アクティブ・レンジャー日記
島の小学校で出前授業!【屋久島地域】
2016年11月17日みなさん、こんにちは!
屋久島自然保護官事務所の水川です。
今年島内の3つの小学校で合計11回の出前授業を実施し、小学生のみなさんに国立公園や世界遺産、屋久島の自然について学んでもらいました。
今回の日記は、今年実施した出前授業(野外)についての報告です!
教室授業の様子はコチラ↓(7月16日のアクティブレンジャー日記)
http://kyushu.env.go.jp/blog/2016/07/post-214.html
今年の野外授業は、田代海岸や栗生海岸、西部地域へ行きました。
どこも屋久島国立公園で、西部地域は世界自然遺産地域でもあります。
田代海岸では、自然に親しむゲームをしました。
流木やサンゴなど、海岸に落ちている自然のものを集めてまっすぐつなげて長さを競うゲームです。
▲ゲームの様子。長いものを集めた方が有利になるゲームですが、どんなゲームをするのかは秘密にして集めてもらったので、集まったものは大小様々。
貝殻や小さなサンゴを集めた班は短くなってしまい、まっすぐにつなげるのにも苦労していました(^^;)
集めたものは、ゲーム終了後に元の場所に戻してもらいました。
田代海岸には屋久島町の天然記念物になっている枕状溶岩があります。
この枕状溶岩は、はるか昔海底で噴出したもので、プレートにのって運ばれてきたと考えられています。
枕状溶岩の観察を通して、屋久島の地形や地質の面白さを学びました。
▲枕状溶岩の説明をメモする様子。
またレンジャーのお仕事体験として、海岸調査やゴミ拾い、看板清掃をしてもらいました。
▲看板清掃の様子。手の届かないところは肩車をして隅々まで磨いてくれました!
浜で貝殻を採集し、標本作りにも挑戦しました。
▲完成した貝の標本。色んな種類の貝があり、屋久島の海の豊かさを実感しました。
西部地域では、動植物を観察しました。
林内や林道にはたくさんのサルやシカがいて、じっくり観察することができました。
▲林内と林道にいたサルの群れ。バス車内からも観察できました。
また、落ちているサルとシカの糞を拾って沢で洗い、内容物を比べてみました。
サルの糞からは植物の種子がたくさん出てきて、シカの糞からは葉の繊維や少量の種子が出てきました。
「サルは木に登ることができるからシカよりたくさん実を食べられるんだ!」と、子ども達なりに糞の違いについて考えていました。また、植物は動物に実を食べてもらうことで種子を遠くまで運んでもらい、動物は植物から栄養をもらっていることにも気づきました。
▲糞の中身を観察する様子。
西部地域は、世界自然遺産になった理由の一つ、植生の垂直分布が残っている地域です。亜熱帯の海から冷温帯の山の上まで、植物が途切れることなく生えている様子を観察しました。
▲植生の垂直分布を観察する様子。
西部地域で起きているシカの問題についても学びました。
▲植生保護柵の中と外の違いは歴然!?柵の外には下層植生がありません。
これは、増えすぎたシカが植物を食べてしまっていることが原因です。
さらに、今年は出前授業を実施した1校から授業参観の講師に呼んでいただきました。
授業参観前の出前授業で栗生海岸へ行き、様々な生きものを見つけて海岸マップを作ったので、授業参観ではそのマップを使うことにしました。
テーマは「生きものどうしのつながり」です。
海岸マップの生きもの達が何を食べるか考え、エサになる生きものに糸を引いてもらいました。
▲生きものの絵にさしたピンに、糸を結んでつなげていきました。
▲完成した生きものどうしのつながり。海岸で見つけた生きもの達は、複雑につながり合っていることがよく分かりました。
最後は、地球上から生きものが一種いなくなったらと仮定し、生きもののピンを一つ外してみました。
すると、それをエサにしていた生きものにつながり、その生きものもいなくなって...と、ほとんど全ての生きものがつながり合っていて、ピンが抜けていなくなってしまいました。
▲ピンが抜けていく様子。生きものどうしのつながりを知り、たくさんの種類の生きものがいることの大事さやそれらの生きものが生きていける自然環境の大切さを学びました。
授業を通して、屋久島の自然について知り、豊かな自然を体感してもらえたと思います。
レンジャーの仕事体験から、自然を守る取り組みについても理解が深まったのではないでしょうか。授業の最後に「環境省の職員になるにはどうすればいいですか?」と聞く児童もいて嬉しかったです!
今後も島の子ども達に屋久島の自然を大切にしたいと思ってもらえるような授業をしていきたいと思います。