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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

九州地区のアクティブ・レンジャーが、日々の活動や地域の魅力を発信します。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、瀬戸内海、西海、雲仙天草、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、屋久島、慶良間諸島、西表石垣国立公園、やんばる国立公園があります。

ナベヅル、マナヅル世界有数の越冬地

2023年06月01日
出水 岡本 安弘
みなさん、こんにちは。4月から出水自然保護官事務所に着任しました岡本です。トレイル歩きをきっかけに豊かな自然を将来に残していきたいと思い、アクティブ・レンジャーになりました。アクティブ・レンジャーで感じたことや体験をみなさんにご紹介していきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いします。

着任場所の出水市は鹿児島県北西部に位置しています。絶滅危惧種であるナベヅル、マナヅル(※1)の世界有数の越冬地で、ナベヅルは世界の生息数1万1500羽程度(2006年推定)の約9割が、マナヅルは世界の生息数6500羽程度(同)の約4割が出水で越冬していると言われています。
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ナベヅル。毎年1万羽近く飛来します。
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マナヅル。毎年3千羽近く飛来します。
数は少ないですが、ソデグロヅル、カナダヅル、クロヅル、ナベクロヅル、アネハヅル、タンチョウも飛来することがあります。
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ソデグロヅル
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カナダヅル
ナベヅルやマナヅルは、ロシア東南部のシベリアや中国東北部の湿地で4月ごろから繁殖期に入ります。通常2個の卵を産んで1か月ほどでふ化し、親と一緒に湿地の中で暮らします。毎年10月初旬ごろになると朝鮮半島を経由し出水へ到着します(渡来)。出水で冬を過ごした(越冬)ツルの家族は2月から3月にかけ群れを作り、天草・長崎の上空を飛んで朝鮮半島を経由し再びツルの繁殖地であるシベリア・中国東北部へ旅だって行きます(北帰行)。

ツルは主に家族単位で暮らしています。親鳥は幼い子ども鳥に餌のとり方を教えたり、守るように飛んでいるようです。子どもを想うのは人と変わらないように思います。
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ナベヅルの飛翔。一番下が子どもの鳥です。上2羽は親鳥でしょうか。飛行ルートを間違え無いよう、着地が上手くいくようにサポートしているようにも思えます。
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マナヅル。後ろ2羽が子どもの鳥です。親鳥が先導しているようにも思えます。写ってませんが2~3メートル後ろに親鳥と思われる1羽がいます。後方を守っているようにも思えます。
集団渡来地は干拓地を中心とした田園地帯で、国の鳥獣保護区に指定されています(※2)。鳥獣保護区の広さは867ヘクタールで、東京ドーム約185個分に相当します。過去に撮影した写真には混み合ってる様子が伺えます。越冬する1万羽以上のツルには必ずしも広いと言えないのかもしれません。越冬地がひとつの地域に集中することにより、鳥インフルエンザ感染などによる絶滅リスクの高まりや、農作物食害などの問題・課題が有ります。
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日中の様子です。
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天敵である哺乳類が進入しにくく、水面を伝わってくる波紋によって外敵が近づくのを知ることができるので、川や池の浅瀬などで眠ります(眠る場所を「ねぐら」と言います)。地元の協力を得て越冬時は一部の田に水を入れています。
5月末時点で北に帰らず残っているナベヅルが十数羽程度いることを確認しています。北帰行の遅れはケガや衰弱が原因ではないため、気温が上がってくれば寒さを好むツルは北帰行を始めるとみられるそうです。4月と5月の巡視ごとに少なくなっている感じがしています。残っているツルを温かく見守っていただけたらと思います。

出水市はツル類以外にも数多くの鳥類が確認されています。全国的にも有数の飛来地で、日本で観察することができる約650種の鳥類うち約300種を確認できる野鳥の宝庫です。撮影技術は全く伴ってませんが、すぐ身近に多くの野鳥がいることを伝えたく、4月巡視中に撮影した野鳥を掲載します。
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キンクロハジロ
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アオサギ
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コサギ
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ハシビロガモ
2021年に「出水ツルの越冬地」がラムサール条約湿地に登録されました。出水市で保全の指針となる「出水ラムサール条約湿地保全・利活用計画」を策定し、湿地の保全にかかる取組みなどが評価され2022年にラムサール条約湿地自治体に認定されました。(※3) 今後のアクティブレンジャー日記で、地域の取り組みをご紹介していきたいと思っています。


(※1)ナベヅルとマナヅルは絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)です。絶滅危惧種の詳細は環境省ホームページでご確認できます。 レッドリスト・レッドデータブック | 自然環境・生物多様性 | 環境省 (env.go.jp)
(※2)国の鳥獣保護区の詳細は環境省ホームページでご確認できます。(鳥獣保護区の指定状況) 野生鳥獣の保護及び管理 ~人と野生鳥獣の適切な関係の構築に向けて~ [環境省] (env.go.jp)
(※3)ラムサール条約湿地の詳細は環境省ホームページでご確認できます。 環境省_ラムサール条約と条約湿地_ラムサール条約湿地とは (env.go.jp)
出水市ラムサール条約湿地・保全利活用計画の詳細は、出水市ツル博物館「クレインパークいずみ」ホームページ(ラムサール条約湿地 出水ツルの越冬地)でご確認できます。 クレインパークいずみ|鹿児島県出水市 みんなでつくる活力都市 住みたいまち 出水市 (kagoshima-izumi.lg.jp)
 
 
以上