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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

まだまだ勉強中~追跡調査前編~

2025年03月16日
対馬 金子 涼太朗
みなさまこんにちは。対馬自然保護官事務所の金子です。

今回はヤマネコの追跡調査(の練習)について紹介いたします。

追跡調査とは

追跡調査に使う受信機。受信機のチャンネルを発信機の周波数と合わせ、2種類のアンテナを付け替えながら使用します。
 追跡調査とは、保護されたヤマネコを放獣(自然にかえすこと)する際に、ヤマネコの首輪に発信器を取り付け、放獣後一定期間ヤマネコの位置情報を追いかける調査です。位置情報が分かれば、ヤマネコの野生下での行動データを得られるほか、放獣後の健康状態を確認するために再度捕獲する「検査捕獲」も実施できます。保護時に怪我をしていて、放獣後の経過観察をしたい場合や、幼くして保護され、狩りの技術が未熟な可能性がある場合など放獣後の状態を確認したい場合に、特に有効な調査です。
 現在、対馬野生生物保護センターでは3頭のヤマネコを保護収容しており、今後放獣の際に追跡調査を実施する可能性があります。私自身は先輩方の残してくれた資料や文献で知識は持っているのですが、実践で追跡調査をしたことがまだありません。そこで調査に向けて現在練習をしています。

調査に必要な道具

受信機

電波が受信できると音が鳴るとともに、画面のメーターに反応があります。
 発信器からの電波を受信してくれます。ただし、発信機の電波は半径1km程度までしか届かなく、位置情報をとるためには、ヤマネコの発信器の範囲内まで移動する必要があります。1km程度と記載しましたが、発信器との間に高低差や山や木などの障害物がある場合、より範囲は狭まる可能性もあります。

車載アンテナ

車載アンテナは写真のように車の上部に取り付けて使用します。
 このアンテナを車の上に取り付け、島内を走り回ることで発信器の範囲内に入った際に受信機に反応があります。

八木アンテナ

八木アンテナ。写真上部方向に電波を受信します。
 このアンテナは中央の一番太い棒の縦方向(わずかだが真後ろにも反応してしまうので注意)の電波を受信します。車載アンテナで発信器の大まかな位置を特定し、八木アンテナで計測地点からの発信器のある方向を特定します(図参照)。
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図 各アンテナの受信域のイメージ

コンパスグラス

コンパスグラス。覗いた方角が正確に分かります。
 八木アンテナの差し示す方角を記録するのに使います。
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レンズを覗き真ん中の線と下の目盛りの交点が今向いている方角です。写真の場合349°を示しています。

GPS

 計測する現在地の位置情報を記録するのに使います。今はケータイ電話のアプリでも位置情報が取得できるので代用可能です。

地図、作図道具、筆記用具

作図道具。
 計測結果を地図に記載し、発信器がどこにあるかを記録します。

追跡調査の手順

 
車載アンテナと受信機で発信器の電波を受信できる範囲へ移動
計測地点を定め、アンテナを八木アンテナへ付け替えて一番受信の反応が強い方向を探す
方向が決まったら、GPSとコンパスグラスを用いて、計測時刻、位置情報、計測位置から発信器への方角を記録する
①~③の作業を場所を変えて計3カ所行う
次回は実際の計測の様子と地図を使い発信器の位置を割り出していきます。
後編へ続く

対馬自然保護官事務所 金子