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九州地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記

今年もアジサシがやって来ました!

2021年07月01日
やんばる 石川伊智子

はじめまして!

やんばる自然保護官事務所の石川伊智子と申します。

今年の4月にアクティブレンジャーとしてやんばるに着任しました。

沖縄生まれ、沖縄育ちのうちなーんちゅです。

大好きな沖縄の豊かな自然を守るお手伝いができればと、このお仕事に着きました。

つい先日、奄美大島、徳之島、西表島とともに世界自然遺産登録の勧告を受け、ますます皆さんにやんばるの自然のおもしろさを知っていただける!とわくわくしています。

これから、たくさんの魅力を発信していきたいと思いますので、よろしくお願い致します。

さて、6月に入り、沖縄はすでに夏も真っ盛りというような気候になってきましたが、この時期に、はるばる海を越えて、沖縄にやってくる生き物がいます。

それが、海鳥の仲間、アジサシ類です。アジサシたちは、遠くオーストラリアから、約6,000kmもの長旅を経て、沖縄で繁殖を行います。

屋我地地区鳥獣保護区管理員さんの情報によると、今年は5月11日頃にエリグロアジサシ、5月30日頃にベニアジサシの飛来が確認されたとのこと。今年も順調に繁殖を行ってくれたら、9月頃に元気に旅立つ親子が見られるかもしれません。

(2020年アジサシについての調査と活動についてはこちらの記事にて→屋我地のアジサシ2020

岩礁に降り立つエリグロアジサシ

◀岩礁に降り立つエリグロアジサシ

環境省が毎年行っている活動として、繁殖岩礁へ上陸について、注意喚起を行う看板の設置があります。人が岩礁に近づいたり、上陸してしまうと、アジサシたちは子育てのために岩礁に降りられなくなったり、親鳥が卵を放棄してしまうことがあります。岩礁に看板を設置し、利用者への注意喚起を行うことは、それを防ぐための重要なミッションです。

この活動は、毎年、屋我地ひるぎ学園5年生の皆さんと一緒に行っているとのことで、私も楽しみにしていたのですが、昨年同様、コロナ感染拡大防止のために一緒に活動することはかなわず・・・。今回は、鳥獣保護区管理員さんと自然保護官、アクティブレンジャーで看板設置に行ってきました。

今回、行ってきたのは、羽地内海の鳥獣保護地区内にある「トゥイヌシ」「長崎」「ウトゥフイ」と呼ばれる岩礁です。

最初に訪れたのは、「トゥイヌシ」と「長崎」。「トゥイヌシ」は、沖縄の方言で「鳥の巣」という意味で、昔からこの地域の人々に、鳥が巣を作る岩礁として認識されてきた場所であることがわかります。こちらの2カ所は、干潮になると歩いて渡ることのできる岩礁です。

干潮時、干潟を歩いて岩礁へ渡る様子◀干潮時には歩いて渡ることができます。潮干狩りや磯歩きでうっかり近づいてしまうことがないよう、注意喚起の看板を設置します。

▼看板設置の様子

 白い看板には、以前、ひるぎ学園のみなさんに書いてもらったアジサシの挿絵が入っています。

岩礁に「鳥獣保護地区」の看板を設置する様子1岩礁に「鳥獣保護地区」の看板を設置する様子2看板を設置した岩礁 屋我地ひるぎ学園5年生の挿絵が入った「この島には立ち入らないでください」の看板  

その日は、全部で4つの岩礁にロープをかけて、看板を設置しました。

看板を設置し終わり、まだ産卵の始まっていない岩礁の上の状態を確認しようと、岩に登ったそのときっ・・・!

エリグロアジサシの飛来

▲第一陣飛来を目撃!?毎年5月中旬頃に飛来が確認されます。

ギュイーッ!ギュイーッ!と鳴きながら私たちの頭上すれすれを飛んできたのは、すでに沖縄に到着していた4羽のエリグロアジサシでした。私たちは、繁殖場所を選んでいたアジサシたちの邪魔をしてしまったようです。ごめん、ごめん、とすぐに退散。

警戒心の強いアジサシにとって、人間が近づいてしまうのはとてもストレスになります。これから9月までは、アジサシたちの繁殖の季節。皆さんも干潟で遊ぶ際は、鳥たちのこともすこーし気にして、遠くから見守ってあげてくださいね。岩礁には、くれぐれも近づいたり、登ったりしないように!

次に訪れたのは、「ウトゥフイ」と呼ばれる岩礁。こちらには、地元の漁師さんの協力の下、船で向かいます。船でしか近寄れない岩礁ですが、釣り人がよく利用する場所だそうです。こちらにも、釣り人に向けて看板を設置します。

ウトゥフイ岩礁に看板を設置する様子ウトゥフイ岩礁 看板設置後の様子

▲岩礁へ上陸するときに、目につきやすい場所へ看板を設置します。

看板の設置後は、岩礁の上の状況を確認しました。

岩の隙間には悲しいことに、人間の忘れ物がたくさん・・・。空き缶やプラスチックの弁当箱、釣り用のテグスなどのゴミです。2人でゴミ拾いをしましたが、わずか20分程度で45Lのゴミ袋がいっぱいになりました。

これらのゴミによって、誤飲や、テグスが足に絡まって壊死するといった事例も起こっており、アジサシにとっても大変脅威となります。

岩礁の上のゴミを拾う様子1岩礁の上のゴミを拾う様子2

▲岩礁上の狭い範囲ですが、45Lの袋がいっぱいになるほどのゴミがありました。

岩の隙間に挟まったゴミ


◀岩の隙間にもゴミが挟まっています。

▼空き缶、テグス、弁当の空き箱、釣り餌のパック・・・

岩礁で拾ったゴミ1 空き缶類岩礁で拾ったゴミ2 テグスや釣り針岩礁の上で拾ったゴミ3 弁当箱や釣り餌のパック

釣りをすること自体は、全く悪いことではありませんが、自然の中で遊ばせてもらっている以上、そこを利用する生き物や環境に対して、最低限の配慮をもって利用したいものです。

それは、アジサシの繁殖期に限らず、自然で遊ぶときには、いつでも心にとめておきましょう!

まとめになりますが、私たちがお願いしたいことは2つです。

  1. アジサシが繁殖に使っている間(5~9月)は岩礁に近づかないこと。

  2. 持ってきた物は必ず持ち帰ること。

今年も続々とアジサシが渡ってきています!

6,000kmの長旅を終え、さらに子育てという大仕事を成し遂げる鳥たちに、安心して過ごしてもらえるよう、私たちは距離をとりつつ、温かく見守っていきましょう!