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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

ツマアカスズメバチの生息状況について

2024年05月27日
対馬 千原 悠斗
こんにちは!対馬自然保護官事務所厳原事務室の千原です。
今回は特定外来生物ツマアカスズメバチについてです。

ツマアカスズメバチは日本では対馬市にのみ定着している外来スズメバチで、平成24年に対馬市に侵入していることが確認されました。

在来の昆虫類等への生態系に与える影響や人への刺傷被害のほか、ミツバチやハエなどの飛翔性昆虫をエサとして好んで捕らえるため、対馬の伝統的なニホンミツバチ養蜂への影響も懸念されることから、平成27年より特定外来生物に指定されています。

本種については、過去のARがこれまで何度も紹介されておりますので、ぜひそちらもご覧ください!
対馬の養蜂と特定外来生物ツマアカスズメバチ | 九州地方環境事務所 | 環境省 (env.go.jp)
ツマアカ女王蜂駆除大作戦始まります! | 九州地方環境事務所 | 環境省 (env.go.jp)
 
環境省ではツマアカスズメバチを防除するために、春に越冬した新女王蜂を狙って駆除する春季防除や夏から冬にかけて発見された巣の除去などを行っていますが、そのほかにもツマアカスズメバチの分布状況や生活史の調査、化学的防除実施に関するモニタリング
(過去に紹介しました→ツマアカスズメバチ防除活動紹介 | 九州地方環境事務所 | 環境省 (env.go.jp)
など直接的な防除以外の取り組みも行っています。

今回は昨年度の分布調査で得られた最新の生息状況について紹介したいと思います!
 

昨年の調査結果は?

 ▲ ペットボトルトラップ
ツマアカスズメバチの生息状況を調査するため、7月、11月にペットボトルを加工した簡易トラップを島内138箇所に設置し、各地域に本種が生息しているかどうかを調査しています。

ツマアカスズメバチを初めとするスズメバチ類は、花の蜜や樹液なども好みますので、トラップの中で乳酸菌飲料の原液と水、ドライイーストを混ぜ合わせ、発酵させることで、スズメバチ類が好む甘酸っぱい液体を作り、ツマアカスズメバチをおびき寄せます。トラップは、他のスズメバチ類や昆虫などができる限り混獲されないようになっています。

まんまと餌に引き寄せられたツマアカスズメバチは足場のないトラップ内で液体に沈んでしまうため、安全かつ低コストでハチを捕らえることができます!





 

こちらのトラップを使って、昨年度調査した結果が以下になります。
         
          
オレンジ色の地点がツマアカスズメバチの生息確認地点になりますが、ぱっと見ただけでも、昨年度の調査結果はオレンジ色の割合が高いことが分かると思います…
 
昨年度の分布調査では138地点中、110地点もの調査地で生息が確認されました。なお、これは過去最多の生息確認地点数です。
 
調査結果を見ると、近年生息情報が落ち着いていた対馬北部地域やこれまで捕獲地点の少なかった対馬南部で分布確認地点が増えています。
また、近年他地域と比較して生息密度が高い対馬中部(豊玉町、峰町)においても、さらに生息情報が得られています。

スズメバチ類の生息数は気象条件などの影響を受け、年ごとに個体数が増減する傾向があることから、この調査結果だけでツマアカスズメバチが対馬市内で増加傾向にあるとは一概には言えませんが、個体数が増加し、分布が拡大傾向である可能性があります。
今後の生息状況の変動が重要になると思いますので、今年度も引き続き調査を実施し、動向を注視していきます。
 
最後になりますが、ツマアカスズメバチの拡散、高密度化を防ぐためには、営巣情報の提供など地域の方々のご協力が不可欠ですので、防除や調査とあわせて普及啓発に一層努めていきたいと思います!