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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

白嶽(しらたけ)森林公園・ハッチョウトンボ【雲仙天草国立公園・天草地区】

2021年07月19日
天草 森俊夫

 今年も白嶽(しらたけ)園地(白嶽森林公園キャンプ場)の湿地帯に、ハッチョウトンボが舞っています。

 ハッチョウトンボは、トンボ科ハッチョウトンボ属の体長2センチ程度の日本一小さなトンボです。熊本県のレッドデータブックでは2019年絶滅危惧ⅠA類に指定され、県条例により県内全域での捕獲が禁止されています。絶滅危惧ⅠA類とは、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いものとされており、熊本県では、絶滅の危機に直面している状況にあるということです。

 このような状況の中で、6月1日の巡視の際にはその姿が見られなかったため、一時は大変心配していましたが、6月中旬頃に生息が確認されたという嬉しい報道がありました。6月29日(午前11時頃)の再度の巡視では、7頭のオスのハッチョウトンボが確認できました。

 トンボといえば、ゆっくりと風に乗って流れるように優雅に舞うというイメージでしたが、私が見たときは、3頭と4頭のグループに分かれて、数分間、それぞれに直径30センチくらいの弧を描きながら、追いかけっこをするように、地面から150センチくらいの高さの同じ軌道を、目が回らないかと心配になるくらいのものすごい早さでグルグルと飛んでいました。その後分散し、地面から20センチ程の高さの湿地帯の草の間でホバリングをして、草の葉に乗って羽根を休めたかと思うと、10秒足らずで飛び立って、水平に1メートル程度移動しては、ホバリングと羽根休めを繰り返していました。2センチ程度の細く小さな体ですが、鮮やかな赤色をしているため、3メートルくらいの距離までは、その行方を目で追うのはそう難しくはありませんでした。しかし、すぐ近くまで来てじっとしていることはほとんどありませんでしたので、その姿をカメラに収めるのは、至難の技でした。

 被写体が小さく、じっとしているのはほんの数秒間であるため、この程度の写真しか撮れませんでした。

湿地帯の草の上で右方向に頭を向けて羽根を休めているハッチョウトンボ(2021年6月撮影)湿地帯の草の上で左方向に頭を向けて羽根を休めているハッチョウトンボ(2021年6月撮影) 

 この写真では、鮮やかな赤をとらえることができませんでした。次回巡視時には、高性能カメラでリベンジ撮影にチャレンジします。

 残念なことに、間近で見たいと思われたのでしょうか、通路から外れて、湿地帯の中にまで入り込まれた来訪者もいらっしゃったようです。ここは、彼らにとっての数少ない生息地ですので、この貴重な聖地に、文字どおり、土足で踏み込むことのないように、利用者のみなさまには、自然環境の保護と保全にご理解とご協力をいただきますようお願いいたします。

湿地帯が踏み荒らされて、いくつもの足跡が重なるように残されている様子が写されています(2021年6月撮影)