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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

ツシマヤマネコの交通事故について

2025年08月12日
対馬 比嘉 洋太

あいさつ

皆さんこんにちは!厳原事務室の比嘉です。最近は、対馬も30度を超える日が多くなり、私の肌もこんがりと焼けつつあります。
そんな私から今回は、今年度に起きているツシマヤマネコの交通事故について皆さんにお伝えしようと思います。

ツシマヤマネコの交通事故

ツシマヤマネコは、絶滅危惧IA類に指定され、生息個体数は100頭前後と推定されています。しかしながら、毎年、交通事故が発生しており、それが個体数減少の主な原因の一つになっています。環境省では、ヤマネコの交通事故を減らすために普及啓発や注意看板の設置などを行っていますが、毎年4~5件の交通事故が起こってしまっているのが現状です。
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6月27日 小船越
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7月22日 鹿見

今年度の交通事故発生状況

出典:国土地理院
今年度の交通事故は8月9日時点で合計5件発生しており、事故地点はそれぞれ、
小船越(4月29日)
河内(5月3日)
芦浦(6月15日)
小船越(6月27日)
鹿見(7月22日)
となります。前年度の事故件数は年間で4件であり、
今年度は事故件数が非常に多いことがわかります。

事故発生後の対応

①現場検証

交通事故が発生した場合、まず初めに現場検証が行われます。現場検証では、事故現場の写真を12方向から撮影し詳細に記録します。
その後、周辺の環境を視察し、ヤマネコが出てきた場所や事故当時の行動および事故要因の推測を行います。
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事故現場の写真撮影
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周辺環境の視察
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撮影方向の詳細

②カメラ・看板設置

事故があった地点で周辺に別の個体が生息している場合、同地点で新たな事故が発生する可能性があるため、事故現場周辺に自動撮影カメラを設置し、
数日間カメラ撮影を行います。また、事故地点を挟むように移動式看板を2台設置し、ドライバーへの周知および注意喚起を行います。
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自動撮影カメラ設置
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看板設置

③子猫捜索

事故個体が母ネコであった場合は、子猫の捜索を行うことがあります。授乳中の子猫は母親なしで1週間以上生存することが難しいため、子猫の捜索は迅速に行われます。実際に6月15日の芦浦の事故では、事故個体がメスであり乳腺の張りが確認されたため、当日に子猫の捜索が行われました。しかし、子猫の発見には至りませんでした。
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子猫捜索①
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子猫捜索②

ヤマネコの交通事故を減らすために

ツシマヤマネコは、明け方や夕方に活発に動きます。交通事故を減らすためには、皆さんがスピードの出しすぎに注意して安全運転を心がける必要があります。また、対馬野生生物保護センターでは、24時間ヤマネコの交通事故の通報を受け付けています。万が一ヤマネコを引いてしまっても、故意でなければ罪に問われることはありません。すぐに治療することでヤマネコが助かることがありますので、センターへご連絡ください。
あ
 

最後に

今回は、ツシマヤマネコの交通事故の現状と対応について皆様にお伝えしました。今年度は事故が多発しており、知らせを聞くたびに胸が痛みます。自分たちの取り組みが意味を成しているのかと自問自答することもありますが、少しでもヤマネコの事故を減らすために、今後も様々な取り組みを行って行きます。それらの情報も日記として皆様にどんどん発信していくのでよろしくお願いします。