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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

ベッコウトンボの幼虫調査に行ってきました.

2024年12月17日
出水 中島 楽喜
こんにちは。
出水自然保護官事務所の中島です。
ベッコウトンボを保護する会によるベッコウトンボ(以下本種)の幼虫調査に同行してきましたのでその様子を紹介します。
さて、今回の幼虫調査について紹介する前に4月に行った採卵について紹介します。
藺牟田池では池の水が干上がるなどの撹乱から本種の個体群減少を防ぐため人工環境下で幼虫の育成を行い、羽化後放飼しています。
育成する幼虫を確保するため、メス成虫を捕獲、採卵を実施しました。
その後卵は孵化したものから網を張ったトロ船水槽(以下水槽)に放流しています。
今回の調査対象は水槽内に放したヤゴたちです。
詳しくは5月に投稿したAR日記をご覧ください。

なぜ調査するのか

調査の目的は本種の増殖方法の羽化率の向上・省力化です。
全国数箇所でベッコウトンボの保全が行われていますが、好適環境を維持するための抽水植物の引き抜きなどは大変な労力を伴うことや、関係者の高齢化などが課題となっています。
幼虫の生存率・大きさ等のデータを用い、省力化しつつも高い羽化率を維持できる増殖方法の研究を進めることで持続可能な保全に近づくことができます。

活動の流れ

1.ベッコウトンボのヤゴを放流した水槽の泥をさらい、ヤゴをトレーに出します。
 
2. トレーに出したヤゴを同定し大きさを測ります。

3.元の水槽にヤゴを戻す。
以上が幼虫調査の行程です。今年は36頭確認されました。
無事に羽化してくれることを願うばかりです。

藺牟田池を利用する上での注意事項

・ベッコウトンボは原則、成虫、卵を問わず法律によって採取が禁止されています。調査・研究のため採取する際には環境省への申請が必要です。
 捕まえず観察するだけにしましょう。
・「浮島」と呼ばれる泥炭形成植物群落は天然記念物に指定されています。立ち入らないようにしましょう。
・浮島付近では釣りやボートの立入りが制限されている場所があります。よく確認して遊びましょう。
最後に12月中旬の藺牟田池の様子をお伝えします。
紅葉はもう終わりかけですが、休日はピクニック客などで賑わいを見せています。
来年にはラムサール条約登録湿地登録20周年を迎える藺牟田池に足を運んでみてはいかがでしょうか。
 
ラクウショウ
もみじ
片城山からの望む藺牟田池