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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

ヤマガラとシキミ 2(野山の生物シリーズ)【雲仙地域】

2022年11月03日
雲仙 古城かおり
 「ヤマガラとシキミ1」の続きをお伝えします。

 「確かにシキミだったよね。」と訝しがりながら足下の木の実をよく見ました。間違いなくシキミの実です。顔を近づけて観察するとシキミの小さな穴からアリが何匹も出入りしているではありませんか。シキミは人間には有毒で、ヤマガラやアリには無毒なのだろうか?!という疑問が湧き、シキミについて調べてみました。
            

            【シキミの実に出入りするアリ】
 「ヤマガラはシキミの猛毒に対処する仕組みをもっていると考えられる」という内容の論文を見つけました。さらに「シキミはヤマガラの体内に寄生している生き物を駆除する効果がある」という仮説を立てて研究が行われていることが分かりました。
 シキミについて調べるうちに、他にも分かったことがあります。土葬が一般的だった時代は、毒性の強いシキミを墓地の近くに植え野犬による墓の掘り返しを防いだり、シキミの強い香りで腐臭を消したりしていたとも言われています。今の時代は、抹香や線香の材料として利用されています。


              【雲仙のシキミ】
 自然界において毒(有害なもの)と薬(有益なもの)は表裏一体だと改めて感じました。
蟻とシキミの関係については、残念ながら今回は見つけることができませんでした。引き続きアンテナを張っていこうと思います。
 シキミは日本原産で、本州から沖縄の山地、朝鮮半島や台湾で見られる樹木です。仏事に用いられ、寺や墓地に植栽されていることも多いので、小さなお子さんが間違って口に入れないよう注意しましょう。(おわり)


         【雲仙地獄の遊歩道沿いにもシキミが生える】