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アクティブ・レンジャー日記 [九州地区]

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2021年11月12日

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2021年11月12日オニヒトデ調査【石垣地域】

西表石垣国立公園 石垣 江川博子

みなさんこんにちは。石垣自然保護官事務所の江川です。11月の石垣島は曇空が多く半袖では肌寒さを感じる日が多くなってきました。一方、海水温は27℃と海に入れば比較的温かい季節です。

さて、みなさんはオニヒトデとサンゴの関係をご存知ですか?

オニヒトデは造礁サンゴ類を好んで食べる30㎝ほどの大型のヒトデです。特に成長が早い種類のサンゴを好む傾向があるという報告もあり、適度に捕食する分にはサンゴ礁の多様性を維持するのに貢献しているとも言われています。しかし、時折大量発生を起こし、3ヶ月から半年ほどでサンゴを食べつくしてしまうことがあるようです。

2001年より石垣自然保護官事務所では、毎年石西礁湖と石垣島周辺のいくつかの海域においてオニヒトデの発生調査と駆除を行っています。今回はオニヒトデの調査に同行したときの様子をご紹介していきます。

オニヒトデの潜水調査

近年の話でいえば八重山では2008年から2014年にかけてオニヒトデが大量発生しました。さらに、2016年には高水温が原因とされる大規模白化が起こり、八重山全体でサンゴが減少する要因が重なりました。

今回私が同行した調査は、石垣島ではナンヨウマンタが見られることで有名な川平湾近くの底地(すくじ)沖で行われました。この海域は、例年比較的オニヒトデが見られる場所であり、2016年の大規模白化でサンゴがかなり減少してしまったというポイントです。

そして、実際に潜ったときの海の様子はこちら。

すくじ沖のサンゴ礁

調査員さんいわく被度が90%以上で、見渡す限り一面にテーブルサンゴが広がっていました。2016年以降、石垣島周辺の海の様子を見続けてきた調査員さんによると、ここ5年でかなり回復してきた場所であるとのこと。白化して死んでしまっても、産卵する親サンゴが生き残り、産卵により生まれたサンゴの幼生が順調に成長するとこのような状態になるようです。特にここ12年でのサンゴの成長スピードは早かったそうです。

さて、オニヒトデの食痕を探していきます。サンゴ礁全体を見渡してサンゴが白くなっている部分を見つけたら、近づいて観察します。オニヒトデの食痕の可能性があるのがこちらです。

オニヒトデの食痕

▲丸く白くなっているところがオニヒトデの食痕と思われます。

オニヒトデの食痕その2

▲白くなったサンゴが何か所かまとまって見られると、近くにオニヒトデがいる可能性が高いそうです。

夜行性であるオニヒトデは昼間は岩陰に隠れているので、ライトを使って食痕が見られた周辺を探します。

岩陰に潜むオニヒトデを探す調査員

一方、こちらはシロレイシガイダマシ類の食痕と思われるもの。

レイシガイの食痕

オニヒトデの食痕との違いは、サンゴの一部が白くなっているということ。シロレイシガイダマシは2~4cmほどの貝の仲間で食べる範囲はそれほど広くありません。オニヒトデの場合は、体から胃袋を出して消化するので円形に広範囲に白くなるのが特徴です。

また、こちらはブダイなどの魚がかじった跡です。

ブダイのかじったあと

サンゴのでこぼこが削りとられています。ブダイはオウムのくちばしのような固い歯をもっていて、サンゴの骨格をかじりとることができます。

残念ながら(?)私は水中では、オニヒトデを見つけることができませんでしたが、調査員さんのひとりが1匹捕獲して上がってきました。27cmほどの大きさでした。

捕獲されたオニヒトデ

実は、この個体が今年度の調査ではじめて捕獲されたものです。近年オニヒトデは収束傾向にあるようですが、予定していた海域の調査をほとんど終えた時点で、今年はオニヒトデの気配がさほど感じられないということです。

オニヒトデの生態については解明されていないことが多く、爆発的に数を増やすメカニズムがはっきりとわかっていません。オニヒトデの大発生によりサンゴが食べ尽くされてしまうことを防ぐには、多くの人の目が必要となります。

八重山の海に潜った際に、オニヒトデと思われる食痕が多数あった、オニヒトデを多く目撃した等の情報がありましたら、下記までぜひご連絡ください。

【国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター】

HP: http://kyushu.env.go.jp/okinawa/coremoc/index.html

住所:沖縄県石垣市八島町2−27  電話:0980-82-4902

mail:coremoc(a)sirius.ocn.ne.jp ※(a)を@に変えて送信ください。

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