アクティブ・レンジャー日記
白化現象が見られたサンゴのその後【石垣地域】
2022年09月16日
アクティブ・レンジャー九州地区
みなさん、こんにちは。石垣自然保護官事務所の江川です。前回、八重山地方に台風がなかなか来ず、海水温が高いままの状態が続きサンゴに白化現象が多く見られたことをご紹介しました。(詳しくはアクティブレンジャー日記「サンゴが白化しています」をご覧下さい。)
その後も八重山周辺でサンゴが白化しているという情報が多く寄せられていて、気がかりでしたが、先日台風11号が先島諸島を通過していきました。大型台風の予報で身構えていましたが、陸上での被害はそれほどではなく安心しました。一方、台風通過後の海の中はどうなっているか、再び米原海岸へ巡視に行ってきました。今回は巡視時の確認ポイントを解説しながら、様子をご紹介します。
その後も八重山周辺でサンゴが白化しているという情報が多く寄せられていて、気がかりでしたが、先日台風11号が先島諸島を通過していきました。大型台風の予報で身構えていましたが、陸上での被害はそれほどではなく安心しました。一方、台風通過後の海の中はどうなっているか、再び米原海岸へ巡視に行ってきました。今回は巡視時の確認ポイントを解説しながら、様子をご紹介します。
台風が過ぎた後の海の中は?
台風がやってくると、深い場所の冷たい海水と表面の温かい海水がかき混ぜられ、サンゴのすむ浅い場所の水温が下がります。また、波がかなり強い場合は、砂などがサンゴに覆いかぶさってしまったり、大型サンゴがひっくり返ってしまったり、枝状サンゴが折れてしまうような物理的な破損もあります。さらに、大雨が降った場合は海の塩分濃度が下がり、サンゴが弱ってしまうこともあります。このいくつかの点に注目しながら、今回の巡視を行いました。
サンゴの健康度をどうみる?
健康度を知る手がかりはサンゴの体の色です。サンゴの体の色が薄くなったり、真っ白に見える時は弱っている状態です。高温の影響で白化現象が見られたサンゴが、水温が下がると調子が戻り、サンゴの体の色がもとに戻ることもあります。また、病気になると体の色がまだら模様になります。
- 補足: サンゴの白化現象のことを英語では「bleaching:ブリーチング」と言います。「bleach」には漂白する、脱色するなどの意味があります。色が抜けるというイメージがわかりやすいかもしれません。色素として見えているのがサンゴの体内に共生している褐虫藻(かっちゅうそう)の色です。
台風11号が通過してからの様子
水温は?
7月下旬ごろからサンゴの白化現象が見られるようになり、そこから1ヶ月ほどは天気の良い日が続き、海水温は30度を超えていました。浅瀬に入るとお風呂に入ったようなぬるさを感じました。今回、海に入ると水温計では29度ほどで、以前のようなぬるさは感じませんでした。
サンゴの色は?
一見、色が戻っているように見えますが…
茶色い部分を近くで見てみると…
サンゴの表面に藻が生えています。さらに近くで見るとこのような状態です。
上の方から藻が育っている様子がわかります。これはサンゴが死んでしまって間もないということです。生きたサンゴには藻は生えません。
種類によって白化の進行状況は違い、死んでいるサンゴもいればまだ生きているサンゴもいました。色を保っているものもありましたが、ほとんど白くなっている状況でした。
▲枝のような形、葉っぱのような形をしているサンゴが密集していた場所では白化しているものや、白化して死んでしまい藻が生えてるものが混在していた
サンゴの破損状況は?
大きく破損しているところは見られませんでした。こちらは何年か前の台風で傾いた大きなハマサンゴです。少し白化していますが、傾いたまま今も生きています。
▲以前の大型の台風で影響を受けたハマサンゴ
▲以前の大型の台風で影響を受けたハマサンゴ
雨水が大量に流れ込んでいる様子は?
暴風と雨で砂がかなりけずれて地形が変わっていました。海に向かって川ができていましたが、直接海へつながってはいませんでした。
▲海岸の砂が削られて段ができている様子 ▲海に向かって川が流れている様子
▲海岸の砂が削られて段ができている様子 ▲海に向かって川が流れている様子
サンゴに適した環境は?
サンゴが住みやすい環境は種類によって少しずつ違いますが、適度な水温(25~29度ほど)、適度な日照(晴天の日が多すぎても少なすぎてもいけない)、適度な塩分濃度(3.4~3.6%ほど)です。そのほかに海水の透明度の高さや栄養分などを運んでくれる潮の流れなど様々なバランスが取れていてサンゴの種類も豊富なのが、国内では沖縄周辺の海域です。サンゴに適した環境のはずなのに、近年サンゴは減少傾向にあります。
まとめ
台風が来た影響で水温が下がり、サンゴの白化がやわらいでいたらと願いながら巡視を行いましたが、相変わらず白化しているサンゴが多く、死亡しているものも確認されました。
サンゴが弱る原因は1つだけではなく、複数のことが関わっています。ある報告では、一度白化してその後白化の状態から回復した個体で、それほど高水温でなくても翌年の夏の早いうちから白化がみられることもあったそうです。その年に体の色がもとに戻っているようにみえても、その後もダメージが残っているのかもしれません。一つ一つはたいして大きくないように見えてもいくつかの原因が積み重なりサンゴにとっての大きなダメージになることもあるようです。はっきりと原因がわかっていないことも多いので、今後も引き続き観察をしていきたいです。
サンゴが弱る原因は1つだけではなく、複数のことが関わっています。ある報告では、一度白化してその後白化の状態から回復した個体で、それほど高水温でなくても翌年の夏の早いうちから白化がみられることもあったそうです。その年に体の色がもとに戻っているようにみえても、その後もダメージが残っているのかもしれません。一つ一つはたいして大きくないように見えてもいくつかの原因が積み重なりサンゴにとっての大きなダメージになることもあるようです。はっきりと原因がわかっていないことも多いので、今後も引き続き観察をしていきたいです。