2013年7月
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2013年07月10日パークボランティア交流会in長者原 【阿蘇地域】
阿蘇くじゅう国立公園 阿蘇 アクティブレンジャー 田上
7月6日、くじゅうと阿蘇のパークボランティアの会の交流会が開催されました。
パークボランティアの会は、国立公園において自然観察会での解説(自然ガイド)や、施設の美化清掃や簡易な補修などの維持管理作業を一緒に手伝って下さる方々で、阿蘇くじゅう国立公園では阿蘇地域とくじゅう地域それぞれに組織されています。
1つの国立公園内ではありますが、それぞれのパークボランティアの会が一緒に活動をする機会はあまりないので、今回交流の機会を持ちました。
交流会の内容は、くじゅう地域の長者原ビジターセンター周辺での特定外来植物駆除作業と自然観察会で、両地区合わせて約40名の参加がありました。
午前中はビジターセンター内で駆除対象の“オオハンゴンソウ”についての現状や駆除作業範囲等について説明を受け、阿蘇からは、阿蘇地域の特定外来植物の現状についての情報提供を行い、その後、駆除活動を行いました。

つぼみを付けたオオハンゴンソウ
オオハンゴンソウの繁殖力はとても強く、2グラムの根っこが地中に残っているとそこから再生するとのことです。また、種の量も多いので、開花前に駆除する必要があります。
ラムサール条約に登録されているくじゅうのタデ原湿原にもオオハンゴンソウの生育地が拡大してきているようで、湿原を保全するためにも今回はとても重要な作業で、強風や雨が降る中ではありましたが、パークボランティアの方のおかげで目標の範囲を駆除することができ、抜き取った量はゴミ袋約15袋分にもなりました!

抜き取ったオオハンゴンソウ(青い袋)と記念撮影
午後はタデ原湿原の自然観察会の予定でしたが、梅雨末期ということもあり、風・雨・雷が強くなったので、急遽内容を変更し、室内でくじゅうの自然解説ビデオ鑑賞とグループに分かれて意見交換会を行いました。自己紹介に始まり、好きな生きものや日頃の活動内容、自然解説や展示をする際に工夫していることなど話題は多く、刺激ある意見交換会でした。
最後には青空も見えはじめたので、1時間ほどタデ原湿原の観察に行きました!
草っぱらがどこまでも広がる雰囲気は阿蘇に似た風景でしたが、阿蘇は「草原」、タデ原は「湿原」なので観察できる植物も違い、アブラガヤ、ミズチドリ、ノハナショウブ、ハンカイソウなど・・・阿蘇ではあまり見かけない湿地性の植物を見ることができ、阿蘇のパークボランティアさんも記録写真やメモに忙しいようでした。

雨上がりの観察会は風が気持ちよかった
一緒に汗を流し、意見交換や観察会も実施することができ、参考にできる部分もたくさんあり、とても充実した交流会だったと思います。
8日に梅雨も明けて本格的な観光シーズンになり、パークボランティアの活躍の場も増えると思いますので、大いに活躍できることを願っています。
パークボランティアの会は、国立公園において自然観察会での解説(自然ガイド)や、施設の美化清掃や簡易な補修などの維持管理作業を一緒に手伝って下さる方々で、阿蘇くじゅう国立公園では阿蘇地域とくじゅう地域それぞれに組織されています。
1つの国立公園内ではありますが、それぞれのパークボランティアの会が一緒に活動をする機会はあまりないので、今回交流の機会を持ちました。
交流会の内容は、くじゅう地域の長者原ビジターセンター周辺での特定外来植物駆除作業と自然観察会で、両地区合わせて約40名の参加がありました。
午前中はビジターセンター内で駆除対象の“オオハンゴンソウ”についての現状や駆除作業範囲等について説明を受け、阿蘇からは、阿蘇地域の特定外来植物の現状についての情報提供を行い、その後、駆除活動を行いました。
つぼみを付けたオオハンゴンソウ
オオハンゴンソウの繁殖力はとても強く、2グラムの根っこが地中に残っているとそこから再生するとのことです。また、種の量も多いので、開花前に駆除する必要があります。
ラムサール条約に登録されているくじゅうのタデ原湿原にもオオハンゴンソウの生育地が拡大してきているようで、湿原を保全するためにも今回はとても重要な作業で、強風や雨が降る中ではありましたが、パークボランティアの方のおかげで目標の範囲を駆除することができ、抜き取った量はゴミ袋約15袋分にもなりました!
抜き取ったオオハンゴンソウ(青い袋)と記念撮影
午後はタデ原湿原の自然観察会の予定でしたが、梅雨末期ということもあり、風・雨・雷が強くなったので、急遽内容を変更し、室内でくじゅうの自然解説ビデオ鑑賞とグループに分かれて意見交換会を行いました。自己紹介に始まり、好きな生きものや日頃の活動内容、自然解説や展示をする際に工夫していることなど話題は多く、刺激ある意見交換会でした。
最後には青空も見えはじめたので、1時間ほどタデ原湿原の観察に行きました!
草っぱらがどこまでも広がる雰囲気は阿蘇に似た風景でしたが、阿蘇は「草原」、タデ原は「湿原」なので観察できる植物も違い、アブラガヤ、ミズチドリ、ノハナショウブ、ハンカイソウなど・・・阿蘇ではあまり見かけない湿地性の植物を見ることができ、阿蘇のパークボランティアさんも記録写真やメモに忙しいようでした。
雨上がりの観察会は風が気持ちよかった
一緒に汗を流し、意見交換や観察会も実施することができ、参考にできる部分もたくさんあり、とても充実した交流会だったと思います。
8日に梅雨も明けて本格的な観光シーズンになり、パークボランティアの活躍の場も増えると思いますので、大いに活躍できることを願っています。
2013年07月05日太古のえびの高原はどのような姿だったのか? 【霧島地域】
霧島錦江湾国立公園 えびの アクティブレンジャー 日高
つい先日、梅雨の小雨が降りしきるえびの高原で、研究者の方々とえびの高原の環境変遷を知るためにサンプル採取を行いました。
ノカイドウを保全するために環境省の行っている事業の一環ですので、えびの自然保護官事務所も同行しました。
(※もちろん国立公園内なので正式な手続きを済ませて行っている調査です!)

実は、過去のえびの高原になにが生えていたのかよく分かっていないそうです。
何万年前にどの山が噴火したというのは、地層の順番や堆積物から、明らかになっているそうですが、こと植物に関しては全くなのだそうです。
私たちが知っているえびの高原は、アカマツ、ミヤマキリシマ、ススキなどが繁茂していますが、100年前、200年前、300年前、1000年前にどのような植生環境だったのか、何を調べればわかるのでしょう?

なんと地層の中にある植物の化石(植物遺体…分解されなかったものなど)や花粉を調べるのだそうです!!
(私はビックリしました!)
放射性炭素年代測定法という方法で、この地層は2090年前、この地層は2070年前というような細かい年代まで明らかにでき、植物遺体や花粉を分析することによって、当時生育していた植物の種類がわかるそうです。

足下を何十㎝か掘ったら、何百年前の地層が現れることに驚きました。
この調査では、危機に瀕しているノカイドウが本来どのような環境を好み、どのような時期に個体数を増やしていたのか、またどのような環境で生存してきたのかを把握して、ノカイドウを主体としたえびの高原特有の植生を再生させるために役立てられる予定です。
守るべき環境とは、何か?を考えさせられた一日でした。
ノカイドウを保全するために環境省の行っている事業の一環ですので、えびの自然保護官事務所も同行しました。
(※もちろん国立公園内なので正式な手続きを済ませて行っている調査です!)
実は、過去のえびの高原になにが生えていたのかよく分かっていないそうです。
何万年前にどの山が噴火したというのは、地層の順番や堆積物から、明らかになっているそうですが、こと植物に関しては全くなのだそうです。
私たちが知っているえびの高原は、アカマツ、ミヤマキリシマ、ススキなどが繁茂していますが、100年前、200年前、300年前、1000年前にどのような植生環境だったのか、何を調べればわかるのでしょう?
なんと地層の中にある植物の化石(植物遺体…分解されなかったものなど)や花粉を調べるのだそうです!!
(私はビックリしました!)
放射性炭素年代測定法という方法で、この地層は2090年前、この地層は2070年前というような細かい年代まで明らかにでき、植物遺体や花粉を分析することによって、当時生育していた植物の種類がわかるそうです。
足下を何十㎝か掘ったら、何百年前の地層が現れることに驚きました。
この調査では、危機に瀕しているノカイドウが本来どのような環境を好み、どのような時期に個体数を増やしていたのか、またどのような環境で生存してきたのかを把握して、ノカイドウを主体としたえびの高原特有の植生を再生させるために役立てられる予定です。
守るべき環境とは、何か?を考えさせられた一日でした。
2013年07月04日シカ増加とその影響 【くじゅう地域】
阿蘇くじゅう国立公園 くじゅう アクティブレンジャー 指原
みなさんシカは好きですか?
シカと言えば、古くから神の使いとも言われ、奈良公園のものが有名ですね。
日本にいるシカは、ニホンジカですが、地域によって体の大きさなどに違いがあり、大きく7つの亜種に分類されています。
九州本土にいるものはキュウシュウジカ、ちょっと離れた屋久島のシカはヤクシカ、本州産はホンシュウジカ、北海道産はエゾシカというようなものです。
このシカがいま全国的に増えており、くじゅう地域もその例外ではありません。
ここで一枚の写真を見てください。

6月初旬に別府市の鶴見岳で撮ったものです。
森の中の様子について、何か違和感を感じませんか?
①森の地面に草がほとんどない
②同じ高さで樹木の葉がなく、先まで見通せる
③樹木の皮がはがれている
これはすべてシカが葉や樹木の皮を食べる「食害」によるものです。
シカは一定の範囲で数が増えすぎると、一気にその場所の植物を食べ尽くします。その結果、表土が露出、雨で土が流されて土石流の発生を誘引し、山が壊れていきます。
森が先まで見通せるのは、シカが頭を伸ばせる高さで樹木の葉を食い尽くしたからです。
森は結果的にシカの嫌いな植物だけが残ってしまい、生きものの多様性が失われます。

その例が、写真のマツカゼソウ(ミカン科)です。
匂いが強いせいかシカは苦手とし、辺りに群落が確認できました。
ただ、嫌いな植物だけが残ってしまうと、ついにシカはそれをも食べ始めるそうです。この適応力の高さには驚きです。
鶴見岳では5年ほど前からシカがよく目撃されるようになりました。
そして、わずか数年で自然環境は変質しました。
昨年の夏の豪雨では、鶴見岳は土石流に見舞われました。
下草がなくなり、森の保水力が低くなると、災害も発生しやすくなります。
シカによる食害は、自然だけではなく、私たちの生活にも影響を及ぼしかねないものです。
ところで、くじゅう連山でも近年シカが増えているという話をよく耳にします。

先日、長者原~坊ガツルルートの途中にある雨ヶ池周辺で、シカの食害を発見しました。ノリウツギ(ユキノシタ科)という低木の葉が食べられており、近くにはフンもありました。
シカが増えた理由は、ハンターの減少や植林による餌場の拡大など、諸説あります。くじゅうでは現在、食害は鶴見岳ほどひどくないですが、短期間で進むことから大きな脅威です。
くじゅう地域のシカ対策については、今年度から関係機関と連携して進めていく予定です。登山道の巡視などでも注意深く情報収集する必要があります。
シカと言えば、古くから神の使いとも言われ、奈良公園のものが有名ですね。
日本にいるシカは、ニホンジカですが、地域によって体の大きさなどに違いがあり、大きく7つの亜種に分類されています。
九州本土にいるものはキュウシュウジカ、ちょっと離れた屋久島のシカはヤクシカ、本州産はホンシュウジカ、北海道産はエゾシカというようなものです。
このシカがいま全国的に増えており、くじゅう地域もその例外ではありません。
ここで一枚の写真を見てください。

6月初旬に別府市の鶴見岳で撮ったものです。
森の中の様子について、何か違和感を感じませんか?
①森の地面に草がほとんどない
②同じ高さで樹木の葉がなく、先まで見通せる
③樹木の皮がはがれている
これはすべてシカが葉や樹木の皮を食べる「食害」によるものです。
シカは一定の範囲で数が増えすぎると、一気にその場所の植物を食べ尽くします。その結果、表土が露出、雨で土が流されて土石流の発生を誘引し、山が壊れていきます。
森が先まで見通せるのは、シカが頭を伸ばせる高さで樹木の葉を食い尽くしたからです。
森は結果的にシカの嫌いな植物だけが残ってしまい、生きものの多様性が失われます。

その例が、写真のマツカゼソウ(ミカン科)です。
匂いが強いせいかシカは苦手とし、辺りに群落が確認できました。
ただ、嫌いな植物だけが残ってしまうと、ついにシカはそれをも食べ始めるそうです。この適応力の高さには驚きです。
鶴見岳では5年ほど前からシカがよく目撃されるようになりました。
そして、わずか数年で自然環境は変質しました。
昨年の夏の豪雨では、鶴見岳は土石流に見舞われました。
下草がなくなり、森の保水力が低くなると、災害も発生しやすくなります。
シカによる食害は、自然だけではなく、私たちの生活にも影響を及ぼしかねないものです。
ところで、くじゅう連山でも近年シカが増えているという話をよく耳にします。

先日、長者原~坊ガツルルートの途中にある雨ヶ池周辺で、シカの食害を発見しました。ノリウツギ(ユキノシタ科)という低木の葉が食べられており、近くにはフンもありました。
シカが増えた理由は、ハンターの減少や植林による餌場の拡大など、諸説あります。くじゅうでは現在、食害は鶴見岳ほどひどくないですが、短期間で進むことから大きな脅威です。
くじゅう地域のシカ対策については、今年度から関係機関と連携して進めていく予定です。登山道の巡視などでも注意深く情報収集する必要があります。
2013年07月02日西表石垣国立公園標識の塗装【石垣地域】
西表石垣国立公園 石垣 アクティブレンジャー 仲本
沖縄は、これから台風が多くやってくる季節になりますので、台風対策は万全に。
今回、石垣島に設置してある西表石垣国立公園標識の塗装を行ってきましたので、ご報告します。
石垣島には、野底マ-ペ-と呼ばれる山があり、登るルートが2つあります。1つめの野底集落の山林から登る片道約1時間のルートと、2つめの野底集落と伊野田集落をつなぐ林道の間にある登山道から登る片道約15分のルートがあります。山頂は気持ちいい風が吹いており、見晴らしが良く、サンゴ礁と白い砂浜や水平線が一望できる石垣島のすばらしいスポットです。
野底マ-ペ-と呼ばれる由来は、むかし、土地の開墾のため黒島から野底集落へ強制移住させられた人々がいました。その移住者にマ-ペ-と呼ばれる娘がおり、黒島に残された恋人を思い野底岳に登ったが、石垣島にそびえ立つ沖縄県最高峰の於茂登岳にさえぎられ、黒島の姿さえも見えず、マ-ペ-は絶望のあまり山頂で石になったという伝説があり、このように呼ばれているそうです。

標高282.4mの野底マ-ペ-(野底岳とも呼ばれています)
その野底マ-ペ-に続く林道に設置してある西表石垣国立公園の入口標識を塗装しました。林道内は湿度が高く、木材で建てられた標識は、数年の間にカビが付着していたほか塗っていた塗料も剥がれていた状況だったため、防腐・防カビ・防虫のための塗装と標識付近の草刈りを行ってきました。

西表石垣国立公園の標識塗装
標識塗装後、塗装前と見比べて色が明るくなり、標識周辺の草刈り効果で視認性も高くなったため来訪者にも国立公園を意識してもらえると思います。馴れない塗装作業で服や靴に塗料が付着し、洗濯しても落とせなく落ち込むこともありましたが、うまく塗装が出来きました。石垣島には、貴重な自然が見られるいくつかのスポットに案内標識が設置されており、これらの標識等公園内の施設の点検・整備もアクティブレンジャーの大事な仕事のひとつです。
標識付近で面白いチョウを撮影しましたのでご紹介します。撮影したのは、リュウキュウヒメジャノメと呼ばれるチョウでした。琉球諸島に生息し、八重山では2月~12月の長い期間でこのチョウが見られます。蛇の目のような模様は、天敵である鳥等の捕食者の目をくらます効果があり、鳥が眼状紋の部分を突いても体本体の損傷を回避して逃げることができるそうです。

蛇の目模様の側に白い太線があるのが特徴のリュウキュウヒメジャノメ
今回、石垣島に設置してある西表石垣国立公園標識の塗装を行ってきましたので、ご報告します。
石垣島には、野底マ-ペ-と呼ばれる山があり、登るルートが2つあります。1つめの野底集落の山林から登る片道約1時間のルートと、2つめの野底集落と伊野田集落をつなぐ林道の間にある登山道から登る片道約15分のルートがあります。山頂は気持ちいい風が吹いており、見晴らしが良く、サンゴ礁と白い砂浜や水平線が一望できる石垣島のすばらしいスポットです。
野底マ-ペ-と呼ばれる由来は、むかし、土地の開墾のため黒島から野底集落へ強制移住させられた人々がいました。その移住者にマ-ペ-と呼ばれる娘がおり、黒島に残された恋人を思い野底岳に登ったが、石垣島にそびえ立つ沖縄県最高峰の於茂登岳にさえぎられ、黒島の姿さえも見えず、マ-ペ-は絶望のあまり山頂で石になったという伝説があり、このように呼ばれているそうです。

標高282.4mの野底マ-ペ-(野底岳とも呼ばれています)
その野底マ-ペ-に続く林道に設置してある西表石垣国立公園の入口標識を塗装しました。林道内は湿度が高く、木材で建てられた標識は、数年の間にカビが付着していたほか塗っていた塗料も剥がれていた状況だったため、防腐・防カビ・防虫のための塗装と標識付近の草刈りを行ってきました。

西表石垣国立公園の標識塗装
標識塗装後、塗装前と見比べて色が明るくなり、標識周辺の草刈り効果で視認性も高くなったため来訪者にも国立公園を意識してもらえると思います。馴れない塗装作業で服や靴に塗料が付着し、洗濯しても落とせなく落ち込むこともありましたが、うまく塗装が出来きました。石垣島には、貴重な自然が見られるいくつかのスポットに案内標識が設置されており、これらの標識等公園内の施設の点検・整備もアクティブレンジャーの大事な仕事のひとつです。
標識付近で面白いチョウを撮影しましたのでご紹介します。撮影したのは、リュウキュウヒメジャノメと呼ばれるチョウでした。琉球諸島に生息し、八重山では2月~12月の長い期間でこのチョウが見られます。蛇の目のような模様は、天敵である鳥等の捕食者の目をくらます効果があり、鳥が眼状紋の部分を突いても体本体の損傷を回避して逃げることができるそうです。

蛇の目模様の側に白い太線があるのが特徴のリュウキュウヒメジャノメ
さて、夏まっしぐらとなる6月29日(土)、真栄里海岸にて職員とパークボランティア(PV)でスノーケルの練習会を行いました。石垣自然保護官事務所では毎年2度、「海の自然教室」と題してスノーケルを使った観察会を開催しています。この観察会を企画する私たち、そしてお手伝いいただくボランティアさんに求められるのが安全管理の知識と技術です。事故を未然に防ぐよう努め、事故が発生してしまった場合は冷静で早急な対応が求められます。職員は毎年1度の救命講習を受講していますが、すべてをマスターすることはなかなか難しいものです。そこで今回は過去に受けた講習内容を振り返り、特に重要な初期対応の練習会を行いました。
参加者は職員3名、PV2名の計5名。復習も兼ねて進行を行う私にはちょうど良い人数です。2名のボランティアさんは、日頃から海に出かけることがあり、友人に石垣の海を案内することもあるために参加してくださいました。
初めに行った講習は、要救助者がパニックに陥った状態で浮き輪やレスキューチューブを用いて救助する方法です。相手が溺れてパニックになっている場合、慌てて近寄るとつかみかかられ、二人とも溺れてしまう可能性があります。そのため救助の際はまずは浮き輪を渡して落ち着かせます。要救助者が落ち着いたら、状態を確認しながら岸へ戻ります。浮き輪を使った救助訓練の後は、救助者の状態を確認しながらの泳ぎ方や海岸から引き上げて人工呼吸を行う際の注意点など、一連の流れを確認しました。
写真1.レスキューチューブを使った救助訓練
写真2.練習の様子を参加者に見てもらい、改善点などを話し合いました。
今回の練習会では参加者同士で積極的に確認し合い、もう一度練習するなど少人数ならではの意見交換が行われ、充実した時間となりました。私自身も今回の練習会を企画し、事前に練習することで技術をきちんと身につけることができました。
ここで無事に練習会終われば良かったのですが、最後にハプニングが発生してしまいました。こちらもご報告します。
私たちが主催する観察会や練習会では遠くに行きすぎないよう、目印のためにブイを浮かべています。練習後にブイを撤去し、そのまま潮の流れに乗って海岸に戻っていると、不意に頬から唇にかけて電流を流されたような激痛が走りました。何が起こったのかとよく目を凝らすと、小さく透明な浮き袋と鮮やかなブルーの触手。カツオノエボシ(※)です。この日は満潮で風が強かったため、外洋から流れてきたようです。
何が起こったか理解した途端、恥ずかしながら軽くパニックに陥りマスクを外してしまいました。既に足の付く場所だったので立ち上がり冷静さを取り戻しましたが、これが足の付かない場所だったら、落ち着きを取り戻せなかったら・・・考えるとゾッとします。救助の練習をしたその日に私が要救助者になるところでした。ウェットスーツを着ていたことで過信していたのかもしれません。反省です。
写真3.打ち上げられたカツオノエボシ。指のサイズと見比べて小さいことがわかります。(過去の職員が撮影)
海には危険な生物もたくさんいます。6月から9月までは沖縄県より「ハブクラゲ注意報」が発令されるなど注意が呼びかけてられていますが、毎年必ず被害者が出ています。
これから私は、この経験を生かしてとしても皆さんに注意を強く呼びかけたいと思います。一人では海に行かず、危険生物の対処法について知識を身に付けましょう。野外へ出かける際はできるだけ肌の露出は控えましょう。海や山へ出かける際には注意事項を確認し、予防措置を取りましょう。小さな過信が大きな事故へ繋がらないよう、楽しいレジャーをお楽しみください。
※カツオノエボシ
全長10cm~30cm程度。透明または青白い浮き袋を持ち、浮き袋からは長い触手が伸びている。自身に泳力はなく、海面を漂いながら風や潮の流れに乗って移動する。浮き袋は風を受ける帆の役割を持つが、しぼませて海中へ沈むこともある。肉食で、触手に触れてショック死した小魚などを食べる。人が刺された場合、電流が走ったような痛みに襲われる。2度目以降に刺されるとアナフィラキシーショックを起こす場合があり、まれに死亡するケースもある(日本での死亡例はない)。
海岸で打ち上げられている個体を発見しても、しばらくは刺胞が残っているためいたずらしないこと。刺された場合は、海水で触手を落とし、氷水で冷やすこと。ハブクラゲの対処法とは異なり、酢を使用してはいけません!(一部沖縄県HPより抜粋)