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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。

対馬の小さな星【対馬】

2022年08月18日
対馬 引地稜
皆さん、こんにちは!
私の出身地、山口県代表下関国際の甲子園での快進撃に感激と同時に悔しさがこみ上げている今日この頃の
対馬厳原事務室の引地です。

今回は先日参加した、ツシマウラボシシジミの個体数調査についてご紹介します。

ツシマウラボシシジミとは

日本では対馬にのみ生息するシジミチョウの仲間です。中国、台湾、インドなどに生息する種の日本固有亜種にあたります。
対馬では1980年ごろから急増したシカの被害に加え、環境の変化により2000年代後半以降急激に数を減らし、
絶滅危惧ⅠA類(CR)として掲載 (環境省レッドリスト2020)されております。
また種の保存法に基づき、国内希少野生動植物種に指定されており、捕獲等が原則禁止されています。

▲羽の裏側に黒い斑点があり、「ウラボシ」という名前の由来になっている。     ▲オスの羽の表側は光沢のある青紫色
現在、ツシマウラボシシジミの保護事業として保護区が設置され、保護区内の環境整備、個体数調査や幼虫のエサとなる植物の育成・植栽 が行われています。
また、保護区内の生息数が十分でない場合は、島外の動植物園で飼育・繁殖させ、増やした個体の一部を対馬に送り、野生に返す取り組みも行っています。
個体数調査では保護区内でどのくらいの卵・幼虫・蛹・成虫が生息しているかを調査し、保護事業の成果やツシマウラボシシジミに適している生息環境(食草の量や光環境等)を知るため定期的に実施しています。
 

幼虫のエサとなる植物  マメ科ヌスビトハギ属の植物の新葉、花、種子


卵 ~ 蛹までの成長段階  幼虫は卵から孵った後、3回の脱皮を繰り返し蛹へと変態します

調査の様子

広い保護区の中で数ミリサイズの幼虫などを探すのは大変ですが、例年よりも多くの個体が見つかった場所もあり、多くの人達が積み重ねてきた保護の取組みの成果を実感することができました。

今回の調査では多くの個体を確認することができましたが、天敵が多い自然界で卵から無事にチョウになれるのは数%だといわれております。今回見つけた子たちが一匹でも多くチョウになり、対馬の森の中でひらひらと舞う姿を普通に見ることができる。そうなっていって欲しいと思いました。