九州地域のアイコン

九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

恐竜時代にタイムスリップ【雲仙天草国立公園・天草地区】

2022年04月11日
雲仙天草国立公園 森俊夫

 御所浦地区牧島にあるスフェノセラムスの壁と呼ばれる化石群への入口が右側にあることを示すアンモナイトの化石をかたどった標識を撮影した写真天草の御所浦地区は、大小18の島々で構成されており、島の地層は、恐竜が生きていた白亜紀のものと恐竜が絶滅した後の時代のものに大別されますが、その両方に、古代に生きた生物の死骸や足跡などの痕跡の化石がが含まれています。

 1997年の恐竜の化石の発見によって、御所浦島は一躍有名となり、以後、恐竜の島と呼ばれるようになりました。

 御所浦島と中瀬戸橋で結ばれている牧島では、直径60センチのアンモナイトの化石が見つかり、隣の御所浦島と合わせて化石の島と呼ばれています。

 熊本県が天然記念物に指定したヘゴの自生地であることが表示された石柱2種類が並べて表示されている写真天草には、もう一箇所、恐竜が生きていた時代を彷彿とさせる場所があります。

 天草市河浦町宮野河内(みやのがわち)の熊本県が天然記念物に指定している「ヘゴ」の自生地で、ちょっと力が抜けてしまいそうな言葉の響きですが、その正体は、大きいものでは高さと葉の広がりの直径が3メートルにも及ぶ超巨大なシダです。

 自分の背丈よりも高いヘゴが立ち並ぶ様を下から見上げると、まさに、恐竜の時代へと

タイムスリップしてきたかのような錯覚に陥

り、今にも森の奥から恐竜が出てくるのでは

というスリルすら感じられます。

 中央の焦げ茶色の幹の先端から四方に鮮やかな緑の葉を広げるヘゴ(大型シダ植物)を下から見上げるような角度で撮影した写真静寂な森の中に白亜紀のたたずまいを感じさせてくれるヘゴですが、かつては、心ない人に踏み荒らされて、絶滅の危機にひんしたこともあったそうです。

 ヘゴは、ヘゴ科のシダ植物ですので、花は咲かず、種子もできません。

 胞子嚢(ほうしのう)から直径約100分の3ミリの大きさの胞子を飛ばして増殖しよ

うとしますが、これが3メートルにまで生育

することは容易ではありませんので、直接目

にされる機会には、少し離れたところから、

白亜紀の雰囲気をお楽しみいただきますようお願いいたします。

森の奥深く続く杉並木を背景に四方に大きく鮮やかな緑の葉を広げるヘゴ(大型シダ植物)が数本連なっている様を撮影した写真