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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

交通事故を防ぐための構造物をツシマヤマネコは利用しているのか

2024年10月15日
対馬 森田 夕貴
こんにちは。
対馬自然保護官事務所の森田です。
 
対馬自然保護官事務所(対馬野生生物保護センター)では、ツシマヤマネコの交通事故が多く発生している地域を中心に長崎県や対馬市などと協力をして、ツシマヤマネコの交通事故を防ぐための構造物設置をおこなっています。
今回は、この構造物の効果をみるために自動撮影カメラを使用して実施しているモニタリング調査についてご紹介します(写真①)。
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写真①:カルバートのモニタリング用に設置している自動撮影カメラ
ツシマヤマネコは河川を移動経路や餌場として利用しています。森林から道路を挟んで河川がある場所や、河川を交差するように走る道路は、ツシマヤマネコが道路上を移動しやすく、交通事故が発生しやすい場所です。このような場所にある道路の下には、河川の水を流すためにカルバートと呼ばれるコンクリート製のバイパスのような構造物が設置されています。これまでのモニタリング調査から、カルバートがある場所では、ツシマヤマネコなどの野生生物がカルバートを利用していることがわかっています。しかし、雨が降った後などにカルバート内の水かさが増すと、カルバートが利用できなくなり、野生生物が道路上を移動する可能性が高くなります。そこで、増水時でもカルバートを利用できるように、カルバートの中にネコ走りと呼ばれる段差が設置してあります。
ネコ走りがあるカルバート付近に設置している自動撮影カメラのデータを確認すると、ツシマテンが写っていました(写真②)。
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写真②:カルバートのカメラに写っていたツシマテン
また、これまでにツシマヤマネコの交通事故が複数回発生している場所には、ツシマヤマネコが道路に飛び出さないように道路脇にワイヤーメッシュ柵が設置してあります。このワイヤーメッシュ柵付近のカメラデータを確認すると、ツシマヤマネコが写っていました(写真③)。このワイヤーメッシュ柵付近のカメラには毎年、ツシマヤマネコが写っていますが、ワイヤーメッシュ柵設置以降、ツシマヤマネコの交通事故は発生していません。
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写真③:ワイヤーメッシュ柵付近のカメラに写っていたツシマヤマネコ
対馬自然保護官事務所では、ツシマヤマネコの交通事故対策として、今後も設置した構造物がツシマヤマネコに利用されているのか、利用されている場合どのように利用しているのかの確認をおこなうためにこのモニタリング調査を続けていく予定です。
対馬自然保護官事務所 森田夕貴