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九州環境局

アクティブ・レンジャー日記

石西礁湖サンゴ群集モニタリング調査に同行しました。

2026年10月29日
石垣 下田 成美
皆さんこんにちは!石垣自然保護官事務所の下田です。

環境省では石垣島と西表島の間に位置する国内最大のサンゴ礁、石西礁湖で「石西礁湖サンゴ群集モニタリング調査」を実施しています。この調査では、毎年石西礁湖にある31か所の地点で定着板の設置・回収、一年生稚サンゴの加入量、スポットチェック法を使用した白化等調査をはじめとする項目について、有識者の方々に協力いただきながら調査を行っています。

ここ10年の間に石西礁湖では2016年、2022年、2024年と大規模白化が起きていますが、今年は台風が多く発生し水温が比較的低いまま保たれているため、現時点では白化の影響は見られていないと考えられます。

今回は、サンゴ群集モニタリング調査へ同行した際の様子をお伝えします。

定着板について

早速ですが、みなさんはこれが何か分かりますか?
 
定着板
これは、サンゴの幼生の定着量を調査するために設置されている定着板と呼ばれるものです。この定着板をサンゴの一斉産卵前の毎年4~5月に各地点に設置、9月からの調査で回収し、その後一枚一枚、定着板に付着している稚サンゴの種類や数を数えて、その年にどのくらいのサンゴの幼生が定着したかを調べます。
 
回収の様子
回収する際には、回収地点・定着板設置箇所ごとにラベルを付けます。各地点に30枚設置してあり、31か所の調査地点があるので、単純計算でなんと900枚以上の定着板が設置されています。

こちらは、以前別の地点で回収された定着板を拡大した写真ですが、このようにクシハダミドリイシの幼生を確認することができました。実際の大きさは5mm程度でとても小さく、他にも似たような形状をしているコケムシなども多く定着しているので、サンゴの幼生や種類を見分けるためにはとても時間がかかる作業です。
 
クシハダミドリイシの幼生(ポリプ)
こちらはサンゴの一生のサイクル(生活史)を現した図です。

この、プラヌラ幼生は水中を浮遊し定着すると先ほどの写真にあるポリプになります。サイズは小さくても、目を凝らすとすでにサンゴの見た目をしていますね。

一年生稚サンゴ加入量

さて、こちらは何の調査をしているところでしょうか?ルーペで何か見ていますね。
 
ルーペで確認し、
 
記録します。
正解は、一年生稚サンゴの加入量の調査です。こちらの調査では、各地点で50cm×50cmの正方形の枠を置き、水中でルーペを使用してその枠内にいる稚サンゴの種類や数を数えます。潮の流れにのってゆらゆらと揺れながら、とても小さなサンゴを探し数を数え記録をしていきます。

変わりゆくサンゴ礁

最初に、石西礁湖ではここ10年で大規模白化が3回起きたとご紹介しましたが、一年生稚サンゴ加入量の調査の様子を紹介したこの場所は、石西礁湖の中央付近に位置しています。全体的にサンゴが死滅していますが、こちらの場所は、数多くの枝サンゴやクシハダミドリイシと呼ばれるテーブルの形をしたサンゴが多く生息していた場所です。
 
以前の写真
 
大規模白化の影響を受けた現在
しかし、よく目を凝らしてみてみると、至る所にカラフルなサンゴが定着し形が分かるくらいの大きさに成長していました。以下の写真は直径約5cm程度のサンゴです。これからの成長が楽しみですね。
 
若いサンゴ
また、こちらでは死滅したサンゴの骨格の上にハナヤサイサンゴがたくましく成長していました。ハナヤサイサンゴは比較的ゆっくりと成長するサンゴの一種で、こちらの個体はある程度大きくなっているため、近年の大規模白化を生き抜いたものと考えられます。
 
ハナヤサイサンゴ
調査を行った別の地点では、白化現象が起きた後に死滅したサンゴの上に藻類が成長し、そこに藻類を好む魚や生き物が棲み始め、だんだんと生態系が変わっている様子が見られました。
 
サンゴ礁の上に成長する藻類
また、新しいサンゴの幼生が加入しても藻類が優先してしまうことによって、サンゴと共生する褐虫藻の光合成がうまくできずにサンゴに栄養を送ることができなくなり、結果的にサンゴが成長できなくなってしまう場合もあります。
 
藻類に遮光されるサンゴ
こちらの写真は、クロソラスズメダイと藻園です。写真右に見える黒い魚がクロソラスズメダイですが、こちらをじっと見ていますね。実は、写真の真ん中に生えている藻は、クロソダスズメダイが管理しているイトグサの藻園になります。こうやってじっくり周りを見渡すと、いろいろな魚の特性や生活様式がみえたりと、とても興味深いですね。

ここでお気づきの方もいるかもしれませんが、実は、先ほどの「サンゴ礁の上に成長する藻類」の写真にもクロソラスズメダイがこちらを見ています。海の中で視線を感じてまわりを見渡したら、クロソラスズメダイがいた、なんてことも多いかもしれません。
 
こちらににらみをきかすクロソラスズメダイ
今回は、石西礁湖で行われているサンゴ群集モニタリング調査の様子と変わりゆくサンゴ礁生態系についてお伝えしましたが、このように一つ一つのデータを集め、その年のサンゴ礁の傾向や長年蓄積されたデータと比較等することにより、サンゴ礁全体で何が起きているのかを知ることができます。

おまけ
 
調査同行中に出会ったウミウシ
八重山地方の美しい海に棲んでいるサンゴや生き物がこれからも元気に過ごしていけるように、私たちにできることを考えながら、自然と関わっていきたいと感じました。