九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
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やんばる自然保護官事務所の皆藤です。
夏の足音が聞こえてきている昨今、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。
ここやんばるは、梅雨入りから一ヶ月が立ち、夏らしい強い日差しがさす日も増えてきました。
現在、ヤンバルクイナは子育ての真っ最中です。例年この時期は、野生のヤンバルクイナに頻繁に出会うことができます。親鳥はもちろんのこと、ヒナを連れたヤンバルクイナ一家と路上で遭遇することも珍しくありません。
子育てが始まるこの時期は、やんばるの森で元気に暮らす野生のヤンバルクイナを目にすることができてとても嬉しい反面、ヤンバルクイナの交通事故がもっとも増える悲しい時期でもあります。ここ数年、年間通して30~40羽の交通事故が確認されていますが、毎年4・5・6月には交通事故が続発します。交通事故に遭った個体が生きた状態で発見されるのは、年に1件あるかどうかです。路上にて発見・回収される死体の多くには、頭部を強打した痕跡(打撲痕、擦過傷)や、頭蓋骨や足の骨に粉砕骨折が見られ、自動車との衝突、あるいは道路に打ちつけられる衝撃が、直接の死因であることをうかがい知ることができます。
今年の繁殖期には、現在までに合計で6羽の交通事故が確認されていますが、そのうちの1件は、幸いにも生きた状態で発見・救護されました。発見時、この個体は右翼を骨折し衰弱しており、起立・歩行ができない状態でしたが、NPO法人どうぶつたちの病院沖縄にて治療を受けて快方に向かい、発見から14日後には、発見場所付近にて放鳥することができました。放鳥する際には、番号を振った足環を取り付け、ヤンバルクイナの生態解明のための研究に役立てます。
▲治療が終わり、発見場所付近にて放鳥されるヤンバルクイナ(2017年5月26日撮影)
また、この時期は、地元の方々から、草刈り作業中にヤンバルクイナの巣を見つけた、という報告がときどき寄せられます。巣が発見された場合、すぐには保護せず、まずは親鳥が戻って来る可能性を考慮し、ビデオカメラを設置して様子を見ます。
▲草刈り作業中に発見されたヤンバルクイナの巣(2017年5月23日撮影)
▲巣が露出してしまった場合、カラス等の捕食者に見つからないよう草木で隠します(2017年5月23日撮影)
▲離れたところにビデオカメラを設置して、親鳥が戻って来るか確認します(2017年5月23日撮影)
今回は、残念ながら親鳥が戻って来なかったため、放棄されたと見なし、やむを得ず卵を回収し、人工孵化を行うことになりました。卵の救護の場合、卵が冷たいまま放置されるリスクや、カラス等に捕食される可能性を考慮しながら、どのタイミングで卵を回収するか判断しなければならないため、冷静かつ順応的な対応が必要となってきます。
もし、生きたヤンバルクイナを間近でじっくりと観察したい!と思った方は、ぜひ国頭村安田にあるヤンバルクイナ生態展示学習施設を訪れてみてください。人に対してまったく物怖じしないヤンバルクイナのキョンキョンを、ガラス越しではありますが、心ゆくまでじっくり観察できます。
▲ヤンバルクイナ生態展示学習施設で展示されているヤンバルクイナ「キョンキョン」(2017年4月3日撮影)
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アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園、奄美群島国立公園があります。
やんばる自然保護官事務所の皆藤です。
夏の足音が聞こえてきている昨今、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。
ここやんばるは、梅雨入りから一ヶ月が立ち、夏らしい強い日差しがさす日も増えてきました。
現在、ヤンバルクイナは子育ての真っ最中です。例年この時期は、野生のヤンバルクイナに頻繁に出会うことができます。親鳥はもちろんのこと、ヒナを連れたヤンバルクイナ一家と路上で遭遇することも珍しくありません。
子育てが始まるこの時期は、やんばるの森で元気に暮らす野生のヤンバルクイナを目にすることができてとても嬉しい反面、ヤンバルクイナの交通事故がもっとも増える悲しい時期でもあります。ここ数年、年間通して30~40羽の交通事故が確認されていますが、毎年4・5・6月には交通事故が続発します。交通事故に遭った個体が生きた状態で発見されるのは、年に1件あるかどうかです。路上にて発見・回収される死体の多くには、頭部を強打した痕跡(打撲痕、擦過傷)や、頭蓋骨や足の骨に粉砕骨折が見られ、自動車との衝突、あるいは道路に打ちつけられる衝撃が、直接の死因であることをうかがい知ることができます。
今年の繁殖期には、現在までに合計で6羽の交通事故が確認されていますが、そのうちの1件は、幸いにも生きた状態で発見・救護されました。発見時、この個体は右翼を骨折し衰弱しており、起立・歩行ができない状態でしたが、NPO法人どうぶつたちの病院沖縄にて治療を受けて快方に向かい、発見から14日後には、発見場所付近にて放鳥することができました。放鳥する際には、番号を振った足環を取り付け、ヤンバルクイナの生態解明のための研究に役立てます。
▲治療が終わり、発見場所付近にて放鳥されるヤンバルクイナ(2017年5月26日撮影)
また、この時期は、地元の方々から、草刈り作業中にヤンバルクイナの巣を見つけた、という報告がときどき寄せられます。巣が発見された場合、すぐには保護せず、まずは親鳥が戻って来る可能性を考慮し、ビデオカメラを設置して様子を見ます。
▲草刈り作業中に発見されたヤンバルクイナの巣(2017年5月23日撮影)
▲巣が露出してしまった場合、カラス等の捕食者に見つからないよう草木で隠します(2017年5月23日撮影)
▲離れたところにビデオカメラを設置して、親鳥が戻って来るか確認します(2017年5月23日撮影)
今回は、残念ながら親鳥が戻って来なかったため、放棄されたと見なし、やむを得ず卵を回収し、人工孵化を行うことになりました。卵の救護の場合、卵が冷たいまま放置されるリスクや、カラス等に捕食される可能性を考慮しながら、どのタイミングで卵を回収するか判断しなければならないため、冷静かつ順応的な対応が必要となってきます。
もし、生きたヤンバルクイナを間近でじっくりと観察したい!と思った方は、ぜひ国頭村安田にあるヤンバルクイナ生態展示学習施設を訪れてみてください。人に対してまったく物怖じしないヤンバルクイナのキョンキョンを、ガラス越しではありますが、心ゆくまでじっくり観察できます。
▲ヤンバルクイナ生態展示学習施設で展示されているヤンバルクイナ「キョンキョン」(2017年4月3日撮影)