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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

ツシマヤマネコの生息環境を守ることにつながる防鹿柵設置

2024年09月13日
対馬 森田 夕貴
こんにちは。
対馬自然保護官事務所の森田です。
 
9月3日に、対馬市にある国指定舟志ノ内鳥獣保護区で、大正大学の学生と防鹿柵を設置しました。
この防鹿柵設置の目的は、現在下草がほとんど生えていない場所を囲い、柵内の植生変化をみて、ニホンジカが植生に与える影響を調査することです。

まず、生態系保全等専門員が設置をする場所や、杭を地面に打つ方法、杭と柵を番線で固定する方法などの説明をおこないました。
あ
杭の打ち方を説明する生態系保全等専門員
その後、重たい杭打機を使って地面に杭を打ち込み、杭の横に高さが2mほどある柵を並べ、杭と柵を番線で固定して、柵の横に新たな杭を打ち、杭の横に柵を並べといった地道で大変な作業を約1時間半繰り返し、総延長約30mの防鹿柵設置が完了しました。
防鹿柵設置を手伝ってくださった大正大学のみなさま、誠にありがとうございました。
あ
杭と柵を番線で固定する様子
あ
設置した防鹿柵
この記事をご覧いただいている方の中には、ツシマヤマネコの保護や調査、普及活動などを主におこなっている対馬自然保護官事務所(対馬野生生物保護センター)がなぜ、防鹿柵設置をおこなうの?と思われる方がいるかもしれません。
ツシマヤマネコは、ネズミやカエル、昆虫などを食べる動物食性で、ネズミやカエル、昆虫などは、下草がある環境に暮らしています。対馬島内では、推定45,000頭もいるニホンジカの影響で、下草が無くなり(下層植生が衰退し)、生態系の劣化や農林業被害が深刻になっています。ニホンジカの影響で下草が無くなると、ツシマヤマネコの餌となる生物がいなくなってしまうかもしれません。すると、いずれツシマヤマネコもいなくなってしまうかもしれないのです。防鹿柵設置は、ツシマヤマネコの餌となる生物の生息環境を守ること、すなわちツシマヤマネコの生息環境を守ることにつながっているのです。
対馬自然保護官事務所 森田夕貴