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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

子ガメの旅立ち、私たちにできること

2025年07月25日
屋久島 中本合海
みなさんこんにちは。屋久島事務所の中本です。
屋久島では今年もウミガメの産卵がたくさんありました。

先日子ガメのふ化が確認され、これから多くの子ガメたちが海へ旅立っていきます。
今回は、子ガメが無事にふ化、帰海(海に帰ること)できるよう皆様に守っていただきたいルールをお伝えします。
 

屋久島はウミガメ上陸の島

4月下旬から7月中旬ごろ、屋久島の砂浜には多くのウミガメが産卵のため上陸します。
アカウミガメ
屋久島の永田いなか浜は、北半球最大のアカウミガメの産卵地として有名で、日本国内のアカウミガメの上陸・産卵数のうち約45%*、おおよそ半分を占めておりアカウミガメの保護において非常に重要な地域であることから、ラムサール条約湿地に登録されています。 *日本ウミガメ連絡協議会調べ(2024年)

上陸~産卵~ふ化

4月下旬から8月上旬、母ガメはあたりが暗くなった頃周囲を警戒しながら砂浜に上陸します。
波がかぶらない安全な場所を見つけて、後ろ足を器用に使って深さ約60センチの穴を掘り、100~120個ほどの卵を産み落とします。
穴を埋め戻し、巣穴がどこかわからないよう入念にカモフラージュを行い、海に帰っていきます。
アカウミガメの帰海
月日は流れ7月中旬~9月下旬、地中でふ化した子ガメたちは約60センチもの砂をかき分けて地上へ這い上がります。そして夜、外敵に見つかりにくい時間を狙って月の光を頼りに一斉に海へ駆け出します。
 
 
卵からふ化した瞬間から、様々な困難を乗り越え大海原へ旅立っていくのです。
 
子ガメ
子ガメ
海にたどり着いたアカウミガメの子ガメの一部は黒潮に乗ってカリフォルニア半島沖合で生活し、産卵ができるようになったら産まれた浜に戻ってくるといわれています。

子ガメが安心して旅立てるように

屋久島の砂浜では母ガメや子ガメを守るため、5/1~9/30まで自主ルールを設けています。
今回はその中から、子ガメのふ化期に特に守っていただきたいルールを紹介します。
 
①20:00~5:00に浜に立ち入らないで
待機する子ガメたち
砂に同化
砂から顔を出して休憩している子ガメや、海に向かって歩いている子ガメを広い砂浜で見つけることは非常に困難です。むやみに歩くと子ガメを踏んでしまう可能性があります。
20:00~翌朝5:00を含む、暗い時間は砂浜に立ち入らないでください。

②ライトをつけない・砂浜に向けない
母ガメは光を嫌い、子ガメは光に寄っていく性質があります。
子ガメは月の光を頼りに海へ向かうため、ライトやスマホの画面のわずかな光があるだけで方向を見失ってしまいます。海へたどり着けないまま空が明るくなると弱ったり外敵に見つかって捕食されてしまうことがあります。

ライトをつけて砂浜に入らないことはもちろん、駐車場から海に向かって車のライトを照らさないよう配慮をお願いします。
③焚火をしない
子ガメは光に寄っていく性質から、焚火に飛び込んでしまったり地中の卵やふ化した子ガメが焼け死ぬ恐れがあります。また、砂の温度が卵の性別に影響を与えることが分かっています。ウミガメが上陸~ふ化するまでの期間は焚火をしないようお願いします。

 
④ウミガメに触らない
もし砂浜でウミガメを見つけても、触らず見守りましょう。ウミガメは敏感で動揺しやすい生き物です。また、自然界には生き物同士の複雑で繊細な関係性があります。なるべく介入せず見守りましょう。
※捕獲および卵の採取が鹿児島県ウミガメ保護条例および自然公園法で原則禁止されています。
 

 
 

砂浜のごみ問題

永田浜では日頃から地元の方や観光客の皆さん、企業など多くの方々の協力があり美しい砂浜が守られています。
それでも、大波のたびにまた新たなごみが漂着しています。

海洋ごみは子ガメの進路を妨いでしまったり、海で暮らすウミガメや生き物が食べたり絡まったりすることでたくさんの命が奪われています。
一度海に流れ出たごみを回収するには多くの人手とお金がかかってしまい、次々に流れ着くごみを回収しきれていないのが現状です。
まずは身の回りのごみから、自然界に流れ出ないようにご協力をお願いします。
写っている範囲で回収したごみ
ふ化シーズン前に海岸清掃を行いました

100年後も多くのウミガメが産卵上陸できる島でいられるように

人が生活を始めるよりもずっと昔からこの島で命をつないできたウミガメ。
これからも安全で安心して産卵できる砂浜であるために、皆様のご協力をお願いします。