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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

チームタデ原 草こづみ作り【くじゅう地域】

2021年11月08日
阿蘇くじゅう国立公園 宮本靖之

アクティブレンジャー日記をご覧の皆様、こんにちは。

くじゅう連山では紅葉が見頃を過ぎ、昼夜ともに肌寒い時期となってきました。

今回の日記では10月に行なわれた『チームタデ原の草こづみ作り』について、紹介したいと思います。

チームタデ原とは?

チームタデ原は2015年に開催されたKODOMOラムサール〈くじゅう坊ガツル・タデ原湿原〉をきっかけに結成された団体で、タデ原湿原やくじゅうのことについて学び、発信することを目的に活動しています。活動の柱は子どもたちの「主体性」。九重町に住む小学4年生から中学生までのメンバーそれぞれが主体となって考え、学び、話し合いながら活動を行なっています。

さて、草こづみ作りの紹介に入りますが『草こづみ』とはいったい何でしょう?

この写真をご覧下さい。

▲干し草を運ぶ牛と草こづみ(※長者原ビジターセンター提供)

写真は昔のものですが、そびえる山々は今も昔も変わらない。3つの峰の三俣山、ドーム状の指山、白い煙を上げる硫黄山。そう、写真の場所はタデ原湿原です。

タデ原湿原では昭和の時代、牛の放牧が行われていたそうです。

そして、写真に写る小さい家のようなものが『草こづみ』です。

草こづみは刈った草を冬場の牛の飼料として貯蔵するために積み上げたもので、湿気などで草が痛まない独特の作りとなっています。

現在では牧草ロールやロールベールサイレージが主流となり、ほとんど見られなくなってしまいました。

▲ロールベールサイレージ

今回のチームタデ原の活動はこの草こづみ作りを通して、「約50年前のタデ原湿原を感じ、再現しよう!」という目的で行なわれました。

○まずは事前学習!

▲タデ原湿原の歴史や草こづみについて学ぶ

「牛1頭が背負う量=1駄」などの特有の数え方があるそうです

○地元の方のお手本講座!

▲講師としてお呼びした地元の方からレクチャー

 普段はしない作業にメンバーたちは興味津々でした

○いざ実践!

 

▲草を絡ませ、かや縄作り       ▲草寄せ

▲協力して束作り           ▲気付けばスタッフも熱中

 

▲序々に全貌が...           ▲地域の方と息を合わせて仕上げの屋根作り

○そして、ついに完成!

▲最後に手作りの看板を添えて、草こづみが完成

○活動を終えて

今年で2年目の草こづみ作りでしたがとても充実した活動になったと思います。

地域の方と子どもたちのやりとり、草に埋もれながら運ぶ姿、熱中している大人たち、気付くと草の上で寝そべっている子どもたち、息を合わせた屋根作り、関心を示してくれる観光客の方々など、2時間ほどの活動でしたがその中にはたくさんの魅力的なものがありました。

メンバーたちも普段はしない作業を前に生き生きとしており、完成した際は満足のいく様子でした。

そして秋が深まった今日、草こづみは風景に溶け込むようにたたずんでいます。

「約50年前のタデ原湿原を感じ、再現しよう!」というチームタデ原の目標は見事に達成され、草こづみはタデ原を訪れる人々の目を引く存在となっています。

この光景が見られるのも冬場の牛の餌になる、その時まで。

▲タデ原湿原(11月撮影)