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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

アマミノクロウサギのフンを調査!

2024年03月05日
奄美 白石大晴
うがみんしょ~らん!
 
奄美野生生物保護センターの白石です。
今回のアクティブレンジャー日記は、「沢におけるアマミノクロウサギのフン粒数調査」(以下、フン調査)についてご紹介します。
こちらの調査は、アマミノクロウサギが生息している奄美大島と徳之島において、毎年1月~2月にかけて実施しており、今年も2月末で無事調査を終えることができました!
 
現在、奄美大島で21本、徳之島で20本、合計41本の調査ルート(沢)が設定されており、全てのルートで毎年調査を行なっています。
調査の方法は、沢を下流から上流に向って歩きながらアマミノクロウサギのフンを探して、見つけたフンの数や新鮮さ、フンの大きさからそれが成獣か幼獣かなどを記録するというものです。
フンを探すという一見地味な調査に思えるかもしれませんが、アマミノクロウサギの生息状況や繁殖状況を把握するための大事な調査です。さらに、普段入らないような山の奥深いところでの調査が多く、島の自然を堪能できます。
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ある日の調査風景
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安全のためにルメットや胴長を着用
下の写真に写っているのがアマミノクロウサギのフンです。
植物食のため匂いはあまり無く、形はまん丸、色は黒かったり茶色かったりします。
調査が始まるとみんな下を向いて一生懸命にこのフンを探しながら沢を登っていきます。
アマミノクロウサギはずんぐりしていて一見動きが鈍そうにも見えますが、人が登るのも大変な大きな岩の上や、川の中にある石の上など、どうやって渡ったのか不思議な場所にもよくフンをするので、意外とパワフルなウサギということが分かります。
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アマミノクロウサギのフン
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フンを数えているところ
【調査結果】
各年のフン調査における各ルートのフン粒数の確認頻度(100m当たりのフン粒数)をエリアごとにグラフで表したものが下の2つの図になります。
こちらの図を見てみると調査開始当時と比較して多くのエリアでフン粒数頻度が増加していることがわかります。特に大和村西部・宇検村北部エリアや徳之島北部での増加は顕著に出ています。
また、調査開始当時はフンが全く確認されていなかった沢でも徐々にフンが確認されるようになってきており、アマミノクロウサギの生息状況が回復してきているのが分かります。
 
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図1.奄美大島における各エリアのフン粒数の確認頻度の経年変化
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図2.徳之島における北部、南部のフン粒数の確認頻度の経年変化
場所によっては、過酷なルートやフンが全然見つからないルートもあり、一日中調査をしていると徐々に体力的にも精神的にも疲れてきます。
しかし、調査中にふと見上げる景色がとてもきれいだったり、初めて見る植物や珍しい動物にも出会うことがあり、そんなことにも期待しながら楽しく調査しています。
(調査中に撮影した写真を紹介↓)
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ヒカゲヘゴの樹冠
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雲霧林
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巨岩に巻き付くガジュマル
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岸壁に埋まる岩
島の環境を守っていくためにも、生態系を支える大切な役割を担う生きもの達に目を向けてこれからも頑張っていきたいです。