの仲間が訪花していました。

花序上部の先端に雌しべがあります。昆虫が花に潜り込むときに、頭やお腹についた花粉がひっつく構造の様です。
屋久島の稜線部には、矮小化した種が多く生育しています。その中で、ヤクシマシオガマの花はとても大きく、とても綺麗なピンク色をした花でよく目立ちます。宮之浦岳や永田岳に登られた際は、是非探してみてください。

ページ先頭へ↑

2010年08月27日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで50日前】

屋久島国立公園 屋久島 アクティブレンジャー 田川

九州いきものリレー ~屋久島の生物多様性(16)屋久島の高山植物~

みなさん、こんにちは。今回は、COP10まであと50日ということで、『日本のいのち、つないでみよう!』と『九州いきものリレー』を共同開催します。
さて、今回紹介するいきものは屋久島の高山植物です。屋久島の高標高域では、今が花の見頃です。


【和名】ツクシゼリ
【科名】セリ科
【撮影日】2010年8月26日
【撮影場所】屋久島の標高1700m付近
【備考】屋久島分布南限 絶滅危惧Ⅱ類 (鹿児島県2003)
登山道沿いの岩の割れ目に生えていました。白い花弁と黒い雄しべが、特徴的な花です。


【和名】イッスンキンカ
【科名】キク科
【撮影日】2010年8月26日
【撮影場所】標高1700m付近
【備考】屋久島固有変種 絶滅危惧Ⅰ類(鹿児島県 2003)
森林限界を超え、明るい環境の湿った場所に生えていました。一寸ほど(約3cm)の草丈に似合わない、大きな花をつけていました。


【和名】ヒメコナスビ
【科名】サクラソウ科
【撮影日】2010年8月26日
【撮影場所】標高1700m付近
【備考】屋久島固有変種 絶滅危惧Ⅱ類(鹿児島県2003)
登山道沿いの崩れた斜面に匍うようにして生えていました。

今回紹介した植物は、矮小植物といわれています。矮小化とは、気温、風、栄養・水分条件などの要因で、小型化することをいいます。矮小化するきっかけは分かっていないことが多いく、これからの研究で解明されていくと思います。

屋久島のツクシゼリは高さ3cmほどで、屋久島以外のツクシゼリはなんと高さ20cmを超えるそうです。研究が進むと、屋久島のツクシゼリは、ヤクシマツクシゼリに分類が分かれるかもしれません。
イッスンキンカはアキノキリンソウが、ヒメコナスビは、コナスビが矮小化した種であると言われています。確かに、花の雰囲気はそれぞれの種によく似ています。また、背丈や葉の大きさはかなり小さくなっていますが、なぜ花の大きさが小型化しないのかとても不思議に思います。なお、屋久島環境文化村センターで京都大学の篠原渉先生が「屋久島の高山で進化したミニチュア植物」という演題で講演されます。
詳しくはこちら、http://yakushima.or.jp/htdocs/index.php?action=pages_view_main&page_id=48

屋久島の高標高域では、屋久島固有の種、分布南限の種が数多く生育しています。つまり、屋久島の高標高域は生物多様性のホットスポットと言うことができます。しかし、温暖化による寒暖の差の増加、降水、降雪量や利用者による踏み付けと登山道崩壊によって、生育環境が悪化しつつあります。この素晴らしい生物多様性の宝庫を次の世代に残せるように、自分のできることをしっかりとやっていきたいと思います。

【参考文献】
南方新社 屋久島高地の植物

ページ先頭へ↑

2010年08月24日枯れ枝除去 【屋久島地域】

屋久島国立公園 屋久島 アクティブレンジャー 田川

みなさん、こんにちは。屋久島稜線部では、秋の花が咲き始めており、季節の移ろいが感じられます。
今回、屋久島森林環境保全センターと一緒に、淀川登山口近くの登山道上の枯れた枝を除去してきました。枝と言っても1mを超えるような大きな枝です。
まずたこ糸を付けたボールを落としたい枝にうまく引っかかるように投げます。
次に、たこ糸をロープに結びつけ、枝にロープを引っかけます。


そして、頭上に注意しながら力一杯引っ張ります。

大きな枝が落ちたときは、なかなかの達成感があります。

この写真の左にある枝は、1.5mほどの長さがあり、かなりの重量がありました。今回は、大小合わせて6本の枯れ枝を処理しました。

屋久島の登山道は、いろいろな関係機関が連携をしながら登山者の安全を確保できるように管理・整備を行っています。
屋久島には、大きな台風がここ2-3年やってきていないため、枯れ枝や落枝が樹上にたくさん残っています。注意を呼びかける看板がある場所では立ち止まらず、また休憩する際も頭上に注意を払って休んでください。

参考:http://c-kyushu.env.go.jp/blog/2010/07/621.html

ページ先頭へ↑

2010年08月20日ヤクシカの自動撮影 【屋久島地域】

屋久島国立公園 屋久島 アクティブレンジャー 田川

近年、ニホンジカの個体数増加に伴う生態系被害が、日本各地で報告されています。屋久島においても、ヤクシカの個体数増加に伴って生態系被害、農林業被害が出てきていると言われています。そこで、屋久島自然保護官事務所では、ヤクシカの活動時間や個体密度を推定するための基礎的な知見を得るために、ヤクシカの個体密度が高い場所に、生き物を自動で感知して撮影するカメラを設置しました。

今回は撮影された写真数千枚の中から、特に面白い写真を紹介します。


オスジカと子ジカを含む、ヤクシカ9頭写っています。牧場を囲うフェンス近くで採餌をしており、人と動物の行動圏が重なっていることが分かります。

ヤクシカは夜行性のため、ほとんどの写真は夜間に撮影されますが、たまに神経が図太い個体がいるようで、昼間撮影できる場合もあります。

ヤクシカだけでなくヤクザルも写ることがあります(写真右下)。その他、ノネコやカラス、コウモリなどが写ったことがあります。

電池が切れるまで、24時間休むことなく働き続けたカメラに負けないように、得られたデータをしっかりと解析して様々な対策に役立てたいと思います。

ページ先頭へ↑

2010年08月19日九州いきものリレー ~屋久島の生物多様性(15)オオキンカメムシ~

屋久島国立公園 屋久島 アクティブレンジャー 田川

みなさん、こんにちは。今日紹介する生き物は、最近私がはまっているカメムシの仲間のオオキンカメムシです。

【和名】オオキンカメムシ
【科名】キンカメムシ科
【撮影日】2010年8月17日
【撮影場所】低地のアブラギリ林
【備考】アブラギリの汁を好む


特に成虫は、アブラギリの果実の汁がお気に入りのようです。


幼虫は、葉の裏に集団で隠れていました。

臭い匂いを出したり、農作物に被害を与えたりする種がいるため、嫌われることが多いカメムシですが、じっくり見るとなかなか綺麗だと思いませんか?身の回りの昆虫にもたまには目を向けて観察してみてください。新たな発見があると思います。

ページ先頭へ↑

2010年08月17日九州いきものリレー 屋久島の生物多様性(14)ヒナノシャクジョウ

屋久島国立公園 屋久島 アクティブレンジャー 田川

みなさん、こんにちは。屋久島では立秋を過ぎたにも関わらず、真夏のような残暑厳しい日が続いています。

さて、今日ご紹介するいきものは、葉緑素を持たない腐生植物のヒナノシャクジョウです。小さく目立たないところで開花するため、初めて見る方も多いのではないでしょうか。透明感のある白い花でとても綺麗な花です。


【和名】ヒナノシャクジョウ
【科名】ヒナノシャクジョウ科
【撮影日】2010年8月2日
【撮影場所】標高1000m付近、登山道沿いの明るい林床
【備考】準絶滅危惧種 (鹿児島県RDB 2003)
この植物は、私も初めて見る植物で時間を忘れて撮影してしまいました。



腐生植物は葉緑素がないため、自分で栄養を作ることができません。そのため、土壌中の菌から栄養をもらって(菌に寄生して)生活しています。何という菌から栄養をもらっているのか、どのように繁殖・定着しているかなど、生態学的なことはほとんど知られていません。この不思議な植物が生育できる環境を守っていきたいと思います。

ページ先頭へ↑

ページ先頭へ