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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

夏の渡り鳥「アジサシ」の子育てを守るために【やんばる地域】

2016年06月01日
やんばる アクティブレンジャー上開地

こんにちは。

やんばる自然保護官事務所アクティブレンジャーの上開地です。

 

沖縄・奄美地域は516日に梅雨入りしました。

この梅雨入りを境に、様々な生き物が夏支度を始めます。

 

夏の渡り鳥である「アジサシ」たちも、梅雨入り前後に子育てのために沖縄へやってきます。

やんばる地域では「ベニアジサシ」と「エリグロアジサシ」の2種類のアジサシが繁殖します。

20130620日の日記もご覧下さい。)

▲左:ベニアジサシ、右:エリグロアジサシ

 

2006年から繁殖状況調査を続けている国指定屋我地鳥獣保護区(以下、屋我地)では、

今年は梅雨入りの少し前の59日に最初のエリグロアジサシがやってきました。

ベニアジサシは例年より少し遅れて528日頃から飛来し始めました。

 

さぁいよいよこれからアジサシ達の子育てが始まります。

屋我地では主に海の岩礁の上で繁殖するのですが、

このような岩礁は、釣りやレジャーをする人達にとっても良い場所になっているようで、釣り竿を固定するパイプや足場が設置されている事があります。

▲エリグロアジサシの繁殖岩礁

 

▲釣り竿を立てる塩ビパイプ

 

岩礁の上は夏の太陽の強い日差しが当たります。

親鳥は卵やヒナが熱で死んでしまわないように日陰を作るのですが、この時に人が近づいてしまうと親鳥が警戒して飛び去ってしまい子育てに失敗してしまうことがあります。

これまでの調査でも、繁殖を放棄した岩礁を調べてみると釣りの餌や蚊取り線香のゴミが落ちていました。

別の岩礁では生まれたばかりのヒナが死亡していました。

そして残念なことに、年々アジサシ達のヒナの巣立ち数や、飛来してくる親鳥の数が減少していて、特にベニアジサシの数が急激に少なくなってきています。

 

 死んでしまったヒナ

▲岩礁に残っていた釣り餌(小エビ)のゴミ       ▲死亡していたエリグロアジサシのヒナ

 

これまではパンフレットや、海岸沿いに看板を立てて注意喚起をおこなっていましたが、昨年からの新たな取り組みとして、繁殖岩礁に簡易看板を設置しています。

  

今年は、屋我地島のひるぎ学園(旧屋我地中学校、小学校が統合)の5年生と一緒に看板を設置しました。

 

 

▲看板設置の様子                   ▲5年生手作りのポスター

 

そして、今年は国内初の試みでベニアジサシのデコイを設置しました。

デコイとは、本物の鳥とそっくりに作った模型の事です。

群れで行動するタイプの鳥は、仲間の姿を見つけると同じ場所に集まる習性があります。

集団繁殖をする希少な鳥たちの繁殖をうながすなど、保全対策の為に使われます。

 

このデコイの色づけも、ひるぎ学園の4~6年生のみんなが協力してくれました。

色づけ デコイの設置

▲デコイの色づけ                  ▲デコイの設置

 

自然や生き物の保全対策をおこなう時、私たち職員だけでは出来ない事がたくさんあります。一番大切で必要なのは、地域の人達の理解と協力です。

今回のベニアジサシの保全対策も、野鳥の専門家からアドバイスをもらったり、地域の人々、学校の協力のもとにおこなう事ができました。

 

6月になるとアジサシ達は産卵を始めます。

初めてのベニアジサシのデコイを使った対策がうまくいくように、みんなでドキドキしながら見守っていきたいと思います。

 

皆さんが海へ遊びに行くときも、海鳥が近くで営巣してないかどうか気を付けながら夏の海を楽しんで下さいね。

 

いつまでも美しい海に、アジサシ達が舞う姿が見られますように...。

 


今月の一枚「アジサシが食べる小魚の群れ(おそらくキビナゴ)」

まるで川の流れの様に形を変えながら泳いでいきました。