アクティブ・レンジャー日記
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。山階鳥類研究所の水田さんと奄美野鳥の会の鳥飼さんが行っているアマミヤマシギの調査に同行させていただいた夜のお話をご紹介します。
アマミヤマシギ調査【奄美大島】
2023年11月16日
奄美
自己紹介
はじめまして、6月に奄美群島国立公園管理事務所へ着任しましたアクティブレンジャーの野中と申します。国立公園の巡視、利用による影響把握のためのモニタリング調査、希少野生生物の密猟・密輸・盗掘・違法採取の対策、希少な昆虫類の生息状況の調査を主に担当しています。初投稿のアクティブレンジャー日記となります。どうぞよろしくお願いいたします。
山階鳥類研究所の水田さんと奄美野鳥の会の鳥飼さんが行っているアマミヤマシギの調査に同行させていただいた夜について綴ってまいります。
山階鳥類研究所の水田さんと奄美野鳥の会の鳥飼さんが行っているアマミヤマシギの調査に同行させていただいた夜について綴ってまいります。
アマミヤマシギ保護増殖事業の一環として
この調査は、アマミヤマシギから採取した血液や羽毛、糞を調べることで、アマミヤマシギの食性を解明することを目的とし、アマミヤマシギ保護増殖事業の中に位置づけているものです。
教えていただいたところ、安定同位体比分析に必要な血液と羽毛、DNAメタバーコーディングに必要な糞の採取が目的とのことでした。
「安定同位体比分析」というのは組織(血液や羽毛)に含まれる窒素や炭素の安定同位体の比率からその種が何を食べているのかがある程度推測できるそうです。
「DNAメタバーコーディング」では糞に含まれるDNAを解析することにより、何を食べていたのかがわかるとのことでした。
水田さんは長年、アマミヤマシギの餌となるミミズの調査を通年行った結果、季節によってミミズの発見数が異なっていたことから、ミミズを主食とするアマミヤマシギがミミズの少ない冬もミミズしか食べていないのか、他にどんなものを食べるのか、冬季の食性と生息地(餌を求めて移動するのか)の変化を明らかにしたいそうです。
7月にこの日記で紹介している、いわゆるAY調査(詳細はこちら)は、保護センター職員が道路上で発見したアマミヤマシギや他の野生動物の個体数を目視で数えるというものですが、今回はアマミヤマシギを捕獲するということでしたので、とても緊張していました。
教えていただいたところ、安定同位体比分析に必要な血液と羽毛、DNAメタバーコーディングに必要な糞の採取が目的とのことでした。
「安定同位体比分析」というのは組織(血液や羽毛)に含まれる窒素や炭素の安定同位体の比率からその種が何を食べているのかがある程度推測できるそうです。
「DNAメタバーコーディング」では糞に含まれるDNAを解析することにより、何を食べていたのかがわかるとのことでした。
水田さんは長年、アマミヤマシギの餌となるミミズの調査を通年行った結果、季節によってミミズの発見数が異なっていたことから、ミミズを主食とするアマミヤマシギがミミズの少ない冬もミミズしか食べていないのか、他にどんなものを食べるのか、冬季の食性と生息地(餌を求めて移動するのか)の変化を明らかにしたいそうです。
7月にこの日記で紹介している、いわゆるAY調査(詳細はこちら)は、保護センター職員が道路上で発見したアマミヤマシギや他の野生動物の個体数を目視で数えるというものですが、今回はアマミヤマシギを捕獲するということでしたので、とても緊張していました。
いざ夜の林道へ
調査ではまず、車で林道をゆっくりと走りながら、道路上に出てきているアマミヤマシギを探します。発見した個体は傷つけないように注意しながら網で捕獲します。この夜は目視で確認した8羽のうち、2羽の捕獲に成功しました。
鳥類標識調査の目的
捕獲した個体へは識別のための番号が付いた環境省足環と個体識別のカラー足環3つを付けます。
環境省足環は捕獲しないと個体を識別できませんが、カラー足環があると捕獲しなくても目視だけで識別できるようになります。
このような足環を鳥に付けて放すことで、その後の観察や再捕獲から情報を収集、解析して鳥類の渡りの実態、寿命といった様々な生態についての正確な知識を得ることができ、鳥類の保全施策に役立てられます。なお、足環の装着は、鳥類の識別について十分な知識を持ち、野鳥を安全に捕獲、保定、放鳥する技術を身につけていることを認定された鳥類標識調査員(通称:バンダー)のみが行うことができます。鳥飼さんと水田さんはお二人ともバンダーの資格をお持ちです。
環境省足環は捕獲しないと個体を識別できませんが、カラー足環があると捕獲しなくても目視だけで識別できるようになります。
このような足環を鳥に付けて放すことで、その後の観察や再捕獲から情報を収集、解析して鳥類の渡りの実態、寿命といった様々な生態についての正確な知識を得ることができ、鳥類の保全施策に役立てられます。なお、足環の装着は、鳥類の識別について十分な知識を持ち、野鳥を安全に捕獲、保定、放鳥する技術を身につけていることを認定された鳥類標識調査員(通称:バンダー)のみが行うことができます。鳥飼さんと水田さんはお二人ともバンダーの資格をお持ちです。
車内後部座席にて
次に身体の各部位の計測をします。私は計測値や換羽の観察結果の記録を担当しました。
足環の装着、各部の計測や換羽状況の観察、羽根や血液のサンプリング、糞採取を行なったのち、速やかに優しく放鳥します。
足環の装着、各部の計測や換羽状況の観察、羽根や血液のサンプリング、糞採取を行なったのち、速やかに優しく放鳥します。
調査に参加しての感想
水田さん、鳥飼さんのような専門家でないとできない調査に同行させていただき、ほんの少しですがお手伝いをする機会をいただきました。私にとっては、とても難易度の高い貴重な調査と感じました。どうしてかというと、まずアマミヤマシギと出会って捕獲できる確率はけっして高くはありません。また捕獲してから放鳥までは個体へストレスをかけないよう丁寧に連携して迅速かつ円滑に車内での作業を進行していたことです。充分なスペースとはいえない後部座席は、まるで検査室のようでした。これからも継続していく調査ということですので再度参加したいと思います。
他の業務でも同じ事がいえるのですが、実際に野生生物に出会ったりふれあったりするとやさしい気持ちと嬉しい気持ちが芽生えてきます。
今回紹介をした調査だけでなく、奄美群島国立公園の巡視、密猟・密輸対策、また自然観察、利用影響モニタリングなどの調査に参加し、地域団体や有識者の方々と協働することは、私にとっていろんな知識が吸収できて、とても有意義だと感じています。
アクティブレンジャー日記は初投稿なのですが、環境省で働くことを目指している方に興味を持っていただけるのではと考え、この話題を選びました。拙い文となってしまいましたが最後まで読んでいただきまして、どうもありがとうございます。
他の業務でも同じ事がいえるのですが、実際に野生生物に出会ったりふれあったりするとやさしい気持ちと嬉しい気持ちが芽生えてきます。
今回紹介をした調査だけでなく、奄美群島国立公園の巡視、密猟・密輸対策、また自然観察、利用影響モニタリングなどの調査に参加し、地域団体や有識者の方々と協働することは、私にとっていろんな知識が吸収できて、とても有意義だと感じています。
アクティブレンジャー日記は初投稿なのですが、環境省で働くことを目指している方に興味を持っていただけるのではと考え、この話題を選びました。拙い文となってしまいましたが最後まで読んでいただきまして、どうもありがとうございます。
奄美群島国立公園管理事務所 野中