アクティブ・レンジャー日記
九州地区のアクティブレンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信しますアクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。
自然環境保全地域ー白髪岳ー
2022年08月08日
九州地方環境事務所
こんにちは!九州事務所の相澤です。
熊本市内はとても暑く、これからまだ気温が上がると想像すると怖いです・・・ 7月下旬に熊本県球磨郡にある白髪岳にモニタリング調査に行ってきました。 到着してびっくり。白髪岳は市内に比べてとても涼しいです!
・白髪岳の位置
白髪岳は南限に近いブナ林を主体とする自然性の高い森林が残存していることから、昭和55年に「自然環境保全地域」に指定されました。国立公園など自然公園は自然を保護し、それらを地域の資源として観光等に利用するという「保護と利用」のサイクルに重きを置いていますが、自然環境保全地域は「保護」に重きを置いた管理を目指すため原生的な自然が保たれています。九州では白髪岳、鹿児島県の稲尾岳と屋久島の3カ所が自然環境保全地域に指定されています。
・自然環境保全地域であることを示す看板
・自然環境保全地域であることを示す看板
話は白髪岳にもどって、登山道を進んでいくと山頂付近で急に開けた空間が現れます。この原因は・・・鹿です!白髪岳は鹿によって下層植生の衰退が引き起こされ、ブナの生長阻害や土壌の裸地化が問題になっています。この日も鹿の糞をたくさん見かけ、山頂付近では鹿の群れもいました。
・上:中腹付近(手前は林野庁が設置している防鹿柵) 下:山頂付近 樹木の密度が全然違います!
・上:中腹付近(手前は林野庁が設置している防鹿柵) 下:山頂付近 樹木の密度が全然違います!
今回のモニタリング調査では、自生するブナの活力度(健全かどうか)の記録や、ブナの実生のカウント、希少植物の生育状況の確認などを行いました。今後も継続的にモニタリングを行っていく予定です。今回の調査で鹿の被害による下層植生の衰退や、倒木・枯死の目立つ林況を目の当たりにしましたが、ブナの実生も数カ所で確認できたので、来年一回り大きくなった姿が見られれば・・・と思いました!
・ブナの実生
・ブナの実生