九州地域のアイコン

九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

サンゴが白化しています【石垣地域】

2022年08月09日
石垣 江川博子
みなさん、こんにちは。石垣自然保護官事務所の江川です。こちらは晴れの日が続き夏真っ盛りです。沖縄の夏といえば、台風ですね。しかし、2021年も台風の発生数が少なかったのですが、今年もなかなか台風がやってきません。
 
大雨、洪水、暴風、高波、高潮をもたらす台風は自然災害を引き起こすものとして私たち人間にとってはあまり歓迎されませんが、全く台風が来ないのもサンゴにとっては困りものです。(もちろん大型の台風はサンゴにとっても影響があります。)
 
7月に入り、水深の浅い場所では海水温度が30℃を越すようになりました。そこから1ヶ月ほど経ち、夏休みシーズンで多くの人がにぎわう米原海岸で海の中では異変が起こっています。今回、スノーケリングによる海の中の巡視の際に撮影した写真をご紹介します。


▲ 巡視を行った米原海岸
 

海の中の異変とは!?

大きなハマサンゴがところどころ白くなっています。小さなサンゴも真っ白になっており、遠くから見てもよくわかります。


▲ 大きなハマサンゴ ところどころ白くなっている

白化するサンゴ 白化するサンゴ
▲ 小さなサンゴ さまざまな形のサンゴは本来それぞれ違った色をしているが同じように白くなっている

また、カクレクマノミの相棒のハタゴイソギンチャクも白くなっています。

白化するイソギンチャク
▲白化したイソギンチャクとカクレクマノミ

なぜ白化するの?

全ての種類というわけではありませんが、サンゴやイソギンチャクの体内には褐虫藻という植物プランクトンが共生していて、正常な状態では体の色は茶色く見えます。本来サンゴの体の色は透明で、褐虫藻の色が透けてみえています。
 
写真のようにサンゴが白く見える状態は、サンゴの体内に褐虫藻がいなくなって白い骨格が透けて見えているということです。サンゴは動物で自らエサを採って栄養を摂ることもできますが、いわゆる造礁サンゴと呼ばれる比較的成長の早いサンゴは体内に共生する褐虫藻が光合成によって作る栄養に大部分を頼っています。このままの状態が1ヶ月ほど続いてしまうと残念ながら死んでしまうことがあるので、危険な状態です。(イソギンチャクの方はサンゴほど白化によりすぐに弱ってしまうことはないようです。)
 
サンゴが白化してしまう原因は様々あると言われていますが、一番影響があると言われているのが、30℃を越す高水温によるストレスです。また、強すぎる太陽の光も白化の原因となるようです。

このように水面に近いほど白く、下の方はかろうじて茶色い色が残っています。

グラデーションに白化するサンゴ
▲ グラデーションになって白化している様子

またこちらは、岩からはがれ海底に落ち、白くみえていた枝状のサンゴです。拾って裏をみてみると、裏面には色が残っていました。

白化している枝サンゴ 色がついている枝サンゴ
▲ 落ちている状態で上に向いていた面は白く、裏面には色がついていた
 

これからどうなる?

2016年に高海水温によるサンゴの大規模な白化現象が世界の海で起こり、米原の海でも多くのサンゴが白化により死滅してしまいました。そこから5年ほどたち、徐々に回復していたところでしたが、また大規模な白化現象が起こってしまう兆しがあります。
 
今回、海の中の巡視を行なった米原海岸は遠浅の海でリーフに囲まれていて(※)、海水の交換が行われにくく、海水温が上がりやすい環境です。このまま台風が接近せず、台風が海水をかき混ぜることでもなければなかなか海水温が下がることはないでしょう。台風の到来を待ちつつ、引き続きサンゴの観察を続けていきたいと思います。

※ サンゴが積み重なって成長していくとサンゴ礁(リーフ)という地形ができあがります。特にサンゴ礁の縁にあたる部分はサンゴが高く積み重なり、内側の部分は湖のように波が立ちにくく穏やかな海になります。このことが、サンゴ礁が自然の防波堤と呼ばれる理由になっています。