アクティブ・レンジャー日記
九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。
出会いの夏
2024年08月05日
対馬
こんにちは。太陽に肩を焦がされて、冷シャワーしか浴びられない南です。ガス代の節約になります。
人は春を出会いの季節と言いますが、夏こそ自然が様々な生き物で賑わう、素晴らしき出会いの季節と私は言いたいです。ということで今回は、この夏、ヤマネコ調査中や事務所の周辺で出会った対馬にいる生き物たちを紹介していきます。
人は春を出会いの季節と言いますが、夏こそ自然が様々な生き物で賑わう、素晴らしき出会いの季節と私は言いたいです。ということで今回は、この夏、ヤマネコ調査中や事務所の周辺で出会った対馬にいる生き物たちを紹介していきます。
ツシマヒラタクワガタ Dorcus titanus castanicolor
ヤマネコ調査のルート上を歩いていると、道路上に黒光りするモノが。よく見ると対馬の夏の主人公、ツシマヒラタクワガタのオスでした。対馬ではよく見られるクワガタムシです。ヒラタクワガタの亜種で、日本に生息するクワガタムシの中で体長が最も大きい種になります。この子は50mmちょっとなので並サイズといったところでしょうが、稀に80mmを超える個体もいるそうです。真っすぐ伸びた長い顎が特徴です。とっても力強く魅力的なので試しに挟まれてみたところ、本気で痛くて、指の肉がしばらく窪みましたので、くれぐれも真似はしないでください。
ツシマナメクジ Meghimatium sp.
野生の明太子でおなじみ、ツシマナメクジ。ヤマネコ調査ルートのある山で見つけました。湿気のある場所を好みます。梅雨時期はよく出てきて観察しやすい気がします。対馬固有種です。日本でナメクジと言えば、チャコウラナメクジなんかがポピュラーかと思いますが、この子のビジュアルときたら、鮮烈なファイヤーレッドの身体にコントラストの効いた黒い触覚がかなり衝撃的です。島外の友人には、どこの国の生き物だとか、絶対に毒持ちだとか言われましたが、全くそんなことはありません。が、ナメクジには広東住血線虫というこわーい寄生虫がいるかもしれませんので、触らないようにしましょう。
シイノトモシビタケ Mycena lux-coeli
事務所の目の前にある龍良山では6月頃に光るキノコが見られます。その1つがシイノトモシビタケ。スダジイなどの朽ち木に生えてきます。結構ぼんやりやわらかな発光ですが、実際に近くで見るととても神秘的で、そこはかとなくジ○リを感じます。梅雨時期、雨が続いた後はよく光ります。夜の山は危ないので、事前にスポットを調べておく、できれば慣れている人と行くなど安全には気を付けて観察しましょう。
アキマドボタル Pyrocoelia rufa
シイノトモシビタケを探していると、朽ち木の無いところに一点の光が。アキマドボタルの幼虫でした。お世辞にも可愛いとは言い難いルックスですが…幼虫でも弱いながらちゃんと光ります。日本では対馬にのみ生息する大陸系のホタルです。9月~10月頃には成虫が飛んでいる様子が観察できます。「マド」たる所以は成虫の前胸部の背板。窓のように半透明になっている部分があります。平成初期~中期のスケルトンブームを想起させ、何だか懐かしい気分になりますね。
ツシマスベトカゲ Scincella vandenburghi
とあるヤマネコ調査のルートにツシマスベトカゲの赤ちゃんが沢山いました。(写真は成体のツシマスベトカゲです)5~6月頃に卵を産むので、丁度今の時期は幼体が見られますが、小さい上に逃げ足が非常に早く、中々写真が撮れませんでした。名前の通り光沢のあるツルスベお肌の小さな体はなんとなく江ノ島で食べた生しらすを思い出します。日本では対馬にのみ生息しています。
アムールカナヘビ Takydromus amurensis
ツシマスベトカゲがいたルートを歩いていると、カサカサ音が。立派なアムールカナヘビでした。この日は調査日和の快晴だったので、日光浴でもしていたのでしょうか。アムールカナヘビは日本では対馬にしかおらず、対馬にいるトカゲの仲間はツシマスベトカゲとこのアムールカナヘビの2種のみになります。「アムール」とはロシア南東部の地名であり、対馬以外ではこの地域や中国北東部~朝鮮半島に生息する大陸系の種です。
実はツシマヤマネコも、「ベンガルヤマネコ」という種の、「アムールヤマネコ」という亜種の、「ツシマヤマネコ」という対馬にいるグループになり、大陸から移動してきた生き物だと分かりますが、このへんは少々ややこしいのでまた別のお話ということで…
実はツシマヤマネコも、「ベンガルヤマネコ」という種の、「アムールヤマネコ」という亜種の、「ツシマヤマネコ」という対馬にいるグループになり、大陸から移動してきた生き物だと分かりますが、このへんは少々ややこしいのでまた別のお話ということで…
以上、夏に出会った対馬の生き物たちでした。実際はもっともっと多くの生き物に出会っているのですが、全て紹介すると大長編になってしまいますので、対馬でしか出会えない生き物と夏でこそ見られる生き物たちを厳選して紹介しました。まだまだ夏は続きます。対馬に来た際には探してみてはいかがでしょう。