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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

どんな生き物?ツシマテン

2024年07月09日
対馬 南優妃
 こんにちは。小麦色の南です。
 
 ヒートアイランドな私の地元・東京に比べると対馬の夏は随分涼しくて爽やかですが、この時期対馬での遊びといえば海でのアクティビティやBBQ…仕事ではヤマネコ調査に繰り出し…対馬に来てからホクロがよく増えます。

 さて、ヤマネコ調査のために自動撮影カメラを仕掛けているといろいろな野生動物が映り込みますが、時々動物たちの面白い生態を捉えた写真が撮れます。今回はヤマネコと張るキュートな対馬のアイドル「ツシマテン」について、自動撮影カメラの画像を交えて紹介していきます。



ツシマテン Martes melampus tsuensis
  • ホンドテン(Martes melampus melampus)の対馬固有亜種
  • 準絶滅危惧 NT(環境省レッドリスト・2007~)
  • 天然記念物(国指定・1971~)

生息場所

 対馬にのみ分布しており、島内全域で見ることができます。ツシマヤマネコに比べれば比較的よく見られる身近な存在ですが、準絶滅危惧種になっています。森林に生息していますが、集落や街中にもよく出没し、残念ながら交通事故もしばしば発生しています。運転の際には気を付けましょう。

形態

▲木にしがみつくツシマテン
 大きさはネコくらいのサイズ感ですが、体重は1kg~1.5kg程と軽いです。イタチの仲間らしい細長体型ですが、たくましい脚をしています。この脚で木にガシッと掴まって木登りをします。

毛色

 ツシマテンは季節で毛色が大きく変わります。夏毛は黒々としています。冬毛は、体は黄褐色になり、脚先や鼻、口周辺は黒いままに、頭は白っぽくなります。これが綿帽子(神前式でお嫁さんがかぶるアレ)をかぶっている様だということで、対馬ではワタボウシカブリとも呼ばれています。
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▲冬毛
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▲冬毛から夏毛へ
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▲夏毛

食性

 雑食性です。
動物はネズミ類や鳥、昆虫などを食べます。

 ある日、ツシマヤマネコ野生順化ステーション付近に仕掛けている自動撮影カメラにツシマテンの戦闘シーンが映っていました。相手はなんと…
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▲アオサギが羽を広げてうつ伏せになっている。ツシマテンが優勢か?
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▲アオサギがツシマテンに負けじと暴れている。
アオサギです。
 
自分よりも大きい相手をねじ伏せてしまうテンのパワフルなこと。ですが、この後は何も撮影されておらず、現地にも羽がいくらか散らばっているくらいで血痕はありませんでした。もしかすると、アオサギは命からがら逃げおおせたのでしょうか…
 
 食べる動物はツシマヤマネコと被っていますが、大きな違いは果実も食べるということ。
ヤマネコの痕跡調査の際、ツシマテンのフンと見分けるときはまず果実の種が入っているかを見ます。必ず入っているわけではありませんが、分かりやすい識別ポイントの1つです。果実が多い時期のツシマテンのフンは、フルーティーな良い香りがすることもあります。
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▲ツシマヤマネコのフン。動物の毛や羽、骨などの他にイネ科植物が入っている場合もある。
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▲ツシマテンのフン 。細長く、果実の種が含まれているこ とがある。

他にもこんなの撮れました

 ツシマテンは警戒心が強く、時々後ろ脚で立ち上がり、前脚はちょんと体の前で揃えて、辺りを見回す行動をとります。これは「目陰(まかげ)」といって、イタチの仲間によく見られる特徴的なポーズです。
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▲カルバートから出てきて目陰をするツシマテン。
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▲カメラの目の前で目陰をするツシマテン。
 ツシマテン同士の取っ組み合いが撮影されたこともありました。じゃれ合っているのか、縄張り争いか、雄雌のいさかいか、とにかく激しく揉み合っています…太い脚で相手を抱えてドンとひっくり返す様子は何となく柔道を彷彿とさせます。カメラの前では決着がつかぬまま、どこかへ去ってしまいました。
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 私たちの業務はツシマヤマネコ保全が多くを占めているため、AR日記の記事もツシマヤマネコの話がほとんどですが、対馬には他にも対馬にしかいない生き物、名前に「ツシマ」とつく面白い生き物が実は沢山いるのです。
過去にも一部紹介しています
 
今回はそのうちの1つ、ツシマテンの紹介でした!