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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

東山動植物園でヤマネコが生まれました!

2024年06月26日
対馬 千原 悠斗
こんにちは!対馬厳原事務室(ツシマヤマネコ野生順化ステーション)の千原です。
今回はツシマヤマネコに関連する嬉しいニュースをお届けします!
ツシマヤマネコは長崎県対馬市に生息しているベンガルヤマネコの仲間で、ヤマネコにとって生活のしやすい自然環境の減少や交通事故などが原因で生息数は100頭ほどと推定されています。

そのような状況から、絶滅のおそれのある野生動植物種の種の保存に関する法律(種の保存法)の国内希少野生動植物種に指定されており、ツシマヤマネコが自然状態で安定的に生息できることを目指し、保護増殖事業を実施しています。

その一環で、日本動物園水族館協会と連携して、絶滅を防ぐための保険としての個体群の維持などを目的とした生息域外保全を進めており、国内の動物園等において飼育下繁殖、周知を目的とした展示などが行われています。

↓生息域外保全について
生息域外保全について | 自然環境・生物多様性 | 環境省 (env.go.jp)
↓令和5年から令和6年にかけての飼育下繁殖について
令和5年ー6年ツシマヤマネコ飼育下繁殖計画の決定について(お知らせ) | 九州地方環境事務所 | 環境省 (env.go.jp)


連携している施設のうち、名古屋市東山動植物園で2ペアの繁殖が成功し、新たに5頭のツシマヤマネコの赤ちゃんが産まれました!!
 

繁殖に成功したヤマネコをご紹介!

1ペア目は今回で3回目の出産となるメスのレイラと1年前に対馬野生生物保護センターに保護されていたオスのBeny Sumo(ベニー スモ)です。
5月9日に3頭の赤ちゃんが生まれました!
 ▲子育て中のレイラ
仔猫といえど、ヤマネコらしい額から頭部にかけての縦縞模様がしっかりと見えますね。
レイラは過去2回の出産ともに、帝王切開による出産でしたが、3度目にして初の自然分娩での出産となりました。
レイラにとって、子育て自体も初めての経験ですが、しっかりと仔猫たちのお世話をしているようです!
 ▲保護時のベニー
父親のベニーは対馬の「洲藻」という地域で、足をひきずっているヤマネコがいると通報を受け、保護を行ったヤマネコです。
左前肢のケガはシカやイノシシを捕まえるためのくくり罠にかかってしまったことが原因と考えられており、保護当時には既に骨が見えるほど足を負傷していました。
足の欠損から野生に帰すことはできませんでしたが、足を欠損した個体としては繁殖に貢献した第一例となりました。


2ペア目はツシマヤマネコ野生順化ステーションで飼育されていたメスのりんと、オスの勇希です。
5月24日に2頭の赤ちゃんが生まれました!
勇希は今回の繁殖で5頭ものヤマネコのお父さんとなり、りんにとっては初めての出産です。
あ
   ステーションで飼育時のりん
あ
   子育て奮闘中
りんは昨年1月に福岡市動物園からツシマヤマネコ野生順化ステーションに移動して、野生復帰技術開発のために野生順化訓練を受けていました。

野生復帰とは、生息域外におかれた個体を自然の生息地(過去の生息地を含む)に戻し、定着させることであり、ヤマネコの絶滅を回避するための選択肢の1つです。
ツシマヤマネコ野生順化ステーションでは、将来的に野生復帰が必要になった場合に備えて、飼育下繁殖個体を用いた野生復帰技術開発を行ってきましたが、りんも野生順化訓練に挑戦した一頭です。
野生順化訓練では、ネズミや鳥などの野生のヤマネコが捕食する生き物を自力で捕まえる力など、自然界で生きていく上で必要な能力を養います。
訓練をしているなかでヘビをなかなか捕らえることができず、攻撃をしかけるも反撃を喰らうなど、色々と苦労をしていたりんの様子が思い出されます。

その後、りんは繁殖のため、昨年12月に東山動植物園に移動していました。
 
出産経験の無いりんでしたが、無事に出産を終え、落ちついて仔猫の面倒を見ているようです。
 

今回生まれた5頭の仔猫ちゃん達の成長が楽しみですね!